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深夜1時の作業員と黒い袋――出張先のホテルでつながった“ビニール袋”にまつわる恐怖の記憶とAさんからの不可解な電話

  • 2026.5.4
写真はイメージです。提供:アフロ

放送終了後にファンが内容をリライトしてnoteなどに投稿することでも人気な、生配信サービス「TwitCasting」の怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。同番組で語られる実話怪談の数々は、有名ホラー小説家たちもがリライトに参加してしまうほどに高品質なものばかりです。

今回はそんな禍話から“ビニール袋”に言い知れぬ恐怖を覚えるという先輩と出張に出かけた、ある会社員の身に起きた奇妙な出来事をご紹介します――。


先輩は小学校時代の最寄り駅での思い出を嬉々として語り…

「それは……なんとも不気味な思い出ですね……」

「でしょ」

好奇心に突き動かされて話を聞いたのはいいものの、そのあまりに奇妙な体験談にEさんの気分はどんよりと落ち込んでいました。

一方のAさんは妙にスッキリした表情で酒の缶を空けていたそうです。

「でね、当時地元の●●駅のホームで俺たちさ」

あんな話をした後だというのに、その後小学校時代の最寄り駅で起きたというあどけないエピソードまで嬉々として語るAさん。

写真はイメージです。提供:アフロ

そうこうしてお酒を全部空け終わったところで打ち上げはお開きとなり、Eさんは先輩に別れを告げて部屋を出ると、廊下を少し歩いた先にある自室に戻りました。

ベッドに倒れ込むと浮かんできたのは、Aさんの妙に明るい笑顔。

幼少期のトラウマに対処するために無理して笑っていたのかもな……――Eさんの心には自らの軽率な好奇心への反省が徐々に湧き上がっていました。

ため息をついて横を向いたとき、机の上に置いていた空き缶をまとめたレジ袋に目線が吸い込まれたそうです。

「……あんなもんがトラウマだなんて、キツイだろうなぁ」

空き缶を眺めている内にふと気がついた喉の渇き。

ホテルに備え付けの水でもよかったのですが、Eさんは喉をスッキリさせる炭酸水が無性に飲みたくなりました。

「……ロビーに自販機があったか」

Eさんは気だるさを振り払うように体を起こすと、財布とスマホ、そして部屋のキーを掴んで廊下に出ました。

廊下で“聞こえた気がした”ビニール袋の音

写真はイメージです。写真:n.s.d/イメージマート

敷き詰められたカーペットに音が吸い込まれているのか、はたまた人がほとんど泊まっていないのか。深夜のビジネスホテルの廊下は異様なほどに静まり返っていたそうです。

エレベーターホールに向かう途中、開け放たれていたある部屋の奥で2人の作業員が天井の電球か何かを取り替えようと、脚立に登って作業しているのが目の端に映り、ドキリとしたEさん。

「ふっ……」

「まったく……」

この静けさの中で音もなく作業をしている人がいたとは……――エレベーターで1階ロビーに降りている最中、EさんはA先輩の昔話に当てられている自分を笑いました。

人気のないロビーの端にあった自販機には予想通り炭酸水がありました。

ホテル価格なのか、妙に値段の張る炭酸水に内心毒づきながら小銭を投入していると、さっきの廊下の光景が不意に脳裏に浮かびます。

壁掛けの時計に目をやると、時間は深夜の1時過ぎ。

こんな時間に電球の取り替え作業なんてやるだろうか……――ロビーのソファに腰掛けて、炭酸水を一口ゴクリとやりながら振り返るEさん。

視線に数秒写り込んだ2人の作業員。その瞬間“クシャクシャ”というビニール袋の音が記憶の中で鳴った気がしたそうです。

「はぁー……」

気分転換にきたのに余計にモヤモヤしてしまったEさんは、深いため息をつくとペットボトルを片手に持ったまま、足早にロビーを後にしました。

ポーン。

自室のあるフロアのエレベータードアが開くと、しんとした静寂、そして無限に奥に続いているかのような廊下の景色が目の前に広がりました。

トスッ、トスッ、トスッ、トスッ。

うつむき気味に歩く廊下。

あの部屋をもう一度見るつもりはありませんでした。

けれど、真横を通ったときにどうしても心が磁石のように吸い寄せられ、視線をパッとそちらに向けてしまったのです。

その部屋でEさんが“見てしまったもの”

まだベッドの前に立っていた2人の従業員。

彼らの手には黒く大きなビニール袋が握られており、そこに何かを黙々と詰め込んでいるのが見えました。

そういえば、Aさんの話のビニール袋が何色だか聞いていなかったな――突然、脳裏によぎるそんな想い。

ブブッ。

部屋を通り過ぎ自室の前まで来たとき、ポケットのスマホにメッセージが届きました。

『じゃあ、そういうことだから。よろしくね』

差出人はAさんでした。

意味不明なその言葉を見たとき、Eさんの背筋に“自分は今、何かが取り返しがつかないことになる瀬戸際にいるのではないか”という直感が駆け上りました。

ここにいてはいけない。そんな思いに駆られた彼は全力疾走で階段に走り出し、上着も着ないままホテルの外に飛び出したそうです。

幸い、ホテルの近くの繁華街にはまだ明かりが灯っており、Eさんは24時間営業のファミレスに飛び込むと、そこで時間をつぶしました。

直感に従ってホテルを飛び出したのはいいものの、一体自分は何をこんなに怯えているのだろう。コーヒーカップを腕で押しのけながらテーブルに突っ伏したEさんは、先ほどの自分の異常な直感と行動に言葉にならない気持ち悪さを感じたそうです。

写真はイメージです。提供:アフロ

左手に掴んだスマホを見ようと顔を横に向けると、時間は午前3時ごろになっていました。

ブーッブーッ。ブーッブーッ。

スマホに着信がありました。慌てて体を起こして見直すと相手はAさんでした。

急激に早くなる鼓動と首筋を伝う汗。一瞬出るのを戸惑ったEさんでしたが、見て見ぬ振りもできず、恐る恐るスマホを耳に当てたのです。

「先輩、どうしました?」

「……んー、んもがぁ……あっ、がっ……」

「先輩? 聞こえますか?」

スマホの向こうから聞こえてきたのは…

電波が悪いのか、電話越しの声は途切れ途切れで聞き取りづらかったそうです。

「……んめん! むぁじえ、ごめんむさぁい……んもぉれの……が……だったせいだからぁ」

「先輩? ちょっとよく聞こえないんですけ――」

“ガサゴソ”

スマホの向こうからビニール袋が擦れる音がしました。

「フウッ…パソッ…ウウッ…! パソッ…! ウッ……グウゥ…!」

苦しみ乱れる呼吸に合わせて、口に張り付くビニール袋の音。

今電話している相手は、本当にAさんなのだろうか。

恐ろしくなったEさんは、思わずスマホを切ってしまったそうです。

写真はイメージです。提供:アフロ

結局、Eさんはそのまま朝までファミレスで過ごし、午前7時ごろにしぶしぶホテルに戻って荷造りを済ませてフロントに行くと、「お連れ様は早くにチェックアウトされました」と受付で告げられました。

呆然としたまま着いた電車の駅。

『でね、当時地元の●●駅のホームで俺たちさ!』

行きは時間に追われてタクシーで直接取引先に行っていたため気がつきませんでしたが、出張先のホテルから一番近い最寄りの駅名は、あの夜Aさんが楽しそうに語っていた地元の駅名と同じだったそうです。

結局、大きな会社だったこともあり、Eさんが転職を決意するまでAさんと顔を合わせることはありませんでした。

Eさん曰く、2人組が黒いビニール袋を手に作業していたのは、A先輩が泊まっていた部屋だったような気がしてならないそうですが、それを確かめるつもりは毛頭ないそうです。

文=むくろ幽介

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