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“一礼しなければ殴られる”――誰もいない廃寮に伝わる奇妙なルールと謎の貼り紙がもたらす戦慄

  • 2026.5.3
写真はイメージです。写真:travelclock/イメージマート

今年で10年目を迎えた人気ホラーチャンネル「禍話(まがばなし)」。生配信サービス「TwitCasting」で2016年から始まった同番組では、これまでに語り手である北九州の書店員・かぁなっきさんが知り合い経由で集めたおぞましい実話怪談を、なんと3,000話以上発表してきました。

今回はそんな禍話から、異常な貼り紙が見つかる廃墟に足を踏み入れてしまった若者たちのお話をご紹介します――。


面白半分で心霊スポットや事件現場を訪れる若者たち

写真はイメージです。提供:アフロ

若い頃というものはどうしても誰かに強く見られたい・舐められたくないという思考と、浮き足立った好奇心が入り混じり、よくない言動を繰り返してしまいがちです。

とりわけ、こうした心理が仲間内で競争のように蔓延してしまうと、その歯止めは瞬く間に緩くなってしまうもの。

当時すでに社会人だったUさんたちのグループも、こうした心理から大方の心霊スポットはもちろんのこと、殺人事件があった現場にも面白半分で足を運んでしまうような行動を繰り返していたそうです。

地元の仲間としての連帯もあって、仕事が終わってから居酒屋に集合して学生時代のノリで騒ぐなんてこともよくありました。その日も同じように集合し、大声で軽口を叩き合って盛り上がるうちに、“度胸試し”のノリが昂ぶっていったのです。

そんな中、メンバーの1人であったAさんがこんなことを言い出しました。

「つーかさ、うちのババアってさ、あの弁当作って大量に運び入れるやつ…仕出し屋っつーのか、あれやってんだけどさ、その仕事の中でヤバイ場所の噂聞いたらしいぜ」

その場所は、Uさんたちが根城にしているエリアから少し離れた駅の近くにありました。

いつも日の当たらない薄汚れた路地をいくつか曲がった先にある、辛気臭い廃アパート。

元々はある中小企業用の女子寮として使われていた場所だったそうで、そこには“奇妙なルール”があるというのです。

手前の部屋に“一礼”しなければならない

写真はイメージです。写真:travelclock/イメージマート

「その寮、外階段使って2階に上がるとさ、1番手前の角に使われていない部屋があるらしいんだけど、その前を通る時に部屋に向かって“深く一礼”しなきゃいけないらしいんだ」

「なにそれ……しないとどうなんだよ?」

「ババアに殴られる」

「……はぁ? お前、ふざけてんだろ」

「いやいや、マジマジ! なんかな、その女はそこの寮長らしいんだけど、その会社が使う前からずっと寮長として住んでいるヤバイ奴らしくてさ、若い女でも訪ねてきた人でも誰これ構わず殴りかかるんだと」

「通報されるだろ、そんなの」

「でも、不思議とそのルールを破った時以外は人当たり良いらしくてさ、周りも『一礼のルールだけ守れば問題ないんだから』って感じに馴染んじゃうらしいんだわ」

「気色悪ぅ……」

そのアパートの奇妙な噂はまだまだありました。

あるとき、『例の角部屋から生活音がする』という住人からの声があがり始めたのです。

何度調べても人はおらず、次第に不気味がった住人は次々退去し始め、挙げ句の果てに近所の住人から『あのアパートのそばを通ると、2階の角部屋から何かを叫んでいる声が聞こえる』という噂まで立ち始めました。

「叫んでいるって、何を叫んでたんだよ?」

「予言」

「は?」

「なんつーのかなぁ、例えば『12日』って叫んだのを聞いちゃうとな、その月の12日に電車で人がはねられるのを見ちゃうらしいんだわ。あと『自転車』って叫んだのを聞いて、数日後に自転車乗っているときに事故ったとか、とにかくそういう不幸な予言めいたこと言うんだって」

“その部屋”にあった奇妙な貼り紙

写真はイメージです。写真:travelclock/イメージマート

寮長がなんらかの事情を知っているのでは? と、残った住人や近隣住民から矛先が向けられたこともあったそうですが、当の寮長は知らぬ存ぜぬの一点張り。

結局、その寮は使っていた中小企業が倒産したことも重なって、気がつけば廃墟に成り果ててしまったのだといいます。

この不気味な逸話にUさんら一同は大盛り上がり。念のため言い出しっぺのAさんが今も建物があるのかを事前に確認した後、後日そこへ肝試しに行くということなりました。

しかし、肝試し当日の夜。仕事を終えて、行きつけの居酒屋にポツポツと顔を出すころには、昨夜の熱気は鳴りを潜めていたそうです。結局のところ、こうした心霊スポットに突撃するのはその場のテンションが肝心であり、数日空けて落ち着いてしまった後に残るのは、聞かされた薄気味悪い逸話と恐怖だけなのです。

とはいえ、不良で鳴らした男たちが土壇場でそんな心境を吐露できるはずもなく、一同は口数少なにビールを煽っていました。さらに皆の不安を煽ったのは、言い出しっぺだったAさんがおずおずと語り出した、例のアパートを確認しにいったときの異様な様子でした。

そのアパートは今でも聞いた場所にあったそうなのですが、建物の周りには黒と黄色の立ち入り禁止ロープが張り巡らされており、そのロープにガムテープで黒いマジックで書き殴られた奇妙な紙まで貼られていたというのです。

【2階の角部屋には誰もいません】

静まり返る一同の脳裏には、例の寮長が今もそこにいるのではないか、という嫌な想像が浮かんだといいます。

「じゃあさ、余計行くしかねぇな」

凍った空気を打ち払うように言い放ったのは、グループで一番年上だったE先輩でした。

迷いを打ち消し、問題のアパートへ

写真はイメージです。提供:アフロ

これまで良からぬこともいくつかやってきた彼らですが、土壇場で沸き起こる“やめようかな……”という迷いをいつも打ち壊してきたのが彼でした。

E先輩に押し切られる形で車に乗り込んだ一同は、ほどなくして問題のアパート付近に到着。小道を進んだところにあるとのことで、車は少し手前に停め、徒歩で目的地を目指しました。

もともと人気はかなり少ないと聞いていましたが、訪れた時刻が深夜を回っていたこともあって、辺りは余計に静まり返っていたそうです。

「あれがそうっすね」

古びた白い板貼りの外装。

暗闇の中に佇むそのアパートで一際はっきりと浮かび上がっているのは、白い塗装がボロボロと剥がれて赤サビが顔を覗かせている外階段。

「おし、じゃあAが切り込みな。スマホで明かり照らしといて」

「え、俺っすか!?」

「あたりめぇだろ。お前が言い出したんだし」

E先輩に叱責されたAさんは、不満そうな目つきでスマホのライトを点けて外階段に近づいていきました。

到着したアパートで目にしたのは…

写真はイメージです。写真:travelclock/イメージマート

彼が昼間に確認した通り、アパートの周囲には黒と黄色の立ち入り禁止ロープが張り巡らされており、階段のそばには噂の貼り紙も数枚ガムテープでベタベタと貼り付けてあったそうです。

「お~、貼り紙ってそれだろ? マジにあるじゃ――」

余裕ぶったUさんの声を遮るように、突然Aさんが上ずった叫び声をあげました。

「うわっ! はっ!? いやいやいや、なんで……」

「なになに?」

「は、貼り紙増えてんですけど……」

【この建物は床面が劣化しているため、2階に侵入することはできません】

【あなたが何を見ようが、それは幻覚です】

話に聞いていた貼り紙のそばに、同じように黒いマジックでグシャグシャに書き殴られた別の貼り紙があったのです。

文=むくろ幽介

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