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鳥もマスターベーションをすることが判明

  • 2026.6.4
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

鳥たちも「おひとり」で解消することはあるようです。

ペットのオウムやインコが止まり木やおもちゃに体をこすりつける様子を見て、飼い主が「これはストレスなのでは」と心配することがあります。

しかし最新の研究は、その見方を少し変える必要があることを示しました。

イギリスのランカシャー大学(UL)らの研究チームは、鳥類におけるマスターベーション、つまり性的な自己刺激行動について大規模なデータを収集し分析。

その結果、鳥の自慰行動は一部の飼育鳥にだけ見られる奇妙な癖ではなく、野生の鳥にも広く見られる自然な性行動の一部である可能性が高いとわかりました。

研究は2026年5月31日付で学術誌『Ecology and Evolution』に掲載されています。

 

目次

  • 鳥の自慰行動は「飼育ストレス」だけでは説明できない
  • なぜ進化は「ひとりの性行動」を残したのか

鳥の自慰行動は「飼育ストレス」だけでは説明できない

これまで、鳥の自慰行動は主に飼育下で問題視されてきました。

特にオウムやインコのようなペットの鳥では、止まり木、おもちゃ、人間の手や肩などに体をこすりつける行動が見られることがよくあります。

鳥類では、排泄と生殖に関わる開口部である「総排泄腔」を物体にこすりつける形で起きることが多く、羽ばたきや独特の鳴き声を伴う場合もあります。

こうした様子は飼い主にとってかなり目立つため、長い間「退屈」「孤独」「ストレス」「飼育環境の不適切さ」のサインと見なされることがありました。

そのため、獣医療や飼育現場では、刺激になりそうなおもちゃや止まり木を取り除いたり、食事を調整したり、場合によってはホルモン治療を検討したりすることもあったようです。

しかし今回の研究は、その前提に疑問を投げかけました。

研究チームは、科学文献だけでなく、鳥の飼育者、繁殖者、オンラインコミュニティからの情報も集め、主要な鳥類22グループに属する120種のデータを整理しました。

その中には、野生の鳥と飼育下の鳥の両方が含まれています。

分析の結果、自慰行動は鳥類の広い範囲で確認されました。

オスの記録では55%に自慰行動が含まれており、メスでも36%に見られました。

つまり、オスに多い傾向はあるものの、メスにも決して珍しくない行動だったのです。

さらに重要なのは、野生の鳥の方が飼育下の鳥よりも自慰行動を示しやすかった点です。

もし自慰が単に「狭いケージに閉じ込められたことによる異常行動」なら、飼育下の鳥で多くなるはずです。

しかし実際には、その逆の傾向が見られました。

また、親鳥に育てられた個体の方が、人に育てられた個体よりも自慰行動が多い傾向も示されています。

これらの結果は、鳥の自慰行動が人間による飼育環境だけで生じるものではなく、鳥本来の行動レパートリーに含まれる可能性を示しています。

もちろん、すべての自慰行動が常に問題ないという意味ではありません。

頻度が極端に高い場合や、けが、脱出、脱肛のような健康上の問題を伴う場合には、専門家への相談が必要です。

しかし少なくとも、見つけた瞬間に「異常だ」と決めつけ、罰したり無理にやめさせたりする必要はなさそうです。

なぜ進化は「ひとりの性行動」を残したのか

マスターベーションは、少し不思議な行動です。

進化の観点から考えると、生き物の性行動は基本的に繁殖と関係しています。

ところが自慰行動は、それだけでは直接子孫を残しません。

時間やエネルギーを使い、オスなら精子を消費する可能性もあります。

それなら自然選択によって消えてもよさそうに見えます。

しかし実際には、鳥だけでなく、霊長類、イルカ、ゾウ、セイウチなど、さまざまな動物で自己刺激行動が知られています。

つまり、動物界では「繁殖に直結しない性行動」が思った以上に広く存在しているのです。

今回の研究では、鳥の自慰行動が繁殖システムとも関係している可能性が示されました。

社会的に一夫一妻で、長期的なつがい関係を作る鳥では、自慰行動は比較的少ない傾向がありました。

一方で、複数の相手と交尾する繁殖システムを持つ種では、自慰行動が多く見られました。

この結果から考えられる一つの説明は、性欲の高さです。

複数の相手と交尾する種では、もともと性的な動機づけが強く、その副産物として自慰行動も現れやすいのかもしれません。

つまり、自慰そのものが特別な目的を持っているというより、強い性行動システムの延長として現れている可能性があります。

ただし、研究者たちはそれだけでなく、適応的な意味を持つ可能性にも触れています。

例えばメスの場合、自慰行為により前もって性的な興奮を高めておくことで、交尾を短時間で終えやすくなる可能性があります。

野生の鳥では、社会的なつがい相手とは別のオスと交尾する「つがい外交尾」が起きることがあります。

そのような状況では、交尾をすばやく済ませることが有利になる場合があるかもしれません。

またオスについても、古い精子を排出し、新しい精子を使いやすくする可能性が議論されています。

ただし、ここで注意したいのは、これらはまだ仮説であり、今回の研究だけで「自慰は繁殖成功を高める」と断定できるわけではないという点です。

今回明らかになったのは、鳥の自慰行動が広く見られ、野生個体にも多く、繁殖システムと関係しているらしいということです。

その進化的な機能を確かめるには、今後さらに詳しい観察や実験が必要です。

それでも、この研究の意味は大きいと言えます。

これまで鳥の自慰行動は、人間側の価値観や飼育上の不安から「やめさせるべき問題」と見なされがちでした。

しかし実際には、それは鳥の自然な性行動の一部かもしれません。

人間から見ると少し気まずい行動でも、鳥にとってはごく自然な営みである可能性があります。

今回の研究は、動物の行動を人間の感覚だけで判断する危うさを教えてくれます。

鳥たちは空を飛ぶだけでなく、私たちが思う以上に豊かな「私生活」も持っているのかもしれません。

参考文献

It Turns Out Birds Masturbate Too, And Evolution May Explain Why
https://www.sciencealert.com/it-turns-out-birds-masturbate-too-and-evolution-may-explain-why

元論文

The Evolution of Masturbation in Birds
https://doi.org/10.1002/ece3.73693

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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