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“験担ぎ=ただの気休め”は嘘だった。最新科学と専門家が明かす、本番前の“アレ”を持つ人ほど強い理由

  • 2026.4.13

オリンピックのような大舞台に立つ選手でも、本番前のルーティンを大切にする人は多い。受験の現場でも、神社での合格祈願や縁起物の文具など「験担ぎ」は今も身近な存在だ。

では、社会人になってからはどうだろう。初出社、配属のあいさつ、初めてのプレゼンなど、新社会人にとっても「本番」は意外と多いもの。そんなとき、決まった服を着たり、縁起の悪い言葉を避けたりすることには、一体どんな意味があるのだろうか。

今回は、法廷診療心理学博士・遠藤貴則さんの科学的な視点と、験担ぎに詳しいHappiness エミえみさん(以下、エミえみさん)の言葉から、本番前の整え方のヒントを探ってみた。

スポーツ心理学では、験担ぎは本番前の「ルーティン(決まった手順)」と捉える。毎回同じ流れで準備すると緊張がほぐれ、普段の力を出しやすくなるのだとか 【画像=写真AC】
スポーツ心理学では、験担ぎは本番前の「ルーティン(決まった手順)」と捉える。毎回同じ流れで準備すると緊張がほぐれ、普段の力を出しやすくなるのだとか 【画像=写真AC】

実力があるのに、本番で崩れる人の共通点

験担ぎというと、「信じるかどうか」の話だと思う人もいるかもしれない。だが実際にはもっと現実的な側面がある。人は緊張すると自分の言葉やその場の受け止め方に大きく左右されやすくなるからだ。

「人の記憶は、固定されたものではありません。思い出すたびに少しずつ変わっていくものです。ですから、『あのときこうだった』という本人の確信が、そのまま事実とは限りません。私は証言だけでなく、記録やファクトに重きを置きます」(遠藤さん)

本番前の不安なときもこれとよく似ている。自分にどんな言葉をかけるかで、気持ちの向きは大きく変わる。

「たとえば、メールやLINEのような文字だけのやり取りは、声の調子や表情がないぶん受け手の解釈に左右されやすいです。本番前も同じで、自分にどんな言葉をかけるかは思っている以上に大事です。必要以上に自分を追い込む言葉は、やはり避けたほうがいいですね」(遠藤さん)

つまり験担ぎは“神頼み”というより、脳と体を「本番モード」に切り替えるスイッチ。「次はこれをやる」が決まっていると、不安が暴走しにくくなるわけだ。

ルーティンは気持ちを落ち着かせるだけでなく、本番での判断や動きのブレも小さくしてくれる 【画像=写真AC】
ルーティンは気持ちを落ち着かせるだけでなく、本番での判断や動きのブレも小さくしてくれる 【画像=写真AC】

仕事ができる人ほど決めている“最初の型”

もちろん、験担ぎだけで準備不足が帳消しになるわけではない。とはいえ、本番前に同じ順番で持ち物を確認したり、深呼吸をしたりといった小さな行動には、思っている以上に実用的な面がある。

「大事なのは、何を信じるかより、自分をどう整えるかです。持ち物を同じ順番で確認する、深呼吸をする、短いひと言を決めておく。そういう再現できる行動には意味があります。不安が強いと、人は頭の中が散らかりやすいからです」(遠藤さん)

やることが決まっているだけで、気持ちは少し落ち着く。本番前のルーティンを持っている人が強いのは、そのためかもしれない。

また、トラブルが起きたときの“言葉の置き方”も新社会人が知っておきたいポイントのひとつだ。

「感情的な場面では、いきなり『すみません』と言うより、『教えてくださってありがとうございます』と返したほうが流れが変わることがあります。『でも』『しかし』とすぐ押し返さないことも大切です。言葉の置き方ひとつで、場の空気はかなり変わります」(遠藤さん)

一方、言葉の選び方について験担ぎに詳しいエミえみさんは、日本人が昔から大切にしてきた感覚にはきちんと理由があると見る。

「受験の前に『落ちる』『滑る』を避けたり、結婚式で『別れる』『切れる』を避けたりするのは、語呂合わせだけではありません。その場にいる人の気持ちを乱さないための配慮でもあります。日本人が長く続けてきたのには、それなりの理由があると思います」(エミえみさん)

新社会人も同じで、それこそ初日に「絶対ミスする」などと口にすれば、自分だけでなく、まわりの空気まで沈ませてしまう。自分や相手を不安にさせる言葉を重ねないことも、立派な験担ぎのひとつといえそうだ。

ネガティブな言葉は、脳に「最悪のシナリオ」を先に描かせやすい。だから大勝負の前ほど、自分を追い詰める口ぐせは減らしたほうがいい 【画像=写真AC】
ネガティブな言葉は、脳に「最悪のシナリオ」を先に描かせやすい。だから大勝負の前ほど、自分を追い詰める口ぐせは減らしたほうがいい 【画像=写真AC】

神頼みより大事な、“続けられる整え方”

さらに最近の験担ぎは、神社での祈願だけにとどまらない。普段から使える縁起物の文具や、お守り代わりに持てる小物などは日常になじむ形へと広がっている。エミえみさんも特別な日に何か大きなことをするより、日々の中で少しずつ整えていくほうが大切だと話す。

「験担ぎは、特別な日にだけするものではありません。朝に短い言葉で気持ちを整えること、夜を『ありがとう』で締めること、そういう小さな習慣の積み重ねです。難しいことをしなくても、自分が落ち着ける形を1つ持っておくだけで違います」(エミえみさん)

こうして見ると、験担ぎは“特別な力を呼び込むもの”というより、日々のリズムを整えるものと考えたほうがしっくりくる。朝の入り方を整える。夜の終わり方を整える。そんな小さな習慣が、新生活のペースづくりにもつながっていくのだろう。

何か特別な力を期待するのではなく、本番前に自分を必要以上に乱さないこと。オリンピック選手も受験生も新社会人も、結局問われるのは「いつもの自分を出せるかどうか」なのかもしれない。

最後に、遠藤さんは「言葉の置き方ひとつで、自分の受け止め方も相手との関係も変わります。本番前も同じで余計に自分を追い込む言葉を重ねないことが大切です」と語る。

続けてエミえみさんも、「大切なのは、自分が落ち着ける形を1つ持つことです。難しいことをしなくても、朝のひと言や出かける前の小さな習慣で十分です」と話す。

手順を小さく決めて迷いを減らす。これによっていつもの力を出しやすくなる 【画像=写真AC】
手順を小さく決めて迷いを減らす。これによっていつもの力を出しやすくなる 【画像=写真AC】
【図表】最新科学が証明した、プレッシャーに負けない人が本番前にやっている習慣 【画像=遠藤貴則、Happiness エミえみ】
【図表】最新科学が証明した、プレッシャーに負けない人が本番前にやっている習慣 【画像=遠藤貴則、Happiness エミえみ】

新生活に向けて、出かける前に深呼吸をする。ネガティブな言葉をわざわざ口にしない。自分が少し落ち着くひと言を決めておく。そんな自分なりの小さなルールを持っておくだけで、新社会人の毎日が少しラクになるかもしれない。

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