1. トップ
  2. エンタメ
  3. バラエティの“愛され天然キャラ”から一転、「人妻を翻弄する青年」へ。なぜ彼の演技はこれほどまでに振り切れるのか

バラエティの“愛され天然キャラ”から一転、「人妻を翻弄する青年」へ。なぜ彼の演技はこれほどまでに振り切れるのか

  • 2026.7.21
undefined
※ChatGPTにて作成(イメージ)

バラエティ番組の中の松田元太は、明るく、どこか天然で、思わず笑ってしまう人だ。それがTravis Japanのメンバーとして活動する彼の、バラエティを通じて知られてきた一面である。

けれど、俳優としての彼は、その像から遠く離れた場所に立っていることがある。1つの作品ではなく、複数の役柄と活動を並べたとき、この人の幅はどこまで見えてくるのか。それを測ってみたい。

危うさへ踏み込む青年をどう成立させたか

テレビ朝日系『東京タワー』(2024年)で松田が演じた大原耕二は、21歳の大学生。夜はビル警備員、昼は家庭教師として働きながら、年上の女性と関係を持った友人への焦りと、年上女性への憧れを抱え、家庭教師先の既婚女性・川野喜美子(MEGUMI)へ自ら近づいていく。「人妻を翻弄する青年」という言葉が当てはまるのは、この入り口までである。

物語が進むと、喜美子もまた能動的に耕二へ向かい、2人は双方からのめり込んでいく。そして関係が引き起こした結果に、耕二自身が直面することになる。仕掛けた側だった青年が、自ら始めた関係がもたらした結果に直面する。松田が演じたのは、この相互の物語の全体だった。

出演にあたり、松田は「新しい松田元太」を見せたいという趣旨を語っていた。興味深いのは、耕二と自分の共通点として適当さ、雑な感じ、男の子っぽさを挙げたうえで、似ているからこそ同じには見せないという課題を自分に課していたことだ。共通点を認めながら、同じには見せない。本人の言葉からは、そういう課題設定でこの役へ向かったことが読み取れる。

その設計は撮影の細部にまで及ぶ。ラブシーンではインティマシーコーディネーターと動きを一つずつ相談し、顔の角度、手の位置、2人の距離、そのときの感情、そして喜美子の表情を大切にしながら撮影を重ねた。危うい題材のただなかにある場面が、こうした一つずつの確認の上に撮られていた。

クールな年下という真逆の助走

『東京タワー』の前年、『結婚予定日』(2023年)で松田が演じた結城真臣は、クールで仕事のできる年下の営業部員だ。松田本人がこの役を、普段の自分と「真逆」だと説明している。明るく天然というよく知られた像から見れば、感情を表に出さない人物は確かに対極にある。その冷静さは、感情を顔に出さず、呼吸を抑えることで組み立てられた。表情を消すだけでなく、身体のリズムごと役に合わせていく方法だ。

注目したいのは、離れていく方向である。耕二が危うさへ向かったのに対し、結城は冷静さへ向かった。素の松田から見て、2つの役は同じ方角に離れているわけではない。役ごとに別の方向へ、別の作り方で離れていく。『東京タワー』の手前に、こうした別の方角へ離れる役を見せていた。

津軽弁と演歌で挑む単独初主演

2026年6月から、松田の単独初主演舞台『俺節』が開幕した。演じた海鹿耕治は、青森から上京して演歌歌手を目指す青年である。ここで求められたのは、津軽弁と演歌という、危うい大学生とも冷静な営業部員とも別の道具立てだった。

映像で見せてきた危うさとも冷静さとも違う、泥臭さと地方性を帯びた挑戦だ。方言で話し、歌で夢を追う青年を、単独主演として舞台の上で背負う。危うい大学生、冷静な営業部員、そして演歌歌手を目指す青年。並べてみれば、また新しい方角へ踏み出したことがわかる。

役の落差とステージを行き来する俳優アイドル

2026年の夏、Travis JapanとしてのSUMMER SONIC 2026への出演が控えている。舞台で演歌歌手を目指す青年を生きた直後に、大型音楽フェスのステージで歌い踊る予定になっている。

危うさ、冷静さ、泥臭さ、そして大型音楽フェスのステージが、1人の中に並んで存在しているという現在地。バラエティで愛される天然な人という像は嘘ではない。ただそれは一面にすぎず、演じる役でそれぞれ別の方角へ振り切ってみせる幅こそ、いま松田元太を見続ける理由になっているように思う。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる

注目コンテンツ