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「数百万円単位の差が生まれる」お金のプロが指摘。申請を忘れて大損に…加給年金の“見落としがちな落とし穴”とは?

  • 2026.5.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「年金版の家族手当」と呼ばれる「加給年金」という制度をご存じでしょうか。厚生年金に20年以上加入し、65歳時点で生計を維持している65歳未満の配偶者などがいる場合に加算される給付で、年額約40万円にもなる重要な制度です。

しかし、この制度には「自動支給されない」「繰下げ受給と相性が悪い」といった、見落としがちな落とし穴がいくつも存在します。制度を知らずに申請を忘れていたり、将来の年金額を増やすためにとった選択が、かえって損を招いていたりすることもあるのです。

「自分は対象なのだろうか?」「このまま受給開始を待っていて大丈夫?」そんな疑問を持つ方のために、今回は専門家の見解をもとに、加給年金の基本と、絶対に損をしないためのチェックポイントを分かりやすく解説します。

「知っている人だけが得をする」加給年金の仕組みとは?

---加給年金とは具体的にどのような制度で、なぜ申請漏れなどのトラブルが起きてしまうのでしょうか?

柴田 充輝さん:

加給年金は『年金版の家族手当』とも呼ばれ、厚生年金に20年以上加入した方が65歳になった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳年度末までの子がいる場合に加算される制度です。年額約40万円にもなる重要な給付ですが、手続きのタイミングに注意が必要です。

その背景として、原則『申請』が必要である点が挙げられます。

65歳時の年金請求書(裁定請求書)に配偶者情報を正しく記載していればスムーズですが、記載漏れがあったり、後から対象者が増えたりした場合には『加給年金額加算開始事由該当届』の提出がなければ、支給を受けられません。

また、配偶者自身が厚生年金20年(※)以上の老齢年金や障害年金を受けている場合は支給停止になるなど、複雑な例外規定も多く、自分が対象か判断しづらい構造があります。

ねんきん定期便にも加給年金の額は反映されず、年金事務所の案内も受給者側が問い合わせて初めて詳しく説明されるケースも多いため、『知っている人だけが得をする』というのが実情です。年金の請求権は5年で時効により消滅するため、知らないうちに権利を失ってしまうケースが少なくありません。

(※生年月日により15年〜19年の短縮特例があります)

繰下げ受給は注意が必要?加給年金の「意外な落とし穴」

---老齢年金の受給を繰下げることで、年金額を増やそうと考えています。加給年金を受け取る上で、何か影響はあるのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「最も慎重に判断すべきなのが、老齢厚生年金を繰下げ受給する場合です。

繰下げによって年金額を増やせると考え、受給開始を遅らせる方が増えていますが、ここに大きな落とし穴があります。厚生年金の受給を繰下げている『待機期間中』は、加給年金の要件を満たしていても、加給年金は一切支給されません。

さらに、加給年金は繰下げによる増額の対象にもならないため、受給を遅らせた期間分、年額約40万円の受取チャンスを逃すことになります。繰下げで得られる『一生涯の増額分』と、繰下げ期間中に『失う加給年金の総額』を比較せずに決めてしまうと、結果的に受取総額で損をする可能性が生じます。

次に注意すべきは、配偶者自身の年金受給権です。配偶者に厚生年金の加入期間が20年以上(特例該当を含む)あり、実際に老齢厚生年金を受け取っている間などは、加給年金は支給停止となります。共働き世帯が増えた現在、妻自身も長く厚生年金に加入していたケースは珍しくなく、事前の確認が不可欠です。

特に夫婦の年齢差が大きいケースは、加給年金の受取総額が大きくなるため、時効や手続き遅れによるリスクが高まります。夫65歳・妻55歳であれば最大10年間受給できる権利があるため、気付いた時には数百万円単位の差が生まれることもあります。」

加給年金を受給するために今すぐ確認すべき3つのこと

---自分が加給年金の対象かどうかを確認し、受給漏れを防ぐにはどうすればよいでしょうか?

柴田 充輝さん:

「まず、以下の三点をチェックしてください。ねんきん定期便や年金証書、配偶者の加入記録を揃えて確認するのが確実です。

  1. ご自身の厚生年金加入期間が240月(20年)以上あるか(※生年月日により、これより短い期間で該当する特例があります)
  2. 生計を維持している配偶者が65歳未満か
  3. 配偶者の年収が850万円未満(または所得655万5千円未満)か

これらが揃えば対象の可能性が高いですが、配偶者自身の加入歴による支給停止の有無も併せて確認が必要です。

『何歳まで働くのか』をイメージして、老後生活をシミュレーションすることも大切です。加給年金は『いつから年金を受け取り始めるか』によって受給総額が大きく変わります。ご自身の退職予定年齢、配偶者の年齢、生活費、他の収入源を書き出し、『65歳受給』と『繰下げ受給』それぞれのパターンで生涯受取額を比較してみてください。不明点があれば、年金事務所(ねんきんダイヤル 0570-05-1165)や専門家に個別相談することをお勧めします。」

納得のいく老後設計のために

制度の複雑さゆえに「面倒くさい」と感じるのは無理もありません。しかし、専門家が指摘するように、仕組みを正しく理解し、適切なタイミングで手続きを行うだけで、受取総額に100万円以上の差が出ることもあるのがこの制度の現実です。

加給年金の確認は、自分と家族の生活を守るための大切な一歩です。「受け取れる可能性があるかも」と思った方は、まず年金証書とねんきん定期便を手に取ることから始めてみてください。必要な情報を自ら取りに行き、シミュレーションすることが、納得のいく老後設計への近道となります。


※年金制度は非常に複雑であり、生年月日や加入状況、他の年金との調整により個別の受給可否や金額が異なります。本記事は一般的な事例に基づいた解説であり、将来の受給額を保証するものではありません。具体的な手続きや試算については、必ず日本年金機構(年金事務所)の窓口、または社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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