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有害なリーダーと元気を与えるリーダーの違いとは

  • 2026.4.29
部下を疲れさせるリーダーと元気にさせるリーダーの違いは? / Credit:Canva

「あの人がいると、なぜか空気が重くなる」

職場でそんな経験をしたことはないでしょうか。

逆に、少し話しただけで気持ちが軽くなる上司もいます。

同じ「上司」という立場でも、なぜここまで違いが生まれるのでしょうか。

実はこの違いは単なる気分の問題ではなく、リーダーが周囲に与える“心理的なエネルギー”として捉えられることが、アメリカのクレアモント大学院大学(CGU)による研究で示されています。

リーダーは単に仕事を指示する存在ではなく、部下の感情ややる気、さらには健康状態にまで関わる「心理的な環境」を作り出している可能性があるのです。

この研究は2026年4月13日付の『International Journal of Applied Positive Psychology』に掲載されました。

目次

  • 有害なリーダーは、なぜ人を消耗させるのか
  • 人に活力を与えるリーダーは何が違うのか

有害なリーダーは、なぜ人を消耗させるのか

今回の研究の中心にあるのは、「職場で人を元気づけるリーダーとは何か」を科学的に測る試みです。

研究チームは、リーダーの行動を、部下を消耗させるものから、部下に活力を与えるものまでの幅で捉えました。

その中で、有害なリーダーの存在は、活力を与えるリーダーと対照的なものとして扱われています。

有害なリーダーとは、必ずしも怒鳴り散らすような極端な上司だけを指すわけではありません。

たとえば、部下の話をよく遮る、貢献を見過ごす、成長の機会を狭める、周囲に不安や緊張を生むといった行動も、人をじわじわと消耗させます。

こうした行動は、一つひとつを見ると「少し嫌な上司」程度に見えるかもしれません。

しかし、毎日くり返されると、職場そのものが安心して力を出せる場所ではなくなっていきます。

研究では、273人の従業員を対象に、上司の行動と部下のウェルビーイングとの関係が調べられました。

ウェルビーイングとは、単なる気分の良し悪しではなく、感情、仕事への没入、人間関係、仕事の意味、達成感、前向きな考え方、身体的な健康感などを含む、より広い「心身の充実度」のことです。

その結果、有害なリーダーのもとで働く人ほど、こうしたウェルビーイングの複数の側面が低くなる傾向が見られました。

特に、前向きに考える余裕や身体的な健康感との関係は大きいものでした。

つまり、有害なリーダーの問題は、単に「職場の雰囲気が悪い」という話にとどまりません。

人は、安心して働けない環境にいると、仕事の楽しさや意味を感じにくくなります。

本来なら成長や達成を感じられるはずの仕事が、いつの間にか「ただ耐えるもの」に変わってしまうのです。

こうした広がりは、「感情の伝染」という考え方でも理解できます。

これは、不安や緊張、安心感といった感情が、日々のやり取りを通じて周囲に広がっていく現象です。

不機嫌な上司がいるとチーム全体がピリピリします。

リーダーの態度は、本人が思っている以上に周囲へ伝わり、職場全体の心理的な余力を左右しているのです。

では逆に、周囲を元気づけるリーダーは何が違うのでしょうか。

人に活力を与えるリーダーは何が違うのか

この研究では、こうしたリーダーのあり方を「Positively Energizing Leadership」、つまり「活力を与えるリーダーシップ」として整理しています。

その特徴は大きく2つあります。

1つ目は、「関係性エネルギー」です。

これは簡単に言えば、「その人と関わると、仕事に向かう力が少し増える」というような心理的な活力のことです。

たとえば、上司が部下に「週末どうだった?」と声をかけ、その答えをきちんと聞き、次の週にも覚えている。

こうした短いやり取りでも、人は「自分は見てもらえている」と感じます。

一方で、どれだけ多くのメールを送っても、相手の存在をきちんと受け止める関わりがなければ、人を元気づけることは難しいでしょう。

活力を与えるリーダーに必要なのは、長時間の面談や派手な演説ではなく、日々の小さな関わりの質なのです。

2つ目は、「人として信頼される行動」です。

研究ではこれを「徳のある行動」と捉えており、感謝、誠実さ、思いやり、信頼できる態度などが含まれます。

具体的には、部下の貢献を見逃さずに感謝を伝える、ミスを責めるだけで終わらせず学びにつなげる、相手の話を途中で遮らずに聞く、約束を守る、相手を尊重する、といった行動です。

これらは一見すると、当たり前のことに思えるかもしれません。

しかし職場では、その「当たり前」が部下の心理的な支えになります。

人は、自分が価値ある存在として扱われていると感じると、仕事に向かう力を取り戻しやすくなるのです。

では、活力を与えるリーダーになるためには何をすればよいのでしょうか。

重要なのは、大げさなカリスマ性を身につけることではありません。

まず、相手が「自分はここで価値ある存在だ」と感じられる関わりを意識することです。

部下の成果を言葉にして認める、困っているときに支援する、仕事の意味を共有する。

こうした行動が、相手の心理的な余力を少しずつ増やしていきます。

また、リーダー自身が自分の心身の状態を整えることも大切です。

余裕のない状態では、知らないうちに周囲へ不安や苛立ちを広げてしまうことがあります。

さらに、自分の関わり方が部下にどう受け止められているのか、率直なフィードバックを求めることも有効です。

では、自分が有害なリーダーのもとで働いているならどうすべきでしょうか。

おそらく、すぐに環境を変えられないケースも多いでしょう。

その場合は、信頼できる同僚や別チームの人など、心を回復できる関係を持つことが助けになります。

必要に応じて、メンターや人事などの信頼できる相手に相談することも重要です。

この研究は、有害なリーダーと元気を与えるリーダーの違いは、日々の関わりで相手の心を消耗させるか、もう一歩進む力を与えるかにあることを教えてくれました。

参考文献

The cost of toxic leadership in the workplace – and how to avoid it
https://theconversation.com/the-cost-of-toxic-leadership-in-the-workplace-and-how-to-avoid-it-280761

元論文

The Positively Energizing Leadership Scale (PELS): Development and Validation
https://doi.org/10.1007/s41042-026-00283-z

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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