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「ゴリゴリ」という音が鳴り響く中、40代男性が整備工場で見せられた写真に言葉を失ったワケ

  • 2026.8.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「ブレーキは普通に効くから、もう少し大丈夫ですよね?」

整備の現場では、このような相談を受けることが少なくありません。しかし、ブレーキパッドは限界を超えて使い続けると、交換する部品が増え、修理費が大幅に高額になることがあります。

今回は、私が自動車整備業務に携わっていた際に相談を受けたお客様の事例をもとに、「まだ止まれる」という判断が招いた思わぬ結果についてお話しします。

点検では「まだ少し残っています」と伝えたが

私が自動車整備業務に携わっていた頃に相談を受けた、提携整備工場へ点検に来られたお客様、Mさん(40代・男性)の事例です。車検から約1年が経過した定期点検で、フロントブレーキパッドの残量は約3mmでした。整備士が車両を確認した後、Mさんへ説明します。

「ブレーキパッドは残り3mmほどですね。まだブレーキは効いていますが、次回の点検まで待たず、近いうちの交換をおすすめします」

するとMさんは少し困った表情で答えました。

「最近は何でも値上がりしていますし、まだ音もしないので、もう少し乗ってから交換します」

その時点では、ブレーキ性能に大きな異常はなく、異音もありませんでした。そのため整備士は、

「できるだけ早めに交換してください」

とお伝えしましたが、お客様自身の判断で、後日あらためて入庫されることになりました。この時点では、まだブレーキパッドだけの交換で済む状態だったのです。

パッドがなくなると、金属同士が直接削り合う

ブレーキパッドには摩擦材と呼ばれる部分があり、この素材でブレーキディスク(ローター)を挟み込むことで車を減速させています。新品では10mm前後ある摩擦材も、3mm程度になると交換時期が近づいています。この頃から厚みが薄くなることで放熱性能も低下し、摩耗の進行が早くなることがあります。

さらに走行を続けると、摩擦材が完全になくなり、パッドの金属製バックプレートがローターへ直接接触します。最初は「キーキー」という高い音が聞こえる程度ですが、そのまま放置すると「ゴリゴリ」という金属が削れるような音へ変わります。この段階では、ブレーキを踏むたびにローターが削られ、深い傷が入ってしまいます。

さらに悪化すると、ブレーキキャリパーへ余計な力がかかり、ピストンやシールを傷めるケースもあります。つまり、本来交換するはずだったブレーキパッドだけでは済まなくなってしまうのです。

数万円で済んだ修理が、十数万円以上になることも

数か月後、Mさんは再び整備工場へ来られました。駐車場へ入ってきた車からは、「ゴリゴリ」という大きな音が聞こえています。

「実は少し前から音はしていたんですが、仕事が忙しくて」

点検すると、ブレーキパッドの摩擦材は完全になくなり、ローターには深い傷が何本も刻まれていました。整備士は写真を見せながら説明します。

「今回はブレーキパッドだけでは修理できません。ローターも交換が必要です」

さらに確認すると、キャリパーの動きにも不具合があり、オーバーホールが必要な状態でした。もし残量3mmの時点で交換していれば、一般的にはブレーキパッド交換のみで数千円~数万円程度(車種によって異なる)で済んだ可能性があります。

しかし今回は、

  • ブレーキパッド交換
  • ブレーキディスクローター交換
  • キャリパーのオーバーホールまたは交換
  • ブレーキフルード交換
  • それぞれの工賃

が必要となり、修理費は十数万円以上になりました。

つまり、「パッド交換だけで済んだはずの費用」と比較すると、結果的に3倍以上の出費となってしまったのです。もちろん、すべてのケースでここまで修理費が膨らむわけではありません。しかし、摩耗を放置するほど交換部品が増え、高額修理につながるリスクは確実に高まります。

ブレーキは「まだ止まれるか」ではなく、「安全に止まり続けられるか」が重要です。異音が出てから交換を考える方も少なくありませんが、警告音が鳴る頃には摩耗がかなり進んでいる場合があります。また、警告用の金具が付いていない車種では、異音が出る前に摩擦材が限界を迎えることもあります。定期点検では、ブレーキパッドの残量だけでなく、ディスクローターの摩耗や偏摩耗、キャリパーの固着などもあわせて確認してもらうことが大切です。

ブレーキは命を守る最も重要な保安部品の一つです。「もう少し乗れるから」と交換を先送りにするより、「まだ余裕があるうち」に交換することが、安全面でも費用面でも結果的によい選択になるケースが多いでしょう。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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