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「階段くらい平気」団地5階を買った40代夫婦の末路。4年後、親の介護で直面した"絶望的な現実"

  • 2026.4.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

階段しかない共同住宅の上階は価格が抑えられており「狙い目」といわれることがあります。また「階段は運動になるから問題ない」といった会話は、内見の現場でもよく聞かれます。

特に団地リノベは、手の届きやすい価格帯とデザイン性の高さから、若い世代を中心に人気を集めています。

しかし、その“ちょっとした判断”によって、数年後に「住み続けられない家」へと変わってしまうケースも少なくありません。

今日は、エレベーターなしでも問題ないと判断して団地を購入した結果、家族構成の変化によって生活が一変してしまったエピソードをご紹介します。

「階段くらい問題ない」と笑っていた購入前

これは今から約6年前、私が会社員時代に売買仲介を担当していたときの話です。

相談に来られたのは、40代前半のAさんご夫婦でした。共働きで、お子さんはまだ小学生。将来的な教育費も考え、できるだけ住宅費は抑えたいというご希望がありました。

ご提案したのは、築40年ほどの団地をリノベーションした物件。3LDKで価格は約1,980万円。周辺のマンションと比べると1,000万円以上安い水準でした。

ただし、ネックはエレベーターなしの5階。

私が念のため確認すると、ご主人は笑いながらこう言いました。

「いや〜、5階くらいなら全然大丈夫ですよ。むしろ運動になりますし」

奥様も「子どももいるし、体力つきそうでいいですね」と前向きな様子。そのまま購入を決断されました。

入居後は快適だった“はずの生活”

入居後、しばらくは特に問題はありませんでした。

  • 買い物帰りに階段を使う
  • 子どもと一緒に上り下りする
  • 休日はまとめ買いで負担軽減

多少の不便はありつつも、「慣れれば問題ない」という状態です。実際、Aさんからも「最初はきつかったですけど、今は全然平気ですよ」というご連絡をいただいていました。

この段階では、“いい買い物をした”という認識だったと思います。

親の介護で一気に変わった生活

転機が訪れたのは、購入から約4年後のことです。奥様のお母様(70代後半)が体調を崩し、同居を検討することになりました。しかしここで、大きな問題が発生します。

「階段が上れない」

膝を悪くされていたため、5階までの上り下りが現実的ではありませんでした。無理に上がろうとした際も「もう無理…ここには住めない…」と、その場で断念。

結果として同居は断念し、お母様は別の賃貸物件を借りることになります。さらに問題はここで終わりません。

“住めない家”と“売れない現実”

通院の付き添いや介護のため、Aさんご夫婦の生活は大きく変わります。

  • 毎日の階段移動が負担
  • 介護用品や荷物の持ち運びが増加
  • 精神的なストレスも増大

そして最終的に引越しを決断。

しかし、ここで現実に直面します。売却査定額は約1,650万円。購入時の1,980万円よりも約330万円の下落です。さらに問題は「すぐに売れない」ことでした。内見に来たお客様の反応はほぼ同じです。

「階段5階か…ちょっと厳しいですね」

結果、売却までに約9ヶ月を要し、その間の住宅ローンと新居の家賃で二重負担。トータルで見ると、約450万円の負担となりました。

安さの理由は、そのまま“弱点”になる

このケースで最も重要なポイントはシンプルです。

「安く買えた理由が、そのまま売れない理由になる」という点にあります。エレベーターなしという条件は、購入時には大きな問題に感じにくい特徴です。

  • 若いうちは体力でカバーできる
  • 日常生活では大きな支障を感じにくい

一方で、年齢や家族構成の変化によって状況は一変します。

  • 将来的には階段の昇降が大きな負担になる
  • 介護や通院などで移動のハードルが上がる

さらに団地特有の問題として、設備改善の難しさも挙げられます。

  • 後付けでエレベーターを設置するのは現実的に難しい
  • 管理組合の合意形成が必要でハードルが高い
  • 建物構造上、そもそも設置できないケースも多い

つまり、購入後に対策を取ることができない「あとから変えられない致命的な弱点があった」ということです。

こうすれば防げた失敗

このケースは、事前の視点を少し変えるだけで回避できた可能性があります。重要なポイントは、「今の暮らし」ではなく「10年後の暮らし」を基準に判断することです。

具体的には、以下の視点を持つことが重要です。

  • 親との同居の可能性があるか
  • 自分たちが60代になったときの生活イメージ
  • 将来売却する場合、どの層が買い手になるか
  • 同じ条件の物件が市場でどのように評価されているか

特に見落とされがちなのが「売却視点」です。

「自分にとって問題ないか」ではなく、次に購入する人にとっても許容できるか。この視点を持てるかどうかで、将来の資産価値は大きく変わります。

住まいは“買って終わり”ではありません。最終的にどう出口を迎えるかまで見据えて判断することが、後悔しない選択につながります。

住宅は“今の自分”で選ぶと失敗する

団地リノベは魅力的な選択肢です。

ただし、価格の安さやデザインの良さだけで判断すると、後悔につながる可能性があります。住宅は“長く住むもの”です。だからこそ「今の快適さ」ではなく「将来も住み続けられるか」という視点が欠かせません。

エレベーターの有無は、その代表例です。一見すると小さな条件ですが、人生の変化が起きたとき、その影響は想像以上に大きくなります。

「階段くらい大丈夫」

その一言が、数百万円の損失と生活の制約につながることもある。住まい選びでは、ぜひ“未来の自分”にも問いかけながら判断していただきたいと思います。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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