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「キスされるたびに」何度も唇を奪われた人気俳優。“キス=恐怖”でも目が離せなかったワケ

  • 2026.7.31
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2023年7月、映画『キングダム 運命の炎』ワールドプレミアムに出席した山﨑賢人(C)SANKEI

恋愛ドラマにおいて、キスは二人の思いが通じ合ったことを示す特別な瞬間だ。ところが、2018年に放送された日本テレビ系ドラマ『トドメの接吻』では、その常識が最初から覆されていた。

山﨑賢人演じる堂島旺太郎は、謎の女性からキスをされるたびに命を落とす。そして意識を取り戻すと、時間は7日前へ巻き戻っている。キスをすれば、恋が始まるのではない。キスをすれば、死ぬ。恋愛ドラマの象徴ともいえる行為を、恐怖と混乱の引き金へ変えた作品だった。

甘くないキスを繰り返した山﨑賢人

山﨑賢人は、それまでにも多くの恋愛作品へ出演してきた。端正な容姿と柔らかな雰囲気から、相手役の女性をまっすぐに思う青年や、不器用ながらも誠実な恋をする男性を演じることが多かった。キスシーンもまた、関係が進展したことを示す“胸キュン”の見せ場として扱われてきた。

しかし、『トドメの接吻』では違う。門脇麦演じる謎の女性・佐藤宰子が旺太郎へキスをするたび、彼は苦しみながら倒れ、同じ時間をやり直すことになる。唇が近づいても、ときめきはない。あるのは警戒、恐怖、焦り、そして死への予感だ。

繰り返されるキスシーンは、甘いどころか、旺太郎の人生を強制的に中断させる装置として機能していたのである。

キスを「利用する男」が、キスに翻弄されていく

旺太郎は、金と権力を手に入れることを優先するナンバーワンホストだ。女性へ甘い言葉をささやき、相手が求める態度を演じる。恋愛感情さえ、自分がのし上がるために利用している。そんな男にとって、キスは本来、自分が主導権を握るための武器だったはずだ。

ところが、宰子とのキスだけはコントロールできない。いつ、どこで現れるのか分からない。拒んでも追いかけてくる。キスをされれば命を落とし、それまで積み上げた時間は消えてしまう。女性を翻弄してきた旺太郎が、今度は一人の女性のキスによって翻弄される。その逆転こそが、『トドメの接吻』の面白さだった。

最初の旺太郎は、宰子を恐れ、遠ざけようとする。しかし、時間を巻き戻す力の仕組みに気づくと、次第にそのキスを利用し始める。失敗した未来をなかったことにし、より自分に都合のよい選択をするため、死を承知でキスを求めるのだ。恐怖だったキスが、やがて欲望をかなえる手段へ変わっていく。

山﨑賢人は、その危うい変化を、単純なヒーローとしてではなく、利己的で弱く、どこか放っておけない男として演じていた。実はこのドラマ、単なるタイムリープというわけではないのだが、それは是非ドラマをみてもらいたい。

何度重ねても、同じキスにはならなかった

『トドメの接吻』では、同じ二人が何度もキスを交わす。しかし、その意味は毎回異なる。

突然襲われるキス。逃げるために拒絶するキス。失敗をやり直すため、自ら求めるキス。相手を利用するためのキス。そして、相手の存在を意識したうえで交わすキス。映像だけを見れば同じ行為でも、旺太郎と宰子の関係が変わるにつれて、そこに宿る感情も変化していく。回数を重ねるほど刺激が薄れるのではなく、むしろ二人の距離が浮き彫りになっていくのだ。

特に印象的なのは、旺太郎にとってキスが「死ぬための行為」であり続けることだろう。何度経験しても、死の苦しみそのものが消えるわけではない。それでも彼は目的のためにキスを選ぶ。山﨑賢人が見せたのは、ロマンチックな美しさではなく、欲望に突き動かされ、自分の命さえ道具にする男の執念だった。

キスの多さが、恋の不在を際立たせた

『トドメの接吻』には、数多くのキスシーンが登場する。だが、一般的な恋愛ドラマのように、キスの多さが愛情の深さを表しているわけではない。むしろ何度キスをしても、旺太郎と宰子の関係は簡単には恋にならない。互いに利用し、警戒し、必要に迫られて唇を重ねる。

だからこそ、二人の間にわずかな感情が芽生えた瞬間が、強く印象に残る。キスを恋愛の到達点ではなく、登場人物を死なせ、時間を戻し、人生を選び直させるものとして描いた『トドメの接吻』。何度も唇を重ねているのに、胸に残るのはときめきだけではない。

恐怖、欲望、後悔、執着。

『トドメの接吻』は、キスという一つの行為に、これほど多くの感情を背負わせることができると証明した作品だった。


※記事は執筆時点の情報です

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