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糖尿病患者の死因1位は「がん」…甘い物の食べ過ぎが発症リスク上げる!?予防に有効な食事法とは【専門医解説】

  • 2026.3.18
甘い物を食べ過ぎるとがんリスク増?(画像はイメージ)
甘い物を食べ過ぎるとがんリスク増?(画像はイメージ)

甘い食べ物を食べ過ぎると、肥満や糖尿病の原因となります。また、糖尿病患者の死因で最も多いのは「がん」といわれており、注意が必要です。実際に甘い物を食べ過ぎた場合、発症リスクは上がるのでしょうか。甘い物の過剰摂取とがんとの関係性や、甘い物の摂取量を無理なく減らすコツなどについて、藤保クリニック(東京都新宿区)院長で糖尿病専門医の飯島康弘さんに聞きました。

内臓脂肪の蓄積ががんリスクを高めるケースも

Q.そもそも、甘い物を食べ過ぎると、体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

飯島さん「甘い物の食べ過ぎが体に起こすことを、私はよく患者さんに“ドミノ倒し”にたとえて説明しています。1枚目のドミノが倒れると、次々と連鎖していくというイメージです」

(1)血糖値の“乱高下”最初のドミノは、血糖値の乱高下です。甘い物を食べると血糖値がグンと上がり、それを下げようとして膵臓(すいぞう)からインスリンというホルモンが大量に出ます。すると今度は血糖値が急降下して、またおなかが空いたように感じます。これはいわゆる“反応性低血糖”と呼ばれる状態です。

こうして「食べる→血糖値が急上昇→急降下→またおなかが空く→また食べる」という悪循環が始まります。

(2)肥満と内臓脂肪の蓄積2枚目のドミノは、肥満と内臓脂肪の蓄積です。余ったエネルギーは内臓脂肪としてたまっていきます。内臓脂肪はただの“脂の塊”ではなく、「TNF-α(ティーエヌエフ・アルファ)」や「IL-6(インターロイキン・シックス)」といった炎症を引き起こす物質を出し続けます。つまり、おなかの中で小さな“火事”がくすぶり続けているような状態です。この慢性的な炎症が、のちに様々な病気の引き金になります。

(3)インスリン抵抗性と高インスリン血症3枚目のドミノは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じ、血液中にインスリンが過剰にある「高インスリン血症」の状態になります。内臓脂肪が増えるとインスリンの効きが悪くなり、膵臓はさらに多くのインスリンを出さなければならなくなるからです。

実はこの高インスリン血症が細胞の増殖を促すシグナルとしても働きます。この点が“がんリスク”と深く関わってきます。

(4)2型糖尿病の発症4枚目のドミノが、2型糖尿病の発症です。糖尿病になると動脈硬化、腎症、網膜症といった合併症に加え、がんのリスクも上がることが分かっています。

このほかにも、歯周病や脂肪肝(MASLD)、腸内細菌のバランスの乱れ、さらにはうつや不安など、メンタルへの影響なども報告されています。

ただし、ここで大事なことをお伝えしたいのですが、「甘い物=悪」ではありません。問題になるのは、あくまで量、頻度、種類です。甘い物を楽しむこと自体を否定する必要はありません。

血糖値が高いと活性酸素が過剰に作られる

Q.では、実際に甘い物を食べ過ぎるとがんのリスクが上がるのでしょうか。

飯島さん「結論から言うと、“甘い物を食べたら直接がんになる”という単純な話ではありません。ただし、甘い物の食べ過ぎが体の中で引き起こす変化が、複数の経路でがんのリスクを高めることは、医学的な研究で裏付けられています。順番に解説します」

【経路1】甘い物の過剰摂取→糖尿病→がんリスク上昇日本糖尿病学会と日本癌(がん)学会が合同で設置した委員会の報告によると、2型糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べて、がん全体の発症リスクが約1.2倍高いとされています。日本人のデータでは、特にリスクが高いのが肝臓がん(約2.0倍)、膵臓がん(約1.9倍)、大腸がん(約1.4倍)です。

なぜ糖尿病があるとがんが増えるのでしょうか。そのメカニズムとして注目されているのが、高血糖による“酸化ストレス”と、先述の高インスリン血症です。

血糖値が高い状態が続くと、体内で活性酸素が過剰に作られ、細胞のDNAにダメージを与えます。DNAの傷が修復されないまま蓄積すると、がん化のきっかけになり得ます。

また、高インスリン血症では、インスリンが「IGF-1(インスリン様成長因子)」という物質を介して、細胞の増殖スイッチを“オン”にしてしまいます。正常な細胞に対しても、がん化した細胞に対しても、増殖のアクセルを踏んでしまいます。

【経路2】甘い物→肥満・内臓脂肪→慢性炎症→がんリスク上昇甘い物の食べ過ぎで内臓脂肪が蓄積すると、先ほどのTNF-αやIL-6といった炎症性物質が慢性的に放出され続けます。この“消えない炎症”が、臓器レベルで発がんを促す環境を作り出します。

さらに、内臓脂肪が増えると「アディポネクチン」という“がんの抑え役”をしてくれるホルモンが減ることも分かっています。「ブレーキが弱くなる」と言い換えるとイメージしやすいかもしれません。

国際がん研究機関(IARC)は、肥満を大腸がんや閉経後乳がんなどの“確実な”リスク因子として評価しています。

「糖質を絶てばがんが消える」は本当?

Q.糖質の摂取を制限すれば、がんリスクを減らすことができるのでしょうか。

飯島さん「糖質を制限すればがんのリスクが減るとは言い切れません。ネット上では『がん細胞はブドウ糖をエサにして増殖する。だから糖質を制限すれば、がんを“兵糧攻め”にできる』という内容の情報が広まっています。確かに、がん細胞が正常な細胞よりもブドウ糖を大量に取り込む性質を持つことは事実で、医学的にも知られた現象です。がんの検査で使われるPET検査も、この性質を利用しています。

しかし、ここから『だから糖質を断てばがんが縮小する』と結論づけるのは、大きな飛躍です。理由はシンプルで、ブドウ糖はがん細胞だけでなく、脳や赤血球、免疫細胞など体中のあらゆる細胞にとって不可欠な燃料だからです。血糖値は食事をしなくても肝臓が糖を作り出すことで一定に保たれる仕組みになっており、糖質制限をしたからといって、がん細胞だけが“飢える”ということにはなりません。

むしろ、極端な糖質制限は体力や免疫力の低下を招くリスクがあり、がん治療中の患者にとっては逆効果になりかねません。実際、『糖質制限でがんが治る』ことを示した質の高い臨床研究は、現時点では存在しません。

本当に気を付けるべきことは、糖質を“断つ”ことではなく、糖質の“取り方”です。『甘い物の食べ過ぎ→肥満→糖尿病→高血糖、高インスリン、慢性炎症→がんリスク上昇』という“間接的だけど確かなつながり”にこそ目を向けていただきたいです。予防の鍵は、極端な食事制限ではなく、バランスの取れた生活習慣です。

近年、果糖(フルクトース)の過剰摂取が脂肪肝を経由して肝がんリスクを高める経路にも注目が集まっています。特に甘いジュースやスポーツドリンクのような加糖飲料による果糖の大量摂取には注意が必要です。

実は、日本人の糖尿病患者の最も多い死因はがんで、約4割を占めています。これは意外に思われるかもしれませんが、臨床の現場では非常に重く受け止められている事実です。

ただし、『怖い』と感じるだけで終わらないでほしいです。糖尿病とがんには『不適切な食事』『運動不足』『肥満』『喫煙』『過度な飲酒』という共通の危険因子があります。裏を返せば、生活習慣を整えることで、糖尿病もがんも同時に予防できる可能性があるということです」

甘い物の摂取量を無理なく減らすには?

Q.もし甘い物を食べるのが癖になっている場合、無理なく摂取量を減らすにはどうしたらよいのでしょうか。

飯島さん「これは、日々の外来で最も多く寄せられる相談の一つです。最初にお伝えしたいのは、甘い物がやめられないのは“意志が弱いから”ではないということです。

砂糖を取ると、脳内でドーパミンという快楽物質が分泌されます。ドーパミンが出ると気持ち良くなり、『もっと食べたい』という欲求が生まれます。それを繰り返すうちに脳が“耐性”を持ち、同じ快感を得るためにより多くの甘い物が必要になるのです。

これは、依存のメカニズムと非常によく似ています。つまり、甘い物への欲求は“脳の仕組みの問題”であって、根性や人格の問題ではありません。その上で、臨床の現場で実際に効果が出ている取り組みを4つ紹介します」

■甘い物をゼロにしない。置き換えとタイミングで工夫する「甘い物の摂取を一切禁止」は長続きしません。それよりも、「食べるタイミングを食後にする」「タンパク質や脂質と一緒に食べる」といった工夫が有効です。空腹時に甘い物だけを食べると血糖値が一気に跳ね上がりますが、食後であれば血糖値の上昇は穏やかになります。

また、菓子を果物に「置き換える」のも一つの手です。果物には食物繊維やビタミンも含まれており、同じ甘さでも体への影響が違います。大事なのは“量と質を選ぶ”意識です。

■食物繊維ファースト(ベジファースト)を取り入れる食事のときに、まず野菜やキノコ、海藻などの食物繊維が豊富なものから食べる習慣をつけると、血糖値の急上昇を抑えられます。血糖値の乱高下が減ると、甘い物への衝動的な欲求も自然と和らぎやすくなります。

■我慢ではなく観察する甘い物が食べたくなったとき、少し立ち止まって「今、なぜ食べたいんだろう?」と自分に聞いてみてください。おなかが空いているのか、ストレスを感じているのか、ただの習慣なのか、さまざまなイメージが浮かぶと思います。食べること自体を否定するのではなく、自分の“欲求のパターン”を観察する姿勢が、認知行動療法的にも効果があるとされています。

■1人で頑張り過ぎないこれは私がいつも患者の皆さんにお伝えしていることですが、自分だけで変えられないときは、外からの力を借りるのも立派な“戦略”です。糖尿病外来や肥満外来、管理栄養士との面談など、専門家のサポートを活用する選択肢があります。最近では優秀なアプリもあります。

助けを借りることは、弱さではありません。“自分を責めないこと”が、行動を変えるための一番大事な出発点だと、私は考えています。

オトナンサー編集部

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