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「昔はヤンチャしてたんだ」と武勇伝を語る取引先。だが、私の同僚の顔を見ると黙り込んだワケ【短編小説】

  • 2026.3.12

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

昔は悪かった自慢する取引先

取引先の担当者の方は、仕事ぶりこそ誠実で有能ですが、一つだけ困った「仕様」の持ち主。

打ち合わせが終盤に差し掛かると、決まって始まるのが「昔はちょっとワルだった」という自分語りです。

「俺の地元じゃ、知らない奴はいなかったよ。バイクを乗り回して、夜の街を賑わせていたっけなあ」

さも初めて話すかのような、キラキラとした目。

しかし、その武勇伝を聞くのは今回で六度目。

今の穏やかな笑顔と丸みを帯びた体型からは想像もつかない過去です。

社内で密かにつけられたあだ名は「過去の栄光リピーター」。

今日もまた始まった……と、私は「へえ、意外ですね」と決まり文句を返す準備をしていました。

そんなある日のこと。

中途採用で入ったばかりの同僚が、初めて同行することに。

彼は地方出身で、口数は少ないけれどどこか冷静な雰囲気を持つ男性。

商談が無事に終わり、案の定、担当者の方の「回想録」がスタートしました。

「いやあ、君たちみたいな真面目な若者を見ると、昔の自分を思い出してね。俺なんて、当時は手が付けられない暴れ馬で、周囲からも恐れられていたんだよ」

同僚が語る事実

意気揚々と語る彼の言葉を遮ったのは、隣に座る同僚の、静かながらも落ち着いた声でした。

「……あの、失礼ですが、〇〇中学校のご出身ですよね?」

その瞬間、担当者の方の動きが、まるで時が止まったかのように固まりました。

「え、あ、そうだけど……。なぜそれを?」

同僚は少しだけ目を細め、懐かしそうに答えました。

「僕、三年間ずっと同じクラスでしたよ。背の順も近かったですし。三年間無遅刻無欠席の皆勤賞で、放課後は毎日図書室で静かに本を読んでいましたよね。暴走族なんて、うちの学年には一人もいませんでしたし」

暴走族のリーダーどころか、実際は放課後の図書室を愛する、地味で真面目な皆勤賞の生徒。それが、彼の真の姿だったのです。

嘘が白日の下にさらされた担当者の方は、みるみるうちに耳まで真っ赤に染まり、額からは滝のような汗が。

「あ、いや、それはその……イメージの話というか、記憶違いかな……」

しどろもどろになりながら、彼はそのまま深い沈黙に落ちてしまいました。今までのどの武勇伝よりも雄弁な、気まずい静寂が会議室を包みます。

それ以来、彼の口から「ワル」という言葉が出ることは二度とありません。

代わりに、最近はおすすめの小説や、美味しいお茶の淹れ方について、少し照れながら教えてくれるようになりました。

等身大の彼の方が、ずっと素敵に見えるのは内緒の話です。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

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