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25年前、跳ねるビートに忍ばせた"ラップという異物感" 爽やかさが「オトナかっこいい」へ裏返る瞬間

  • 2026.7.31
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2024年9月、映画『まる』完成報告イベントに出席した堂本剛(C)SANKEI

DOMOTOとしてステージに立つ二人を見ると、隙のない大人の佇まいにまず目がいく。だが四半世紀近く前、彼らがまだKinKi Kidsと名乗っていた頃にも、同じ質の色気をまとった瞬間があった。

KinKi Kids『LOVESICK』(作詞:戸沢暢美/作曲:Face 2 fAKE)ーー2001年7月25日発売

シングルにはならず、アルバム『E album』のオープニングナンバーとして送り出された1曲。アルバムの扉を開ける役目を黙って担ってきた曲だ。当時のKinKi Kidsを思い浮かべるとき、多くの人がまず爽やかな歌声を思い出すだろう。だがこの曲を聴くと、その印象がすっと裏返る。

跳ねるビートに忍ばせたラップという異物感

イントロから漂うのは、湿った夜の匂いだ。ヒップホップ的なビートがゆったりと跳ね、艷やかなギターが差し込まれる。開放的でありながら、どこか陰影を帯びた響き。作曲・編曲を手がけたFace 2 fAKEは、KinKi Kidsに『ボーダーライン』なども提供してきた職人コンビで、この曲でもグルーヴの組み立て方に迷いがない。

聴きどころは、歌の合間に差し込まれるラップ調のパートだ。歌謡曲然としたバラードやミディアムテンポの多かった当時のKinKi Kids楽曲のなかで、この曲は明確に本格的なR&Bの語法へ踏み込んでいる。歌声とラップの切り替えが、曲全体のテンポ感を崩さずに緊張と緩和をつくり、聴くたびに「かっこいい」という言葉が素直に出てくる仕上がりだ。二人組デュオならではの声の掛け合いも、このR&B的な構成のなかでこそ生きている。

太い低音のベースラインが終始曲を支え、そこにギターとオルガンが顔を出す構成は、単なる真似事のブラックミュージックではない。歌とラップの受け渡しの間合いが絶妙で、力任せに畳みかけるのではなく、余白を残しながら耳を持っていく。歌謡曲の枠を借りながらも、演奏そのものが海外のR&Bを聴き込んだ耳で組み立てられているのが分かる仕上がりだ。

低く沈んだ声で言葉を置いていくラップのパートから、伸びやかな歌に切り替わる瞬間は、この曲いちばんの鳥肌どころだ。声の温度が一段上がるその落差が、聴き手の耳を一気に引き寄せる。歌とラップという異なる語り口を、力みなく同じ一曲のなかで往復できるのは、二人が積み重ねてきた歌唱の幅の広さがあってこそだろう。

少年の声が沈んで恋わずらいに変わる瞬間

2001年のKinKi Kidsは、先行シングル『情熱』に象徴されるように、アイドルの枠から一歩踏み出そうとしていた時期だった。『LOVESICK』は、その転換期の空気を最も濃く吸い込んだ1曲だ。デビューから数年が経ち、少年らしさを卒業しつつあった二人にとって、アルバムの1曲目という位置は、これから見せたい方向性を最初に宣言する場所でもあった。

歌い出しの声は、これまでのような真っ直ぐな爽やかさではなく、少し低く沈んだ位置から始まる。LOVESICK=恋わずらいという言葉が示す通り、満たされない欲求をにじませた歌唱で、そこに大人の余裕と危うさが同居する。アルバムの1曲目にこの温度の曲を置いたこと自体が、彼らがどこへ向かおうとしていたかを物語っている。

歌詞を手がけたのは戸沢暢美。恋に落ちた末の渇望をストレートな言葉で描いた詞が、ブラックミュージックの器に乗ることで、湿度の高い大人の恋愛観へと変換されている。タイトルの「LOVESICK」という言葉どおり、この曲には満たされた幸福感より、手に入りそうで入らないもどかしさが色濃い。夜の帳が下りたあとの部屋で、ひとり相手を思い浮かべているような沈んだ質感の歌が続く。明るい少年の声で歌われてきたそれまでの楽曲とは違う、ひりつくような大人の欲望がここにはある。

時を隔てて映像がひらいた新しい入口

2024年8月、公式ミュージックビデオがYouTubeで公開された。雨、ひっくり返った車、ボウリング場など、脈絡のなさそうなモチーフが連なる映像は、曲の持つ気だるさと呼応するように、見る者を静かに引き込む。台詞も説明もほとんどなく、映像と音だけで恋わずらいの感触を伝えてくる作りは、当時の歌詞とアレンジが持っていた曖昧な浮遊感を、そのまま映像言語に置き換えたようにも映る。

DOMOTOとして活動を続ける二人の現在地から振り返れば、『LOVESICK』はアイドルからアーティストへ踏み出した過渡期の記録であり、同時に、いまも変わらず色気をまとい続けている二人の原点のひとつでもある。シングル曲のような分かりやすい主張は薄いぶん、アルバムを通して聴いたときにこの曲だけが放つ体温の違いに気づく。派手な入口ではなかったからこそ、長く語り継がれる余地が残った。四半世紀前に鳴らされた恋の熱は、まだ冷めていない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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