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22年前から“もがき続ける「孤独」に寄り添う”応援歌 星空の夜だけじゃない愛され続ける一曲

  • 2026.8.2
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2003年2月、Zepp Tokyoで行われたBUMP OF CHICKENのライブより(C)SANKEI

BUMP OF CHICKENの名前を聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは『天体観測』(2001年)だろう。けれど、長く聴いてきたリスナーが人生の節目にそっと再生するのは、しばしば別の曲だ。進路に迷った夜。働き始めて最初の壁にぶつかった朝。まわりの誰もが先へ進んでいて、自分だけが取り残された気がする時間。そういう場面で棚から取り出されてきた一曲がある。

遡ること2004年7月7日、バンドが8作目のシングルとして発表した楽曲だ。のちのアルバム『ユグドラシル』を先導する先行シングルであり、カタカナの英単語を三つ連ねた、少し風変わりなタイトルを掲げている。

BUMP OF CHICKEN『オンリー ロンリー グローリー』(作詞・作曲:藤原基央)ーー2004年7月7日発売

栄光の隣に孤独を置いた三語の呪文

オンリー、ロンリー、グローリー。唯一、孤独、栄光。三つの言葉はどれも語尾が「リー」で韻を踏み、声に出すとひとつづきの呪文のように転がる。意味のうえでは並ぶはずのない言葉たちが、音の力で強引に手をつないでいるのだ。

目を引くのは、真ん中に「孤独」が据えられていることだ。栄光という言葉は、ふつう歓声や祝福とセットで使われる。表彰台、スポットライト、鳴りやまない拍手。ところがこのタイトルでは、栄光の隣に立っているのが孤独なのである。

しかもこの看板は、英語の綴りではなくカタカナで記されている。意味を読み取るより先に、音の連なりとして耳に入ってくる表記だ。だから聴き手はあとから気づくことになる。呪文めいた響きのなかに、ずいぶん硬派なことが書いてあったのだ、と。

つまり、ここで歌われる栄光は、誰かに認められて授かるものではない。たったひとりで、自分が自分に与えるものだ。他人の評価を待たず、積み重ねてきた時間だけを根拠に自分を肯定する。曲の主題は、この三語の看板にすでに書き込まれているように映る。

前の場面を語らずに始まる歌い出し

歌詞の入り方も風変わりだ。歌い出しの最初の言葉は「そして」。接続詞である。まるで前の場面がすでにあったかのように、この歌は物語の途中から幕を開ける。聴き手は、語り手の迷いの続きに、いきなり立たされることになる。

1番の語り手は、まだ歩き出せずにいる。まわりが先へ進んでいくなかで、自分だけが足踏みをしているような感覚。自分に問いを投げては、答えを出せずに抱え直す。その煮え切らなさは、進路の岐路や、夢と現実の距離を測りかねている時期の心境と、痛いほど重なる。

注目したいのは、この迷いが誰かのせいにされないことだ。社会が悪い、運が悪いという方向へ逃がさず、語り手はあくまで自分の足元だけを見つめている。この潔癖さが、聴き手の甘えも同時に断ち切ってくる。

けれど曲が進むにつれて、語りは少しずつ体温を上げていく。自問は覚悟に変わり、止まっていた足は歩き出す。そして終盤、歌は決定的な地点にたどり着く。選ばれるのを待つのではなく、自分から選びに行けばいい。そう言い切るところまで、語りが立ち上がっていくのだ。駆け足のバンドサウンドと、切実さを隠さない歌声が、その変化を後ろから押していく。

受け身の問いで始まった歌が、能動の宣言で終わる。この視点の移動こそが、この曲の背骨だと感じる。励ましを外から浴びせるのではなく、迷っている本人の内側で起きる変化を、順を追ってなぞらせる。だから聴き終えたとき、背中を押されたというより、自分の足で一歩踏み出したような感触が残る。

歌声そのものにも、その移動が刻まれている。序盤は言葉を確かめるように、一音ずつ置いていく歌い方だったのが、終盤になると音の輪郭が太くなり、息の勢いごと前へ出てくる。うまくなったというより、迷いの分だけ声に力がこもっていく変化だ。歌詞の意味を追わずとも、声の質感の推移だけで、この曲がどこへ向かっているかが伝わってくる。

結果になっていない努力を先に認める歌

合否の通知、採用の連絡、数字で測られる日々の成果。誰かに選ばれたかどうかは、あの頃よりも細かく、速く突きつけられるようになった。この曲を必要とする状況は、減るどころか増えている。

あらためて聴き直すと、これが慰めの歌ではないことがよくわかる。孤独を消してはくれない。代わりに、孤独のまま立ち上がるための手順を、1曲ぶんの時間をかけて先にやってみせてくれる。

たとえば、深夜の机で資格試験の問題集を開くとき。何度目かの応募書類を書き直すとき。結果がまだ出ていない時間は、誰にも褒められない。この曲はそういう時間の側に立つ。まだ結果になっていない努力を、栄光の助走として先に認めてくれるのだ。

栄光という言葉を、表彰台から引きずり下ろして、ひとりの部屋に持ち込んだこと。それがこの曲のいちばんの発明だと言いたくなる。拍手の音がしない栄光は、確かにある。それを知っている人の隣で、この歌は鳴り続けてきた。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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