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「夫の年金を半分もらえる」離婚を決意した40代女性→2年後、年金事務所で告げられた“思わぬ事実”に「もっと早く知っていれば…」

  • 2026.5.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、社会保険労務士の加藤あゆみです。

「離婚したら、夫の年金を半分もらえるんですよね?」。離婚を考えている女性の方から、こうしたご質問をいただくことがあります。たしかに「年金分割」という制度は存在しますが、ここに大きな落とし穴があることはあまり知られていません。

それは、請求期限を過ぎると、その権利は消えてしまうということです。2026年4月1日の法改正で請求期限は「離婚から原則5年以内」に延長されましたが、2026年4月1日より前に離婚した方は経過措置で「2年以内」のまま。この経過措置を知らずに権利を失ってしまう方が、今まさに後を絶ちません。

20年支えた夫の年金、月3万円が消えた

46歳女性・パート勤務のAさん(仮名)は、20年間連れ添った夫と44歳のときに離婚しました。離婚したのは2024年の春──当時は法改正の前だったため、「2年以内」の経過措置がそのまま適用される世代でした。

専業主婦として家庭を支えてきたAさんですが、離婚後は子どもを抱えてパート勤務を始め、住まい探しや行政手続きに追われる日々が続きました。「年金のことなんて、考える余裕すらありませんでした」と振り返ります。

転機は、離婚から2年と1か月が経った頃(2026年5月現在)。友人から「元夫の厚生年金、ちゃんと分割してもらった?2年以内に手続きしないと、もらえなくなるんだよ」と言われ、慌てて年金事務所に駆け込みました。

しかし窓口で告げられたのは「離婚から2年が過ぎていますので、年金分割の請求はもうできません」という無情な事実。

本来であれば月額約3万円、仮に20年間受給すれば約720万円受け取れたはずの将来の年金(※金額はあくまで試算例で、実際は夫婦の年金記録によって異なります)が、手続きを知らなかったというだけで消えてしまったのです。

「年金分割」には2種類ある

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を、夫婦の合意(または裁判所の決定)に基づいて最大2分の1まで分け合う制度。3号分割は、2008年4月以降に第3号被保険者(いわゆる扶養配偶者)だった期間について、相手の合意なしに、本人からの請求のみで2分の1に分割できる制度です。

専業主婦期間が長い人ほど分割の恩恵は大きくなります。しかしいずれの制度も、原則として離婚成立日の翌日から5年以内(2026年4月1日前に離婚した場合は経過措置で2年以内)に年金事務所へ請求しなければ、その権利は消滅してしまうのです。(※ただし、期限内に調停や審判を申し立てていた場合など、一部例外が認められるケースもあります。期限が近い場合は早急に専門家へ相談してください)

「分割=すぐお金がもらえる」ではない

もう一つ誤解されやすいのが、分割した瞬間にお金が振り込まれるわけではないという点です。

分割されるのは「将来の年金額そのもの」ではなく「厚生年金の記録」。

自分が年金を受給する年齢になってはじめて、上乗せ分として反映される仕組みです。「すぐ受け取れるわけじゃないから後でいい」と先延ばしにしているうちに、生活再建で頭がいっぱいのまま、気づけば期限を過ぎてしまうのです。

まず確認すべきは「離婚成立日」と「請求期限」

離婚を考えるとき、必ず意識していただきたいのは「離婚成立日の翌日から原則5年(2026年4月1日前に離婚した場合は経過措置で2年)が請求期限」だということです。協議書や調停の段階で取り決めておけば、その後の手続きはスムーズに進みます。

5年に延びたとはいえ、生活再建で慌ただしい時期はあっという間に過ぎていきます。「5年あるから後で」と思っているうちに、気づけば期限が迫っていた。そんなご相談も今後増えていくはずです。

「もっと早く知っていれば」これは年金相談の現場で最も多く聞かれる言葉のひとつです。離婚は人生の大きな転機ですが、それと同じくらい大きな「老後の備え」を失わないためにも、制度の存在を知っておきたいですね。


※2026年5月現在の情報に基づき執筆しています。
※本記事に登場する事例は、実際の相談をもとに個人が特定されないよう内容を再構成したものです。
※年金制度は法改正により変更される可能性があります。最新の情報は日本年金機構の公式サイトまたは年金事務所でご確認ください。具体的な手続きや個別の請求条件については、お近くの年金事務所または「ねんきんダイヤル」にご相談ください。

執筆・監修:あゆ実社労士事務所
人材育成・キャリア支援を軸に約10年の実務経験を持つ、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント。 IT企業の人事として、新卒・若手育成、研修設計、評価・キャリア支援の仕組みづくりに携わる一方、個人では企業や個人に向けたキャリア相談・人事支援を行っている。 これまでに累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1制度設計や面談シートの設計、育成施策の言語化を支援。 近年は生成AIを活用した業務設計・人事業務の効率化にも注力し、「現場で使えること」を前提にしたAI活用の伴走支援を行っている。

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