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「相続対策で」父から“年100万円”贈与され続け→『契約書もあるので安心』のはずが…3年後、40代息子を襲った“想定外の誤算”

  • 2026.5.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 IFAの石坂です。

相続や贈与の相談を受けていると、「贈与契約書があるので安心ですよね」と聞かれることがあります。

確かに書面を作ることは大切です。しかし、契約書があるだけで必ず「贈与」として認められるわけではありません。 特に家族間では、名義よりも「実態」が厳しく問われます。

今回は、相談現場でよく見られる「贈与したつもりだったのに、後から問題になるケース」について解説します。

契約書はあるのに、贈与と見られにくいケース

40代の男性会社員の方から、70代の父親の相続対策についての相談です。

その方については、相続対策で3年ほど前から父親から毎年約100万円ずつ贈与を受けているとのことでした。金額は年間110万円以内に収まっていたとのことです。3年間の合計で約300万円です。

さらに、毎年欠かさずに贈与契約書も用意していました。本人としては、「1年あたり100万円なら基礎控除の範囲内だし、契約書もあるので問題ない」と考えていたそうです。

ところが、詳しく話を聞いていくと気になる点がありました。本人名義の口座に資金が振り込まれていましたが、口座自体の開設は父親でした。口座には、毎年12月ごろに100万円ずつ入金されていました。

しかし、キャッシュカードや通帳、印鑑は父親が保管していました。本人は3年間で一度もその口座からお金を引き出していません。残高が300万円になっていることも、今回の相談まで正確には把握していませんでした。

つまり、名義は子どもであっても、実際には父親が管理していた状態です。この場合、契約書があるからといって、必ず贈与の実態があるとは言い切れません。
仮に将来、父親の相続が発生したときに、この300万円が「子どもに贈与済みの財産」ではなく、「父親が管理した財産」と判断されるかもしれません。その場合、贈与税の問題というより、相続税の申告で父親の財産として扱う必要が出てくる可能性があります。個人から財産をもらった場合は、原則として贈与税の対象になります。

また、暦年課税では、1年間に贈与で取得した財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いて計算します。ただし、そもそも本人が自由に管理できない状態であれば、「本当に贈与があったのか」という点が問題になります。

契約書があっても安心できないポイント

今回のように贈与契約書を作っていても、実態が伴っていなければ注意が必要です。たとえば、次のような状態です。

  • 通帳やキャッシュカードを親が持っている。
  • 子どもが口座の存在や残高の状態を把握していない。
  • お金を受け取った本人が自由に使えない。
  • 毎年同じ時期に同じ金額を移しているだけで、本人の理解や管理の実態が乏しい。
  • 贈与を受けた本人に、もらったという認識が薄い。

家族間では、「親が管理してあげているだけ」という感覚になりやすいです。

しかし、税務上は名義だけで判断されるわけではありません。

  • 誰が資金を出していたのか
  • 通帳や印鑑を持っていたのは誰か
  • 誰が自由に使える状態だったのか

こうした点が確認される可能性があります。

家族名義の預貯金であっても、実質的に亡くなった人の財産と認められるものは、相続税の申告に含める必要があります。そのため、「子ども名義の口座に入っているから、完全に子どものお金になった」と単純には言い切れません。

FP視点では「書面」よりも「説明できる状態」が重要

FPとして相談を受けていると、贈与については「税金がかからない金額かどうか」に意識が向きがちだと感じます。

もちろん、年間110万円の基礎控除を理解することは大切です。しかし、それ以上に大切なのは、後から見ても贈与の実態を説明できるかどうかです。

今回のようなケースでは、契約書はありました。お金の移動もありました。
それでも、受け取る本人が管理しなければ、「本当に贈与された財産」と説明しにくくなります。

贈与をするなら、次のポイントを整えておくことが大切です。

  • 贈与する人と受け取る人の双方が、贈与の内容を理解する
  • 銀行振込などによって、資金移動の記録が残っている
  • 受け取った人が通帳やカードを管理している
  • 受け取った人が自分の判断で使える状態になっている
  • 必要に応じて贈与税の申告をしている

特に、親が子どもや孫の名義で口座を作って、そこにお金を入れるケースは注意が必要です。
親としては良かれと思っていても、本人が自由に使えない状態であれば、後に「名義のみの預金」と見られるかもしれません。

また、相続開始前の一定期間内に受けた暦年課税による贈与財産は、相続税の計算上、加算対象になる場合があります。2024年1月1日以後の贈与からは、対象期間が段階的に7年へ延長されています。
ただし、加算対象になるのは、原則として相続や遺贈で財産を取得した人への贈与です。つまり、「110万円以内だから絶対に安心」とは言い切れません。

贈与は、契約書を作って終わりではありません。「誰の名義か」ではなく「誰が管理し、誰が自由に使える状態か」。この視点が、将来の家族を守るための大きなポイントになります。

家族間のお金のやり取りほど、あいまいなまま進みやすいものです。だからこそ、後から説明できる形で残しておく必要があります。

贈与契約書は大切です。しかし、それだけで十分とは限りません。「誰の名義か」ではなく、「誰が管理し、誰が使える状態だったのか」この視点を持っておくことが、贈与で後悔しないための大切なポイントです。

相続対策として継続的に贈与を行う場合や金額が大きいケースは、税務上の判断が必要になることもあるため、税理士などの専門家にも確認しておくと安心です。


※本記事は一般的な制度解説を目的としており、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の贈与や相続税の申告にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。

保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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