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「まだエンジンかかるし…」交換を先延ばしにした30代男性の末路。夏の家族旅行を襲った“SAでの悲劇”

  • 2026.8.2
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「セルモーターの回りが少し弱い気がするけれど、まだエンジンはかかるから大丈夫だろう」

そう考えてバッテリー交換を先延ばしにしている方は少なくありません。しかし、バッテリーは寿命が近づいても直前まで普通に使えることが多く、ある日突然エンジンが始動しなくなるケースがあります。

今回は、私が自動車整備業務に携わっていた頃に担当し、後日その経過を知ることになったお客様の事例をもとに、旅行中に起きたバッテリートラブルについて紹介します。

「まだ使えるから」が旅行先でのトラブルにつながった

私が自動車整備業務に携わっていた頃、修理の相談に来られたお客様の一人に、Fさん(30代男性)がいました。定期点検の際、バッテリーをテスターで測定すると性能がかなり低下しており、交換時期を迎えている状態でした。私は整備担当者から報告を受けた内容をもとに、Fさんへこう説明しました。

「今すぐエンジンがかからなくなるとは言えませんが、旅行前ですし交換をおすすめします」

するとFさんは少し考えてから、

「まだ普通にエンジンはかかりますし、旅行から帰ってきてから交換します」

と話されました。その時点では始動は可能で、緊急に走行を中止しなければならない状態ではありませんでした。そのため、私どもからもリスクを十分説明したうえで、お客様の判断により後日交換することになりました。

しかし、その数日後に家族旅行へ出発したFさんから連絡が入ります。目的地へ向かう途中までは問題なく走行できていましたが、サービスエリアで休憩したあと、再び出発しようとキーを回してもエンジンが始動しません。

「カチッという音だけでセルが回らないんです」

電話越しにも困惑した様子が伝わってきました。

猛暑と電装負荷が重なり、突然エンジンが始動不能に

バッテリーは劣化すると少しずつ性能が落ちますが、完全に寿命を迎える直前までは普通に使えてしまうことも珍しくありません。特に夏場は高温による影響でバッテリーへの負担が大きくなります。

さらに旅行中は、

・エアコンを常時使用する
・渋滞が続く
・スマートフォンの充電やカーナビなど電装品を多く使用する

といった条件が重なり、バッテリーに大きな負荷がかかります。Fさんも高速道路の渋滞を長時間走行しており、サービスエリアでエンジンを停止したあと、再始動に必要な電力を確保できなくなってしまったようでした。

結局、自力での復旧はできず、ロードサービスを依頼することになりました。

「バッテリー交換だけなら数万円で済んだのに」

Fさんは苦笑いしながら話されていました。レッカー搬送後は予定していた観光を取りやめることになり、スケジュールも大幅に変更。旅行そのものは続けられたものの、「もっと早く交換しておけばよかった」という後悔が残ったそうです。

バッテリー代だけでなく「その後の出費」まで考えて備えよう

バッテリー交換は決して安い整備ではありません。近年はアイドリングストップ車や充電制御車など、高性能バッテリーを採用する車種も多く、車種によっては交換費用が高くなることもあります。そのため、「もう少し使えるだろう」と交換を先送りしたくなる気持ちは理解できます。

しかし、本当に大きな負担になるのは、交換費用ではなく、その後に発生する付随費用です。旅行先や高速道路上でエンジンが始動しなくなれば、レッカー搬送が必要になる可能性があります。さらに予定変更による宿泊費や交通費、予約のキャンセル料など、思わぬ出費が重なるケースもあります。一方で、多くの自動車保険(任意保険)にはロードサービスが自動でセットされており、一定距離までのレッカー搬送や、帰宅が困難になった際の宿泊費・交通費などが補償される場合があります。

ただし、すべての契約が同じ内容ではありません。ロードサービス特約が付帯されていない契約や、レッカー距離・宿泊費などが補償範囲を超えた場合には、高額なレッカー代や宿泊費を自己負担しなければならないこともあります。そのため、旅行や帰省の前には、自分の任意保険でどこまでロードサービスが利用できるのかを一度確認しておくことをおすすめします。

また、バッテリーは「昨日まで普通だったのに、今日突然始動しない」という故障が珍しくない部品です。交換時期を過ぎている場合や、セルモーターの回りが以前より弱く感じる場合は、旅行前に点検を受け、必要に応じて適合するバッテリーへの交換を検討しましょう。適合する種類のバッテリーを使用することも重要です。

バッテリー交換費用だけを見ると先送りしたくなりますが、レッカー代や宿泊費、予定変更による損失まで含めて考えれば、予防交換のほうが結果的に経済的になるケースは決して少なくありません。

出発前の少しの備えで、安心・安全な状態を作り、ぜひ思い出に残る楽しい夏の旅行を満喫してください。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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