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“癒し系王子様”の裏に隠された本領。殺人犯から誠実な判事まで…“イケメンパフォーマー”の現在地

  • 2026.7.21
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2025年10月、東京国際映画祭のレッドカーペットで撮影に応じる岩田剛典(C)SANKEI

ひとりの俳優の出演歴を眺めるとき、私たちはつい分かりやすい物語を探してしまう。爽やかなイメージで売れた俳優が、ある日を境に暗い役へ転じた、というような一本道の筋書きだ。だが岩田剛典の歩みは、その型に収まらない。

三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして立ちながら、俳優としては穏やかな恋愛映画の青年から、殺人事件をめぐり法廷に立つ男、冴えない中学校教師までを引き受け、この先には大河ドラマの歴史人物とミュージカルの主演が控える。反転の物語ではなく、幅そのものを年代順にたどってみると、この俳優の輪郭はむしろ鮮明になる。

寡黙な総長役と穏やかな恋愛役が並んでいた

出発点からして、岩田の役歴は一色ではなかった。2015年から2017年にかけての『HiGH&LOW』シリーズでは、山王連合会を束ねる総長・コブラを演じた。身体性と統率力で仲間を引っ張る、寡黙なアクションの中心である。その真っただ中の2016年に公開された映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』では、野草と料理に詳しく、ヒロインと同居する穏やかな青年・日下部樹を演じている。硬質な役と柔らかな役が、順番にではなく、ほぼ同じ時期に並んでいたのだ。

端正な王子様のような印象は、役柄や媒体の形容として岩田についてまわった。しかし、イメージが先にあって役が続いたのではなく、幅のある役歴の一部が、王子様のような印象として強く切り取られてきた。ここを読み違えると、この俳優の歩みは見えなくなる。

誠実な判事役と法廷で殺害を認める役が同じ年に放送された

幅が一方向の変化ではないことを、2024年の2作がはっきり示している。連続テレビ小説『虎に翼』で演じた花岡悟は、法曹を志して判事となり、戦時下に栄養失調で命を落とす誠実な人物だった。同じ年、TBS系『アンチヒーロー』で演じた緋山啓太は、社長殺害の容疑で起訴されて無罪となり、最終回の法廷で、殺害時に着ていた服だと自ら認める男である。

法を担う側と、法廷に立つ側。この両極を同じ年に任された事実が重い。しかも緋山は、目の光や口調、佇まいまで計算され、有罪とも無罪とも表情だけでは断定させない設計で演じられた役だった。誠実な人物と疑念を残す人物を、同じ年に演じ分けた。それがこの年の岩田だった。

温かい印象との落差がダークヒーロー役を呼んだ

役の幅は、本人の内側だけの話ではない。制作側の起用理由としても機能し始めている。2025年の読売テレビのドラマ『DOCTOR PRICE』で岩田が演じた鳴木金成は、医師に値段をつけ、グレーな手法で病院を動かしながら父の死の真相を追う男だ。

これを演じられるのは、岩田が普段まとう温かさと優しさの印象と、『アンチヒーロー』で殺人犯を演じた直後の顔との落差があるからこそだ。複数の顔を見せられるダークヒーロー。鳴木は、口も態度も悪く人使いも荒いが、目的のためなら使えるものは何でも使う男だ。端正な印象は否定すべき過去ではなく、次の配役の材料になっている。ここに、キャリアが積み上がっている俳優の強さがある。

いちばんカッコ悪い男で格好よさの外側へ出た

そして幅は、ダークさとも別の方向へ伸びた。2025年の映画『金髪』で演じた市川は、SNS炎上に巻き込まれる中学校教師である。犯罪者ではない。見栄と自己保身を抱え、大人になり切れないまま自己正当化を重ねる、社会風刺作の中心人物だ。

市川は、岩田がこれまで演じてきた中で最も格好悪さに振り切った男であり、役作りはなるべく演技をしない方向で、日常の生々しさに寄せて組み立てられた。攻めた役はそれ以前から積み重ねられてきており、突然の変化ではない。端正か犯罪的か、という二極で語られがちだった役歴に、痛々しさと滑稽さという第三の軸が加わった。格好よさの外側へも役幅を広げた一本といえる。

宰相役と初ミュージカルへ広がる次章

現在地から先を見ると、幅はさらに別々の方向へ同時に伸びようとしている。2026年は日米共同プロジェクトで話題となっている小栗旬主演の映画『バッド・ルーテナント:トウキョウ』に出演。来年2027年はNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』で、老中首座となる若き宰相・阿部正弘を演じる。

また2027年にはミュージカル『SPAMALOT』でアーサー王役で主演し、ミュージカルに初挑戦する。歌と踊りを本業の一つとしてきた男が、舞台の物語の中でそれを役として引き受ける新領域である。

映画、歴史劇、ミュージカル。三つの異なる場所からさらに幅を拡げていく岩田。今後も異なる領域での挑戦が控えている。


※記事は執筆時点の情報です

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