1. トップ
  2. 暮らし
  3. 伯母「助手席がいい」介護のためスズキ ソリオを選んだ44歳女性…広い後席に起きた“想定外の使われ方”

伯母「助手席がいい」介護のためスズキ ソリオを選んだ44歳女性…広い後席に起きた“想定外の使われ方”

  • 2026.8.3
undefined
出典:PIXTA(※画像はイメージです)

走行距離20万kmを超えるスズキ ソリオには、ある家族の軌跡が刻まれています。最初は親族の介護を目的として購入された車でした。しかし、良かれと選んだ広い後席は介護ではあまり使われず、やがてご夫婦の車中泊の拠点へと役割を変えます。

そして現在、その後席は子どもが喜ぶ秘密基地へと変化しました。想定外の使われ方を経て、家族の変化に寄り添い歩んできた1台の車のエピソードをご紹介します。

家族のために選んだコンパクトな一台

Aさん(44歳)が現在の愛車であるスズキのソリオを購入したのは、2016年のことでした。

当時、慕っていた伯母の介護を、母と担うことになり、送迎のための車が必要になったそうです。その際、車選びで何よりも重視したのは、ご自身が安心して運転できるコンパクトな車体でした。というのも、Aさんは車の運転があまり得意ではないため、大きな車にはどうしても抵抗があったようです。

また、体重が80kg以上ある伯母の通院を考えると、少しでも乗り降りがしやすい工夫も欠かせません。そこで条件に合致したのが、スライドドアを備え、室内空間にゆとりがあるソリオだったのです。

広い後席ならば、体格のよい伯母も窮屈な思いをすることなく、ゆったりと過ごせるのではないかと考えました。せっかくなら、後席の肘掛けやテーブルを使ってくつろいでほしいという、優しいもてなしの気持ちが込められた選択でした。

助手席に込められた、自立への思い

そのような思いで選んだ車でしたが、納車後に思いがけないことが起こります。いざ車に乗せて通院しようとすると、伯母はAさんが心を込めて用意した広い後席ではなく、助手席を選ぶことが多かったそうです。

なぜ、広くて快適なはずの後席を好まなかったのでしょうか。実は、それまで比較的狭い車に乗り慣れていた伯母にとって、ソリオの後席は前後左右に余裕がありすぎたようです。空間が広いぶん、走行中に身体が揺れることに不安を感じていたのかもしれません。

さらに、後席の手すりは位置が高く、自力で乗り込むには誰かの介助が必要になってしまいます。一方で助手席であれば、シートに手をかけることで、どうにか自分の力だけで身体を支え、乗り込むことができました。人に介助されず、自分で乗れることを大切にする自立心が、助手席を選ばせていたのです。

この出来事から、介護する側が考える便利な機能と、介護される側が感じる乗りやすさは、必ずしも一致しないということに気づかされたといいます。それでも、月に1回の通院は、二人にとって大切な時間でした。助手席に座ってシートベルトを握りしめ、前を向いてうれしそうにはにかむ姿や、帰りのドライブスルーで買ったポテトをおいしそうに食べる横顔は、とてもかわいかったと振り返ります。

使われなかった後席が夫婦の冒険拠点へ

こうして、当初の想定とは異なり、伯母があまり使うことのなかった後席ですが、やがてまったく別の形で活躍する機会が訪れます。

きっかけは、夫がテレビ番組の影響で四国に興味を持ったことでした。夫婦で香川県へ向けてロングドライブをしていた道中、パーキングエリアで休憩をとることになります。その際、初めてソリオの座席を倒してフラットに近い状態にしてみたところ、思いのほか心地よく休めたそうです。

この偶然の発見が、夫婦の旅のスタイルを大きく変えることになります。宿泊施設に頼るだけでなく、ソリオの車内で休みながら四国八十八か所を巡る車遍路がスタートしたのです。大人2人が足を伸ばして眠れるように、マットレスや布団を敷いて高さを調整するなど、快適な空間を作り上げる過程には、大人の秘密基地を作るようなワクワク感があったのかもしれません。

また、お遍路道にはすれ違いが難しい細い山道も少なくありません。ヒヤッとするような場面でも、大きすぎず小回りが利くソリオの車体は、運転する二人に確かな安心感を与えてくれたといいます。晴れた日には、海沿いのRVパークで車を停め、美しい星や月を眺めながら夜を明かすこともありました。介護のために選ばれた車内の空間は、いつしか夫婦の冒険を支える頼もしいベースキャンプへと変化していったのです。

ライフステージとともに変わる車の役割

それから月日は流れ、大切に介護を続けていた伯母は亡くなり、現在、家族は夫と幼い息子の3人となっています。

家族の形が変わっても、ソリオは変わらず日々の生活に寄り添い続けています。今でも家族3人で車中泊に出かけることがあり、フラットに広げられた車内を見た息子は、「『ひみつきち』みたい」と満面の笑みを見せるそうです。そんな無邪気な言葉は、かつて夫婦で工夫を凝らした車中泊の思い出とも重なり、親としてたまらなく愛おしい瞬間だったはずです。

かつて、広すぎて身体を支えにくいと敬遠されてしまった後席が、夫婦の車中泊を支える寝室となり、今では子どもが目を輝かせる秘密基地へと役割を変えました。同じ車内の空間であっても、乗る人や家族のライフステージに合わせて、まったく異なる意味を持つようになります。当初は想定していなかった役割を次々と引き受けてくれるソリオの懐の深さが、この家族の暮らしをより豊かに彩ってくれたといえるのではないでしょうか。

失敗ではない、家族の歴史が詰まった空間

広い後席でくつろいでもらうという、購入時に思い描いていた使われ方は、ほとんどされなかったかもしれません。しかし、だからといって車選びが失敗だったわけではないのだと、Aさんは穏やかに語ります。

想定外の使われ方から始まったものの、生活の変化に合わせて車が役割を変え、数えきれないほどの思い出を積み重ねてきました。助手席でポテトをおいしそうに食べていた伯母の横顔や、夫婦で語り合いながら見上げた海沿いの星空、秘密基地にはしゃぐ子どもの元気な声も大切な思い出です。

20万kmという過酷な道のりを共にする中で、車内のあちこちに大切な家族との記憶が深く染み込んでいます。新しい車を選ぶ選択肢もある中で、走れる限り必要な修理をしながら、これからもこのソリオに乗り続けたいと考えているそうです。

私たちが車を選ぶとき、ついスペックや利便性ばかりを追い求めてしまうことがあります。しかし、本当に価値のある車とは、家族の変化に寄り添い、ともに歩んでくれる存在なのかもしれません。単にモノを長く使うというだけでなく、家族の歴史が詰まった空間を大切に守り続ける姿勢に、車と人との温かい関係性が垣間見えます。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ