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ペアローンで5,200万のマンション購入→3年後、30代夫婦を待ち受けた"300万の誤算"

  • 2026.4.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅購入を検討する際、「2馬力でローン返済すれば安心」と考えたことはないでしょうか。

「共働きだから2人で払えば大丈夫」
「今の家賃と同じくらいなら問題ない」

そのように感じる方は少なくありません。実際、最近は“ペアローン”という仕組みを活用し、理想の物件を手に入れるケースが増えています。

しかし、余裕のはずだった返済計画が、人生の変化によって一気に崩れてしまうこともあります。

今日は、ペアローンを選択したことで「売るに売れない」「住む人もいない」という状況に追い込まれた、30代夫婦の実例をご紹介します。

「2人で払えば余裕」だったはずの住宅購入

今から5年ほど前のことです。私が担当したのは、30代前半の共働き夫婦、Aさんご夫妻でした。

お二人とも正社員で、収入は安定していました。

ただ、希望していたエリア・広さの物件になると、単独ローンではどうしても借入額が足りません。そこで選択したのが「ペアローン」でした。

ペアローンとは、夫婦それぞれが住宅ローンを組み、互いに連帯保証人になる仕組みです。簡単にいうと、2人ともが“借りている側”であり、同時に“保証している側”でもある状態です。

つまり、自分の返済だけでなく、相手が支払えなくなった場合には、その分も背負うことになります。

この説明をしたとき、Aさんは少し考え込んだ様子でしたが、すぐにこうおっしゃいました。

「2人で払えば月々18万円ですよね」
「今の家賃とほとんど変わらないですし…いけますよね?」

奥さまも横でうなずきながら「むしろ今より広くなりますし、いいタイミングかなと思っていて」と話されていたのが印象に残っています。

最終的に、購入したのは総額5,200万円のマンション。駅徒歩圏内で、日当たりも良く、まさに“条件通り”の物件でした。引き渡しの日、Aさんは笑顔でこう言いました。

「やっと自分たちの家を持てましたね」

あのときは、誰もがこの先も順調にいくと信じていたはずです。

数年後、夫婦関係が悪化…そして離婚へ

購入から3年ほど経った頃、状況が大きく変わります。仕事の忙しさや生活のすれ違いが重なり、Aさん夫婦の関係は徐々に悪化していきました。最終的には「離婚」という結論に至ります。

ここで初めて大きな問題として浮き彫りになったのが、「ペアローンの構造」でした。

ペアローンは、夫婦それぞれが主債務者(借入の当事者)となり、さらに互いに連帯保証人となる仕組みです。そのため、関係性としては次のようになります。

  • 自分のローンは自分で返済する
  • 相手が返済できなくなった場合、その分の支払い義務も生じる

一見すると「それぞれが自分の分を払えばいい」と思いがちです。しかし実際には、どちらか一方の収入が途絶えた時点で、もう一方に負担がのしかかる構造になっています。この説明をしたとき、Aさんは戸惑った様子でこう言いました。

「じゃあ、どちらかがローンから抜けることはできないんですか?」

もっともな疑問です。ただし、現実はそう簡単ではありません。金融機関は「2人分の収入」を前提に審査し、融資を実行しています。そのため、途中で一方を外すことは、原則として認められません。

つまり、離婚したとしてもローンだけは“夫婦のまま”残り続けるのです。

売りたくても売れない…オーバーローンという現実

離婚後、Aさん夫婦はマンションの売却を検討しました。

しかし査定結果は約4,600万円。一方、ローン残債は約4,900万円。約300万円のオーバーローン、つまり売っても借金が残る状態でした。

この場合、通常の売却はできません。売却代金だけではローンを完済できず、不足分を現金で補填しない限り、抵当権が外れないためです。

「売れないってどういうことですか?」
「もう住まないのに、払い続けるしかないんですか…?」

最終的に選択したのは「任意売却(金融機関の同意を得て、ローンが残っていても売却する方法)」でした。

ただし「信用情報への影響」「残債の返済継続」といった負担が残ります。資産のはずだった家は、この時点で完全に“負債”へと変わりました。

プロとして伝えたい「絶対に外してはいけない判断基準」

同じ失敗を避けるために、現場で必ずお伝えしているポイントがあります。

■単独でも返せるか
どちらかの収入だけでも成立するか→2人の収入ありきではなく、1人でも回る設計にする

■出口から逆算する
周辺の成約事例を確認する→「いくらで売れるか」で判断する

■名義と清算方法を決めておく
売却や持分買取の想定を事前に整理→離婚時は不動産が最も揉めやすい

■最悪のケースを想定して判断する
収入減や離婚も想定して試算する→無理のない範囲を見極める

ペアローンは選択肢を広げる一方で、リスクも大きくなります。「2人で払えば大丈夫」という考えは、長い住宅ローンでは崩れることもあります。

大切なのは、状況が変わっても返済を続けられるかどうかです。余裕のつもりで選んだ住宅が、あとから生活を圧迫することもあります。

だからこそ、無理のない範囲で判断することが欠かせません。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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