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「さっきまで普通に走っていたのに」夏の帰省中にロードサービスを呼ぶ羽目になった40代男性の誤算

  • 2026.8.4
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「エンジンは普通にかかるから、バッテリーはまだ大丈夫ですよね」

以前、私が自動車整備関係の仕事をしていた際に、車の点検で訪れたお客様、Yさん(40代男性)から、そんな相談を受けたことがあります。

Yさんは夏休みに家族で帰省旅行を予定しており、出発前に愛車の点検を依頼してきました。点検ではバッテリーの劣化が進んでいることが分かり、私は交換をおすすめしました。

ただ、Yさんは「旅行から帰ってきてから交換します」とのこと。

その時点ではエンジンが始動できており、すぐに走行不能になる状態ではなかったため、私は「出先でバッテリーが上がってしまうリスクもあるため、できれば出発前に交換したほうが安心です」と伝え、改めて交換をおすすめしました。しかし、Yさんには時間的な都合もあり、その日は交換せずに帰宅することになったのです。

まさか、その判断が旅行先でのトラブルにつながるとは、Yさんも思っていなかったそうです。

「少しセルが弱い」だけだから大丈夫だと思っていた

Yさんの車は、点検時からセルモーターの回り方が以前より少し弱くなっていました。

「エンジンをかけるとき、ちょっとだけ『キュルキュル』が弱い気はするんです。でも、普通にかかるので大丈夫かなと」

確かに、バッテリーが劣化していても、寿命を迎える直前までエンジンが普通に始動できるケースは珍しくありません。そのため、「昨日まで普通に使えていたのに、突然エンジンがかからなくなった」というトラブルが起こることもあります。Yさんの場合も、点検時点で今すぐ走行不能になるほどの状態ではありませんでした。しかし、夏休みの長距離移動を控えていたこともあり、私はバッテリー交換をおすすめしていました。

ところが、旅行の日程が迫っていたことから、Yさんはそのまま出発することに。

「帰ってきたら交換しますよ」

そう話していたYさんでしたが、結果的に「帰ってきてから」という予定は大きく変わってしまいました。

猛暑の長距離ドライブでバッテリーに負担が集中

旅行当日は朝から気温が高く、Yさん一家は高速道路を使って帰省先へ向かいました。車内ではエアコンを長時間使用。さらに渋滞に巻き込まれたことで、冷却用の電動ファンも頻繁に作動していたといいます。

「子どもがいるので、エアコンはずっとつけっぱなしでした。スマホも充電していましたし、ナビもドラレコも動いていました」

もちろん、これらの電装品を使っただけで正常な車のバッテリーが突然ダメになるわけではありません。しかし、もともとバッテリーが劣化していたうえ、猛暑のなかでエアコンなどの電装負荷が重なり、さらに渋滞でエンジン回転数が低い状態が続けば、バッテリーや充電系統には負担がかかります。

そして帰省先へ向かう途中のサービスエリアで、Yさん一家は休憩することに。ところが、休憩を終えて車に戻り、エンジンをかけようとしたところ、

「カチカチ」

セルモーターの作動音がするだけで、エンジンが始動しません。

「さっきまで普通に走っていたのに」

Yさんは何度か始動を試しましたが、状況は変わりません。結果的にロードサービスを手配することになり、家族旅行は大幅に予定変更。現地でバッテリーを交換することになったそうです。

夏の旅行前こそ「始動できるから大丈夫」に注意

後日、Yさんは「やはり出発前に交換しておけばよかったですね」と苦笑いしていました。

バッテリーは、寿命を迎える直前まで普通に使えてしまうことがあります。「エンジンがかかるから問題ない」と判断していても、次にエンジンを止めたあと、再始動できる保証はありません。

特に夏の帰省や旅行などで長距離ドライブを予定している場合は、出発前の点検が大切です。セルモーターの回り方が以前より弱い、ライトが暗く感じる、バッテリーを長期間交換していない――こうした兆候があれば、早めに整備工場などで状態を確認してもらいましょう。

また、点検する際はバッテリーだけでなく、オルタネーター(発電機)の発電状態も確認してもらうことをおすすめします。バッテリーを新品に交換しても、発電機側に問題があれば再びバッテリーが上がってしまう可能性があるためです。そして、もし旅行前の点検で「交換したほうがよい」と言われた場合は、できるだけ出発前に対応しておくのが安心です。どうしてもその場で修理できない場合でも、整備士に「今すぐ交換が必要な状態なのか」「短期間なら走行可能なのか」を確認しておきましょう。

なお、Yさんのケースのように、点検時点ではすぐに走行不能になる状態ではなくても、その後の使用状況や気温などによって急激に悪化することがあります。「まだ大丈夫」と自己判断せず、旅行や帰省など長距離移動を控えているなら、リスクを考えて早めに交換することが重要です。万一に備えて、自動車保険のロードサービスの内容を確認しておくこともおすすめです。バッテリー上がりへの応急対応やレッカーサービスなどが付帯している場合があります。

「エンジンがかかるから大丈夫」ではなく、「次に止めたあとも確実にかかるだろうか」と考えること。

せっかくの夏休みや家族旅行をトラブルで台無しにしないためにも、少しでも始動性に違和感があるなら、出発前に一度点検しておきたいところです。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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