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オリヴィア・ロドリゴが新作MVで披露したフリーダ・カーロを思わせるヴィジュアル

  • 2026.5.26
Photo: Olivia Rodrigo / YouTube

オリヴィア・ロドリゴは、ニューアルバム『you seem pretty sad for a girl so in love』に先駆け、新曲「the cure」をリリース。公開されたMVでは、ロドリゴが“灰色にしぼんでいく心臓”の治療法を開発する看護師役を演じる。だが、まるでボディホラー映画のような展開のなかで、彼女自身の体も少しずつ崩れ始め、指先や体から赤い糸のようなものがうねるように噴き出していく。映像には、ウェス・アンダーソンのストップモーション作品や、ミシェル・ゴンドリーのハンドメイド感あふれるセットを思わせる2000年代初頭的なナイーブな美学がちりばめられているが、クライマックスでもっとも強く参照されているのは、間違いなくシュルレアリスムの系譜だ。

ロドリゴが病院のベッドに横たわると、その体から伸びる糸は血のように赤い線へと変化し、その先は彼女の心臓から、周囲の箱に収められた6つの心臓へとつながっていく(それぞれ赤いリボンで結ばれている)。このシーンが瞬時に思わせるのが、フリーダ・カーロの代表作《Henry Ford Hospital(ヘンリー・フォード病院)》(1932)。病院のベッドに横たわる自身を描いたこの自画像では、裸体のカーロの身体から6本の赤い血管のような線が伸び、さまざまな対象へとつながっている。

オリヴィア・ロドリゴの約5分間の新曲「the cure」は、引きつけるメロディとともに、“孤独への解毒剤”を見つけたと思ったものの、再び失望へとたどり着く失恋の感情を描き出している(そう、恋人と噂されるルイス・パートリッジの姿がちらつく)。

彼女は〈頭の中は毒でいっぱい/心は疑いで満ちている/血流には毒素が流れていて/あなたは必死にそれを吸い出そうとした〉と歌い、さらに〈それはまるで薬のようで/きっと自分には必要なものだった/でも、もうあなたの愛がどんなものでも関係ない/それが“治療法”になることは決してない〉と続ける。こうした歌詞に呼応するようにMVでは、ロドリゴ自身が、失恋の“治療薬”を探し求める看護師として登場する。

その強烈な喪失感こそ、《Henry Ford Hospital》を彷彿とさせる理由だ。フリーダ・カーロが描いたこの絵画には、血に染まったベッドに横たわる女性(カーロ自身)が描かれている。腹部から伸びる赤いリボン状の線は、胎児、カタツムリ、蘭の花、金属製の医療器具、骨盤、女性の生殖器を示した解剖模型という6つの対象へとつながっている。

この作品には、バス事故によって骨盤を損傷し、妊娠や出産に困難を抱えたカーロの深い喪失感と絶望が投影されている。血管のように赤く伸びる線は、傷つき、あるいは決して手の届かないものになってしまった自身の体や可能性と、なお結びつこうとする試みを象徴している。

カーロはその後、《The Two Fridas(二人のフリーダ)》(1939)でも、血管のモチーフを再び用いている。ヴィクトリア朝風のドレスをまとった姿と、メキシコの民族衣装「テワナ」を身につけた姿──二人の自画像が鏡合わせのように並ぶこの作品には、ドイツ系の父とメキシコ先住民系の母を持つカーロの、揺らぐ自己像が重ねられている。なかでもヴィクトリア朝風の姿には傷んだ心臓が描かれ、二つの心臓は細い血管のような線によって結びつけられている。そこには、事故による肉体的な苦痛だけでなく、引き裂かれたアイデンティティに由来する深い痛みも重ね合わされている。

『you seem pretty sad for a girl so in love』から発表された失恋ソングは、「the cure」で2曲目。この楽曲が別れの メランコリックな余韻に傾いている一方で、先行シングル「drop dead」では、オリヴィア・ロドリゴは元恋人へのいら立ちをより攻撃的にぶつけていた。ベビードールドレス姿でヴェルサイユ宮殿を駆け回りながら、「あなたがそのビールを飲み干せませんように」と歌う姿は印象的だった。

写真家・映像監督のペトラ・コリンズが監督を務めたそのMVもまた、数々の引用に満ちていた。とくに強く感じられるのは、ソフィア・コッポラの映画『マリー・アントワネット』(2006)や、イギリスのバンド The Cureからの影響だろう。MV内で彼女はThe Cureの楽曲「Just Like Heaven」の歌詞をすべて知っている、と歌っているが、それは次のシングル「the cure」の伏線だったのかもしれない。

最近、ポップスターたちは、女性のシュルレアリストたちに新たなインスピレーション源を見いだしているようだ。たとえばマドンナは、レオノーラ・キャリントンの《The Temptation of Saint Anthony》(1945)に登場するドレスを思わせる装いでメットガラに姿を現した。次はどのシュルレアリストがポップカルチャーに現れるのか、引き続き注目したい。

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