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3,000万の住宅ローン契約→「一日でも早く返すべき」5年で500万を繰上返済するが…数年後、40代夫婦を襲った“想定外の事態”

  • 2026.6.2
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関でマネージャーを務めながら、家計や住宅ローンのご相談に日々向き合っている中川です。

今回ご紹介するのは、「借金は悪。一日でも早く返すべき」と信じ、ボーナスや余剰資金をほぼすべて住宅ローンの繰上返済に充ててきた40代Iさんご夫婦の体験談です。家計のことを考え、繰上返済を進めてきましたが想定外の出費に直面したときに思わぬ落とし穴にはまりました。

「住宅ローンは一日でも早く」と信じて繰上返済を実施

Iさんは40代後半の会社員。奥さまと中学生のお子さん2人と暮らす4人家族です。

10年ほど前、3,000万円の住宅ローンを35年・変動金利1.0%で組み、念願のマイホームを購入しました。毎月の返済額は約8.5万円。一時金返済はなく、毎月のみの返済で契約しています。

Iさんご夫婦には、強い信念があったといいます。「借金は悪。住宅ローンも一日でも早く返すのが、家計の王道だと信じていました」

ボーナスが入れば、その大半を繰上返済に。年末の余剰資金が出れば、まとめて繰上返済に。気づけば5年間で約500万円を、コツコツと繰上返済に投入してきたそうです。家計簿アプリで「住宅ローン残高」が小さくなっていくのを見るのが、ご夫婦のささやかな楽しみだったといいます。

立て続けに襲った、想定外の出費

事態が動いたのは、ある年の春。長男が私立高校への進学を決定したことでした。入学金と前期授業料、制服代を合わせて、初年度だけで70万円近い支出が見込まれました。

ほぼ同じタイミングで、Iさんの実母が突然の入院。手術費用と1か月の入院費が発生しました。さらに転居先となる介護施設の入居一時金も検討する必要が出てきます。

「住宅ローンの残高はずいぶん減っていたんですが、その分、手元の預貯金がほとんど残っていないことに、初めて気づいたんです」

家計簿アプリで現預金の残高を確認すると、予備費として残っていたのは、わずか30万円ほど。「繰上返済した分は、ローン残高には反映されても、現金として取り戻すことはできない」という事実が、初めて重みを持って迫ってきたといいます。

カードローンに頼らざるを得なかった、苦い選択

立て続けの出費に対応するため、Iさんは銀行のカードローンで200万円ほどを借りました。

カードローンの金利は年率12%。住宅ローンの金利1.0%と比べると、およそ12倍の水準です。

「低い金利の住宅ローンを必死で返した分が、結局は高い金利のカードローンに置き換わっただけ。完済を急いだ意味が、何だったのか分からなくなりました」

冷静になってから相談したファイナンシャル・プランナーに、家計の「生活防衛資金」の考え方を指摘されたといいます。一般に、生活費の6か月〜1年分は預貯金で確保したうえで、余裕資金を投資や繰上返済に回すのが基本、というお話でした。

「繰上返済」と「手元流動性」のバランス

繰上返済による利息軽減効果はもちろんありますが、生活防衛資金や数年以内に必要となる資金は別途確保しておく必要があります。

これから繰上返済を検討される方は、まず生活防衛資金として生活費の6か月〜1年分を、預貯金で確保する。次に教育費や医療・介護費など、今後5年間で発生し得る大型支出の見通しを立てる。そのうえで余裕がある資金を繰上返済に回す。この順序が現実的だとされています。

「借金は悪」という感覚は、家計を守る健全な感覚です。ただ、必要な資金を確保せずにローンを急いで返した結果、高金利のローンに頼らざるを得なくなれば、本末転倒です。ローン残高の数字だけでなく、家族のライフイベントと手元資金を含めて考える。その一手間が、いざというときに家計を守ってくれます。


※本記事に登場する事例は、実際の相談事例をもとに、個人が特定されないよう一部の設定や数値を再構成したものです。
※住宅ローンの返済額やカードローンの金利、教育費・医療費などの金額は、あくまで一般的な試算例であり、金融機関や利用プラン、ご家族の状況によって異なります。
※住宅ローンの繰上返済には、金融機関や手続き方法(インターネット・窓口など)によって、所定の手数料がかかる場合があります。
※将来のライフプランや資金計画の決定、具体的な借入・返済手続きにあたっては、信頼できるファイナンシャル・プランナーや金融機関の窓口、専門家にご相談のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

執筆・監修:中川 佳人
金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

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