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深夜の「カンカン音」をどう防ぐ? 現役社員が明かす、鉄道夜間工事の知られざる工夫と裏事情

  • 2026.8.4
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

ご自宅の郵便受けに、鉄道会社や工事会社から「夜間工事のお知らせ」という文書が投函されていた経験のある方もいらっしゃるかもしれません。毎日数多くの電車が走行する線路や、それに付帯する電気設備・構造物には、安全を維持するためのメンテナンスや部品交換が絶対に欠かせません。

しかし、電車が頻繁に行き交う日中に線路を閉鎖して工事を行えば、何万人もの利用者の足に多大な影響を及ぼしてしまいます。そのため、どうしても終電から始発までの限られた数時間の夜間に、集中的に作業を行わざるを得ないのが実情なのです。今回はそんな夜間工事の裏側に迫ります。

徹底した騒音対策

鉄道の工事は土木工事や機械作業を伴うものが多く、工事を行うと騒音が発生するのは避けられません。しかし、鉄道会社としても「安全のため」と一方的に押し付けるのではなく、沿線にお住まいの方々の不満や負担を最小限に抑えるため、現場では様々な騒音対策を講じています。

使用する重機に防音対策を施したり、電動の低騒音型に変更したり、工事現場の周囲を移動式の「防音パネル」や「防音シート」で囲ったりといった物理的な対策は基本中の基本です。しかしそれ以上に、作業手順そのものにも細心の注意が払われています。

金属同士を叩き合わせる打撃音は深夜に最も響くため、ハンマーで叩く作業を極力減らし、油圧式の静かな機材でボルトを締め付けたり、レールを現場で切断するのではなく、あらかじめ工場で必要な長さにカットしたものを持ち込んだりする工夫が行われています。また、重機のアイドリングストップの徹底はもちろんのこと、作業員同士の合図の際も大声を出さず、無線機や手信号、ライトの点滅などを活用し、人の声による騒音も防いでいます。

日中への作業移行と働き方改革

さらに近年、力を入れているのが、できるだけ日中に作業を進め、夜間工事の時間を短縮するという取り組みです。

夜間に行う作業は古い設備を外し、新しい設備を取り付けるという最終工程のみに絞り、新しいレールや機材を線路脇に配置しておくなどの事前準備や、取り外した古い資材の撤去作業を、列車の合間を縫って日中に行う手法が増えています。これにより、深夜の騒音発生時間を少しでも短くすることができます。

実はこの工夫は、沿線住民への騒音対策という側面だけでなく、工事に携わる鉄道会社や建設会社の働き方改革のためという側面も持っています。深刻な人手不足が続く中、作業員にとっても負担の多い深夜労働を減らし、日中作業へシフトすることは、鉄道インフラを将来にわたって維持していくために必要なことでもあるのです。

対話が生む「理解」という名の防音壁

どれほど最新の機材を導入しても、工事の音を完全にゼロにすることはできません。だからこそ何よりも大切になるのが、沿線住民の皆様との関係構築です。

工事が始まる前に、鉄道会社や工事会社の担当者が、自治会や近隣住民の方々の元へ足を運び、「なぜこの工事が必要なのか」「どのくらいの期間、どのような音が出るのか」を丁寧に説明し、理解を求める取り組みが欠かせません。このコミュニケーションが疎かになると、不信感から大きなトラブルに発展してしまうことが少なくありません。

筆者が現場で経験したエピソードがあります。ある沿線にお住まいの方から、当初は夜間工事の騒音に対してお叱りの声をいただいていました。しかし、担当者が何度も足を運び、路盤の劣化を放置すれば日中の走行音がさらに悪化すること、脱線の危険があることなどを時間をかけてご説明するうちに、次第にご理解をいただけるようになりました。

それから数年後、なんとその方から「最近、日中の電車のガタンゴトンという音が以前より大きくなってきた気がする。そろそろメンテナンスが必要な時期じゃないか?」と、わざわざご連絡をいただくまでになったのです。対話と説明を積み重ねることで、このような素晴らしい関係性を築くことができるのだと、深く感銘を受けた出来事でした。

必要だからこそお互いの理解を

暗闇の中でライトに照らされながら安全を守る夜間工事は、働く作業員にとって非常に過酷な仕事です。しかし同時に、沿線にお住まいの皆様に大きな負担をおかけしていることも、私たちは決して忘れてはならないと考えています。

皆様の毎日の安全な通勤・通学を裏側で支えるため、騒音を少しでも減らす努力を続けながら、今夜もどこかの線路でメンテナンス作業が行われています。どうか、鉄道夜間工事へのご理解とご協力をお願いします。


参考:
鉄道用防音壁(ベルテクス)
鉄道施工の住民説明でトラブルを避ける6つの準備(LRTK)
騒音・振動対策 - 建設施工・建設機械(国土交通省)
電動バックホー(アクティオ)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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