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「週20時間未満で働く」は過去の話だった。2026年10月の改正で、パート主婦が“損しない働き方”とは?【お金のプロが解説】

  • 2026.5.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

2026年10月、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大が予定されています。これまで多くの人が、社会保険の加入対象にならないよう「年収の壁」を意識して労働時間を調整することを家計防衛のセオリーとしてきました。

しかし、制度が変わる中で、これまでの戦略を見直すべき時が来ているのかもしれません。「手取りが減る」という不安に対し、専門家は「将来のリターンと保障を考えれば、むしろプラスになる」と指摘します。なぜ今、壁を越えて働くほうが合理的なのか。新しい時代の働き方を専門家に解説していただきました。

2026年10月改正でどう変わる?社会保険加入の「真のメリット」

---2026年10月の改正で、短時間労働者の社会保険加入がさらに広がると聞きました。保険料負担が増える中、制度的にどれくらいのリターンがあるのでしょうか?

柴田充輝さん:

「2026年10月に施行が予定されている改正では、企業規模(従業員数)に関わらず適用対象が広がるほか、いわゆる『106万円の壁(月額賃金8.8万円以上の要件)』の見直し・撤廃も議論されています。これにより、週20時間以上働く短時間労働者は賃金水準にかかわらず厚生年金・健康保険の加入対象となります。目先の保険料負担は増えますが、将来のリターンは制度の仕組み上、確実に積み上がります。

月収10万円(標準報酬月額9.8万円)で12カ月加入した場合で考えてみましょう。老齢厚生年金の報酬比例部分は『平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数』で計算され、年額約6,400円が一生涯上乗せされます。加入を10年続ければ年間約6.4万円、終身で受け取れるイメージです。

一方、本人負担の保険料は健康保険・厚生年金合計で月約1.4~1.5万円、年間およそ17万円。年金額だけで回収すると20年超かかりますが、『長生きのリスク』に対する終身保障と考えれば、長寿化するほど有利になります。さらに重要なのは、保険料は労使折半で会社が同額を負担している点です。実質的には年間約34万円分の社会保障を、自己負担17万円で手にしているわけです。

加えて、厚生年金加入者には、病気やケガで4日以上働けない時の『傷病手当金(報酬の約2/3を最長1年6カ月)』、『出産手当金』、さらに『障害厚生年金』『遺族厚生年金』がセットで付いてきます。特に障害・遺族年金には、被保険者期間が300カ月未満でも300カ月とみなして計算する特例もあり、加入直後に万一があっても手厚い保障が確保されます。」

「壁」で労働時間を抑える働き方は、本当に家計防衛になるのか?

---目先の手取りを減らしたくないので、社会保険の加入対象にならないよう、あえて週20時間未満に抑えて働こうと考えています。これは家計にとって賢い選択ではないのでしょうか?

柴田充輝さん:

「短期的なキャッシュフローを守る意味では、一つの手段かもしれません。

しかし、加入を回避し続けると、将来受け取れるのは老齢基礎年金(国民年金)のみとなります。満額でも年額約84万7,300円(令和8年度)ですが、物価変動などの影響を考慮すると、これだけで老後のすべてを支えるのは容易ではありません。 厚生年金を積み上げた人との差は、老後の長い期間で考えれば無視できない金額になります。

また、国民健康保険や扶養内で働く第3号被保険者には、原則として傷病手当金・出産手当金がなく、自分自身の所得を補償する仕組みはありません。病気・ケガ・出産で収入が途絶えた瞬間、家計を支える制度的な受け皿を持たないということです。

障害・遺族保障の格差も重要です。厚生年金加入者であれば、障害等級3級でも給付の対象になったり、子のない配偶者への遺族給付があったりと、自営や扶養内ではカバーしきれないリスクまで網羅できるのです。目先の手取りを守るために、これらの強力なセーフティネットを手放してしまうリスクも考慮すべきでしょう。」

「壁」を越えるという発想転換が、未来の資産形成につながる

---物価高や将来への不安がある中、これからの時代、私たちはどのように働いていくべきなのでしょうか?

柴田充輝さん:

「見落とされがちなのが、『人的資本』の観点です。働く能力や時間は、誰もが持つ最大の資産です。

本来それを活かして稼ぐほど、将来のキャッシュフローは強固になります。『年収の壁』を意識して労働時間を抑えることは、キャリア形成や昇給の機会、ひいては生涯賃金を自ら制限してしまうという『見えない損失』を生んでいるとも言えます。

まずは『壁で止めず、越えて稼ぐ』ことを検討しましょう。壁の手前でセーブするよりも、しっかり稼いで手元のキャッシュを増やし、その増えた余裕資金を新NISAやiDeCoなどの自助努力へ回すこれにより、将来の公的年金に加えて自分自身で育てる資産も積み上がります。

『税・社保=没収』ではなく、『会社が半額負担してくれる老後資金作り+手厚い保障への加入』と読み替えるだけで、納得感は変わるはずです。労働時間を減らして逃げ切るのではなく、人的資本を活かして自らの資産を増やすという発想転換こそが、これからの時代を生き抜くポイントになるでしょう。」

「壁」を気にせず、自分の可能性を活かす働き方へ

2026年の改正は、働く私たちにとって固定観念を捨てる大きなきっかけになるかもしれません。壁を意識して制限をかけるよりも、自分の可能性を活かして稼ぎ、制度を味方につける。このサイクルこそが、少子高齢化社会を生き抜くための賢明な戦略と言えます。


※社会保険の適用拡大については、現在政府で検討・決定されている方針に基づいています。実際の施行にあたっては、詳細な所得要件や例外規定が設けられる可能性があるため、厚生労働省の最新発表をご確認ください。

監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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