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令和の猛暑で進む「駅員の脱帽」、新しい常識に現役鉄道員の見解は

  • 2026.7.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

鉄道のイベントなどに足を運ぶと、子どもたちが鉄道員の制帽を被って嬉しそうに記念撮影をする姿をよく目にします。鉄道と聞いて思い浮かべるイメージは人それぞれ異なりますが、やはりピシッと被った制帽の姿を連想する人は多いのではないでしょうか。

この制帽は単に頭を保護するためだけのものではなく、鉄道員としての記号や象徴としての役割を担っています。今回は、そんな制帽に隠された意味と、近年の変化について迫ります。

筆者が感じた「制帽の重み」

筆者自身も、この制帽が持つ「意味と重み」を身をもって経験したことがあります。それはまだ駅で研修を受けていた頃のことです。

業務の都合で、制帽を脱いだ状態で一般の乗客に混じって電車に添乗していた時は、誰からも声をかけられることなく、完全に車内の日常風景に馴染んでいました。しかし、目的の駅に到着し、身支度を整えてから制帽を被ってホームに立った瞬間、まるで魔法にでもかかったかのように、次々とお客様から「○○線への乗り換えはどこですか?」「次の電車は○○には停まりますか?」と問い合わせを受けるようになったのです。

帽子を被るだけで、周囲からの見られ方が「ただの人」から「鉄道員」へと一変したのです。制帽が持つ圧倒的な存在感と責任の重さを肌で感じた忘れられない出来事でした。

ビジネススーツ化する制服と「記号」としての制帽

近年の鉄道制服には、一見すると一般的なビジネススーツのようなスタイリッシュなデザインのものが増えました。そのため、ネクタイや名札などの細かい意匠に詳しくなければ、脱帽している状態ではビジネスパーソンと見分けがつかないことも少なくありません。

しかし、制帽を被っていれば、遠くからでも、あるいは全く鉄道に詳しくない人であっても、ひと目で「駅員さんだ」「車掌さんだ」と認識することができます。これは警察官や警備員など、制服を着用する他の職業にも共通して言えることですが、制帽はお客様が助けを求めるための最もわかりやすい「記号」なのです。

多様化とジェンダーレス化

そんな重要な役割を持つ制帽ですが、実は時代とともにその形や運用にも変化が生じています。

以前は、つばが広くトップが平らな「官帽」と呼ばれる昔ながらのスタイルが一般的でした。しかし、女性の駅員や乗務員が現場で幅広く活躍するようになると、女性の髪型にも合わせやすい丸みを帯びた「チロリアン帽」や、円筒形の「ドゴール帽(ケピ帽)」なども登場し、デザインの多様化が進みました。

さらに近年では、男女で制帽のデザインを分けるのではなく、男女兼用とする会社も増えています。特にドゴール帽は男女どちらが被っても違和感がないスタイリッシュなデザインであるため、ジェンダーレスな制服の象徴として兼用で採用する鉄道会社が少なくありません。

猛暑対策による「脱帽」という新しい常識

そして、さらに近年見られる大きな変化が、夏季の暑さ対策としての脱帽の広がりです。

連日のように危険な暑さが続く中、熱中症予防や乗務員の体調管理を最優先とし、駅係員や乗務員の制帽着用を必要に応じて省略、あるいは自由化する動きが進んでいます。実際に、南海電鉄が夏季期間での「省略」を、東急電鉄が通年での「自由化」を認めるなど、乗務員や駅係員の制帽着用を見直す発表を行って話題となりました。

個人的には、やはり制帽をピシッと被っている姿のほうが鉄道員として様になるのではないか、と思う気持ちも少しだけありますが、社員の健康と安全を守るためには当然の決断であり、これもまた時代の大きな流れと言えるでしょう。

変わるスタイルと、変わらない誇り

筆者がかつて駅のホームで実感したように、制服と同じく制帽には、お客様に安心感を与え、案内役としての存在を示すという強力な「記号」の意味合いがあります。

時代とともにデザインがよりモダンで働きやすいものへと変わり、猛暑の時期には脱帽が認められるようになっても、その根底にある鉄道員としての誇りや、お客様の安全を守るという存在意義が変わることは決してありません。次に電車に乗る機会があれば、彼らの頭上の制帽にも、ぜひ少しだけ注目してみてください。


参考:
接客制服のリニューアルについて(JR東日本)
2025年12月1日(月)から鉄道係員の制服をリニューアルします!(阪神電車)
駅係員と乗務員の制帽着用を必要に応じて省略します(南海電鉄)
乗務員の制帽の着用を自由化します(東急電鉄)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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