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世帯年収1,800万の30代夫婦→「余裕で返せる」8,000万のマンションを購入するも…数年後、二人を直撃した“想定外の誤算”

  • 2026.7.22
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。

共働き世帯の増加に伴って、「パワーカップル」に該当する方も多いかと思います。

しかし、住宅購入の場面で「世帯年収が高いから大丈夫」という言葉ほど、危ういものはありません。今回は、会社員のAさん夫婦(夫:36歳、妻:35歳)の事例です。

営業マンの試算では「余裕で返せる」はずだった

Aさん夫婦は3年前、ともに32歳・世帯年収1,800万円(夫1,000万円・妻800万円)のときに、8,000万円のペアローンで都内のマンションを購入しました。ペアローンとは、夫婦それぞれが債務者となってローンを組む方法で、単独よりも多く借りられるのが特徴です。

不動産営業の試算表には「月々の返済約21万円。世帯手取りの2割程度」の文字。「銀行の審査も通ったし、プロが大丈夫と言うなら大丈夫だと思っていました」とAさん。

ここに落とし穴があります。銀行の審査は「貸せるか」の審査であって、「あなたの人生設計で無理なく返せるか」の審査ではないのです。所有権(名義)は自分にあっても、完済するまでは銀行の抵当権が設定され、実質的に担保に入っている状態である点も見逃せません。

試算に入っていなかった3つのこと

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

数年後、第一子の出産でAさんが産休・育休に入り、世帯年収は一時1,200万円台に。しかしペアローンは、妻の返済分も待ってはくれません。さらに変動金利の上昇で返済額は月23万円超へ。保育料や将来の教育費も重くのしかかります。「私の収入が減っても返済額は同じ。試算表のどこにも、産休のことなんて書いてありませんでした」。

営業マンの試算は嘘ではありません。ただ、①収入減(産休・育休・転職・離職)②教育費の増加③金利上昇という「起こりうる未来」を一切織り込まない、最も楽観的なシナリオだったのです。

売る側の試算が楽観的になるのは、悪意ではなく構造です。彼らの仕事は家を売ることであって、あなたの30年後の家計を守ることではありません。多くの場合、悲観的なシミュレーションも依頼すれば作ってくれます。ただ、営業側には「悲観的すぎる数字を見せれば家は売れなくなる」という事情がある以上、出てきた試算をすべて信じるのは危険なのです。

住宅ローンの契約前には自分でも試算すべき

ではどうすればよかったか。答えはシンプルで、試算表は自分でもう一度つくり直すことでした。

難しい作業ではありません。エクセルでも住宅金融支援機構のシミュレーターでも、「妻の収入が3年間半分になったら」「金利が2%上がったら」と数字を入れ替えるだけです。営業マンの試算表が「起こってほしい未来」で作成されているなら、自分の試算表は「起こりうる未来」で作成しましょう。この一手間を惜しんだことが、Aさん夫婦にとって最大の分岐点でした。

自分で作るのが難しければ、住宅を売らない立場の第三者にセカンドオピニオンを求める手もあります。筆者に相談いただいた時も、内心「もっと早く相談してくれればよかったのに」と思いました。

数万円の相談料で8,000万円の借入に関する判断を検証できるなら、費用対効果はむしろ良いほうです。医療で重い診断を受けたときにセカンドオピニオンを取るのと、発想は同じです。売り手と買い手の利害が一致しない場面では、利害関係のない第三者の目を一度通すことをおすすめします。

「借りられる額」と「返せる額」は別物

ちなみに、住宅ローンの借入にあたって筆者が目安としておすすめしているのは、この3点です。

①返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)は「額面」ではなく手取りの20%以内

②片方の収入だけでも最低限返済を維持できる水準か

③金利が2%上がっても耐えられるか

収支バランスが悪化すると、8,000万円のローンは過酷な重荷に変わります。「借りられる上限=買っていい額」ではないのです。しかも今は「金利のある時代」へと回復が始まっており、かつてのマイナス金利時代に戻るとは考えにくい状況です。超低金利を前提にした返済計画はもう成り立ちません。「返せる範囲で借りる」を大原則に、住宅ローンのプランを組み立てる必要があります。

幸い、Aさん夫婦はパワーカップルなので、生活が破綻するリスクはそこまで高くありません。しかし、負担は確実に重くなっており、固定費の削減と貯蓄の立て直しを通じて今後の金利上昇に備えようとしています。

まとめ

高年収世帯ほど「自分たちは大丈夫」と考えがちですが、収入が大きい分だけ借入額も膨らみ、収入減のダメージはむしろ深刻です。ペアローンを組むなら、産休・育休・転職を「例外」ではなく「予定」として試算に入れることです。

また、不動産会社の営業マンが作成した試算表は参考資料にすぎません。自分の買い物には、自分で責任を持つ必要があります。将来の返済シミュレーションは自分で作成し、無理のない資金計画を立てましょう。


執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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