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EV事業見直し……、ホンダ“巨額赤字”の衝撃

  • 2026.4.7

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第464回)

鳴り物入りのホンダ0シリーズだったが……(2025年ジャパン・モビリティショーより)

■ホンダにとっては怒涛の1カ月だった

3月12日午後、ホンダから「四輪電動化見直し戦略に伴う損失の発生」に関するプレスリリースと記者会見のお知らせがありました。2月の決算会見では、北米を中心とするEV(電気自動車)市場の厳しい状況が伝えられ、四輪事業の赤字が続いていたため、これを見た当初は損失もやむなしと思いました。

ただ、驚いたのはその後です。リリースを最後まで見ると、業績予想の下方修正の表が出てきました。当期利益には赤字を示す△の記号が出ています。単位は「百万円」で、数字をたどっていくと百万、千万、億、十億、百億、千億……、6000億!「間違いないですよね?」午後のニュースを担当していた森田耕次デスクと数字を見合わせていました。

オンラインで行われた記者会見では三部敏宏社長ら幹部3人が登場。日産自動車との経営統合“破談”の時に見せていた強気の表情は影を潜めていました。

オンラインで行われたホンダの記者会見(3月12日 中央が三部敏宏社長)

四輪電動化戦略の見直しとして、北米で生産を予定していたEV「ホンダ0(ゼロ)SUV」「ホンダ0サルーン」「アキュラRSX」の三車種の開発・販売中止を発表。中止に伴う処理により損失を計上し、2026年3月期連結決算の予想は最大で6900億円の最終赤字に下方修正されました。中止による処理とは、例えばEVに関する金型や専用設備の評価額を下げる減損、EV開発のために尽力した部品メーカーへの補償も含まれます。2027年3月期とあわせると損失は最大2兆5000億円に上り、これらを2年間に振り分けるため、次期2027年度の決算も厳しいものになりそうです。

EV開発・販売中止の理由はやはり北米と中国。北米では環境規制の緩和が進み、EV補助金が廃止されたことで市場成長のスピードが頭打ちになりました。一方、中国では逆にEV市場は拡大し、ライバルの製品投入のスピードは想定を超えていました。電動化・知能化の進化に追い付けていない状況です。EVに歩を進める他社はほぼ同じ理由で、事業見直しを強いられており、ホンダもこうした流れに抗うことができませんでした。

「このまま生産・販売形態に移行すると、将来にわたって、さらなる損失拡大を招くという状況、断腸の思いで決断を下した」(三部社長)

開発・販売中止となった「ホンダ0サルーン」

北米市場は高関税政策の影響など、トランプ政権の「副産物」という側面も少なくありません。今後は大型車の領域も含め、新世代のHV(ハイブリッド)システムを主力車種に順次搭載していくほか、中国市場では知能化・電動化技術の搭載強化を図ります。四輪事業全体では開発期間の短縮や生産効率の改善にも取り組んでいくということです。「2040年のEV、FCV(燃料電池自動車)あわせて100%」という目標について、三部社長は「現実的には達成困難だろう」と事実上、その看板を下ろす考えを示しました。

さらに衝撃の発表から約半月後の3月25日、ソニーと共同開発していたEV「アフィーラ」についても第一弾・第二弾のモデルの開発・販売中止が明らかになりました。合弁会社を含めた3社での今後の事業見直しを進めます。

開発・販売中止となった「ホンダ0SUV」

■EVの旗は降ろさず……、かつての底力は発揮できるか

北米のEV減速、中国の競争激化……、赤字の理由については、はて、どこかで聞いたような、と感じます。経営統合が破談した日産と全く同じケースです。両社の協業は継続しており、再び“縁談”の話が持ち上がる可能性も指摘されています。

ただ、日産と比べるとやや事情が異なります。ホンダでは二輪事業の営業利益率が2025年4月~12月期で18.6%という驚異の数字を誇ります。二輪と四輪で規模は違うものの、事業構造を見ると二輪が支えているといっても過言ではありません。今回はそれでも支えきれなったことになりますが、会社全体では2025年12月の時点で4.3兆円の現預金を確保しており、ただちに危機に陥るという段階ではありません。また、HVについて、ホンダのシステム「e:HEV」は高速走行でクラッチによりエンジンと直結するシステムのため、高速燃費で有利とされています。

ソニーと共同開発していた「アフィーラ」も中止に

一方、グローバル化の軸足は今後インドに傾けます。EVの歩を完全に止めるというわけではなく、ホンダ0シリーズ3車種のうちの残るひとつ、コンパクトSUVの「ホンダ0α」については「インド・日本市場がメインで一定の事業性が見込める」(三部社長)として、予定通り投入する考えを示しました。

そもそもEV、FCVの普及目標については、2050年のカーボンニュートラル実現の一環として設定されたもので、「将来世代に対してモビリティカンパニーとしての責務があるという強い意思をもって決断したものだった」と三部社長は振り返ります。崇高な理念の下、北米のEV減速についても「永続的なものではない。長期的視点で柔軟にEVへの仕込みを続けていくことが必要」と話しました。

思えば、ホンダは創業以来、様々な危機に直面しましたが、卓抜したアイデアで乗り切ってきた歴史があります。最たるものは排出ガス対策。1970年にアメリカが制定した通称「マスキー法」は、1975年以降に製造する自動車の排出ガス中の一酸化炭素、炭化水素の量を1970~1971年型の10分の1以下にするという厳しいものでしたが、それを世界でいち早くクリアしたのが、ホンダが開発した「CVCC」というシステムでした。また、1990年代のミニバン、クロカンブームの時、当初それに見合うプラットフォームを持たなかったホンダは苦戦しましたが、乗用車のプラットフォームを流用することで「オデッセイ」「ステップワゴン」「CR-V」「S‐MX」を開発。「クリエイティブ・ムーバー」と名付けた一連の車種はホンダの躍進に大きく貢献しました。

「ホンダ0α」は予定通り投入される

赤字見通しの責任問題について三部社長は「最初にやることは止血すること、今後のホンダの事業競争力の再構築を図ること。その結果を出すことが最大の責務」として、当面続投する考えを示しました。四輪事業戦略再構築の詳細については、来月発表される予定です。

自動車産業は世の経済原理や政策転換に振り回されるのが常です。限られた経営資源の中で「さじ加減」の難しさは大いに察するところですが、かつての底力で乗り切ることができるのか注目です。

(了)

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