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新リーダーの”成功”を左右するのは「空気読み」だった

  • 2026.5.14
新リーダーに必要なのは空気読みだった / Credit:Canva

新しい上司がやってくると、職場の空気は少し変わります。

「かなり改革派らしい」「前のやり方を変えるかも」「現場に細かく入ってくるタイプだって」

そんな噂が流れ始めると、多くの人は普段以上に“新しいリーダー”を観察し始めます。

実際、アメリカのペンシルベニア大学(Penn)などの研究チームは、新任リーダーは既存リーダーよりも組織を大きく変える力を持つことを明らかにしました。

ただし、その力は「必ず良い方向に働く」わけではなく、大切なのは「空気読み」だったのです。

研究は2026年3月5日付で『Journal of Applied Psychology』に掲載されました。

目次

  • 新リーダーはなぜ「劇薬」になるのか?
  • 「改革」は歓迎される時と嫌われる時がある!「空気」を読むべき

新リーダーはなぜ「劇薬」になるのか?

今回の研究テーマは、「新しいリーダーは本当に組織を変えられるのか?」というものです。

経営論や自己啓発では、「優秀なリーダーが組織を変える」という話がよく語られます。

しかし実際には、同じ“改革型リーダー”でも、歓迎される場合と嫌われる場合があります。

ある職場では救世主のように扱われる一方、別の職場では「余計なことをする人」と反発されるのです。

研究チームは、この違いがどこから生まれるのかを調べるため、アメリカの小学校113校を対象に長期追跡調査を行いました。

対象期間は2014年から2017年までです。

対象となった113校のうち、60校では校長が交代し、53校では同じ校長が続投しました。

研究者たちは、過去の学力テスト成績、低所得層の生徒割合、人種・民族構成などが近い学校同士を、同じ地区内で比較対象として組み合わせました。

そして教師たちに対して、校長は魅力的なビジョンを語っているか、現場指導や助言を積極的に行っているか、学校には変化が必要だと思うか、教師たちは仕事に熱意を持てているかなどを複数回アンケートしました。

さらに研究チームは、単なる「気分」だけではなく、学校の成績にも注目しました。

研究では、3年生から5年生を対象に行われる州標準の数学・読解テストの合格率を用いて、学校全体のパフォーマンス変化を追跡しました。

すると、非常に興味深い結果が見えてきました。

新しい校長の積極的なコーチングは、教師たちが「この学校は改善が必要だ」と感じていた場合には、学校全体の熱意を高め、その後の学力テスト成績の改善とも結びついていました。

しかし逆に、「今のままで十分うまくいっている」と感じていた学校では、同じような積極介入が反発を招き、組織全体の熱意を下げてしまったのです。

つまり、新リーダーの成功を左右していたのは、「どれだけ優秀か」だけではなく、“組織が変化を求めていたか”だったわけです。

より詳細な結果を次項で見ていきましょう。

「改革」は歓迎される時と嫌われる時がある!「空気」を読むべき

研究チームは、この現象を「不確実性」と「空気」の問題として説明しています。

今回の研究で対象となった学校では、新しい校長が来ることで、教師たちは強い不確実性を感じやすくなります。

「この人はどんな方針なのか」「仕事のやり方は変わるのか」「評価基準は厳しくなるのか」

そんな不安や期待が入り混じるため、人々は新リーダーの行動をいつも以上に細かく観察するようになります。

研究者によれば、既存リーダーはすでに「見慣れた存在」です。

周囲の人たちは、「この人はこういうタイプだ」と理解しているため、以前より注意深く観察しません。

しかし新リーダーは違います。

まだ“正体不明”だからこそ、職場全体の注目が集中するのです。

そのため、新リーダーの影響力は良くも悪くも増幅されやすいと考えられています。

特に面白いのは、将来像を語る「ビジョン提示」では予測された効果が確認されず、「現場で具体的にコーチングすること」の方で明確な影響が見られた点です。

研究では、校長によるコーチングとして、授業改善の助言、生徒データの確認、教え方へのフィードバック、教師への具体的サポートなどが測定されました。

そして、この“現場介入”が、学校の空気に強く作用していたのです。

学校に問題意識がある場合、教師たちは「この人は本気で学校を立て直そうとしている」と受け取りました。

すると教師全体の熱意が上がり、最終的に学力テストの成績改善にもつながりました。

一方、現状に満足している学校では、同じ行動が「余計な介入」「現場を信用していない」と受け止められてしまいました。

つまり、リーダーの行動は単独で評価できるものではなく、受け手である組織側の危機感や期待と噛み合ったときに、初めて力を発揮するのです。

これは学校だけでなく、上司が交代する会社やチームでも起こりうる現象です。

停滞感のある組織では、強い改革者が歓迎されます。

しかし順調な組織では、同じ行動が「不要な介入」と受け取られてしまうのです。

今回の研究は、リーダーシップとは単なる能力の問題ではなく、「組織の空気との相性」でもあることを示したのかもしれません。

参考文献

To create change, new leaders should read the room
https://phys.org/news/2026-05-leaders-room.html

元論文

For Good and for Bad: The Distinctive Effects of Successors’ Leadership Behavior on Collective Engagement and Organizational Performance
https://doi.org/10.1037/apl0001359

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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