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星野佳路さんが語る「星のや奈良監獄」|すでに存在していた監獄という非日常

  • 2026.6.8
写真=星野リゾート

かつて刑務所として使われていた明治期の建物が日本で7番目の「星のや」に生まれ変わりました。その名も「星のや奈良監獄」。国の重要文化財でもある煉瓦造りの壮大な建物に流れる時間と空間は、まさに非日常そのもの。開業前の「星のや奈良監獄」を、いち早くご紹介します。

今回は、星野リゾート代表取締役社長の星野佳路さんにホテルのプロジェクトを創始した経緯についてお聞きしました。

すでに存在していた監獄という非日常

「旧奈良監獄」を活用したラグジュアリーホテルの開業と運営。そんなプロジェクトがスタートしたのは7年ほど前だった。始めるにあたり、私には迷いはなかった。むしろ、塀に囲まれた空間こそ、「星のや」にふさわしいと思った。

なぜなら、そこにはすでに「非日常」があるから。

昨今の、とりわけリゾートホテルは、立地、サービス、食事、部屋の大きさ、プライスなどがすべて均一化している。この均一化からいかに脱するか、というのが多くの施設が抱えている課題だ。「旧奈良監獄」の場合は、前提として均一化からかけ離れ、リゾートホテルが新たに構築しなければならない、日常からの遮断がすでに完成しているという、極めて強いポテンシャルがあった。

案件がすでに備えている、一見すると不利なような個性という点では、「星のや京都」と少し似ているかもしれない。渡月橋から船でしかアプローチできない、山裾にへばりついたような旅館の再生。少なからぬ人が、「大丈夫ですか?」と心配したが、私はやはりその立地にこそ大きな魅力を感じ、不安はなかった。

「旧奈良監獄」の場合は、かつて監獄だったという特異な空間に加え、明治時代に建てられた、重要文化財という圧倒的な建築が、やはり非日常を演出してくれる。もちろん、「星のや京都」がそうだったように、「星のや奈良監獄」の場合も、建築が備えている個性をうまく仕立て、顧客のニーズに合わせて活用していくには、工夫や努力が必要となる。

同敷地内に、「奈良監獄ミュージアム」という、星野リゾートとしては初めてのミュージアムを開発・運営しているのも大きな特徴だ。今回のプロジェクトを通じ、私自身も現代の刑務所の事情を少し知り得たが、受刑者と自分の日常生活を比べて、私の生活は本当に自由なのだろうかを考えさせられた。

ホテルで非日常を味わい、ミュージアムで自由を考えることで、訪れた方々すべてが自身の日常を振り返る。「旧奈良監獄」を活用した2つの施設を、そんな時間と空間を提供できるように成長させていきたい。

ほしのよしはる〇1960年、長野県軽井沢町生まれ。米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。91年、長野県軽井沢町で1軒の温泉旅館を事業継承、その後ホテル運営事業に進出し、現在では国内外で77施設を展開。趣味のスキーは年間80日滑走している。

撮影=高嶋克郎 取材・文=櫻井正朗 編集=石黒三惠(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年7月号より

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