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「うどんといえば讃岐」という常識を超えた、令和の味とは?[森脇慶子さん今月のおすすめ]

  • 2026.3.8
撮影=前川明範

森脇慶子さん。門上武司さん、秋山都さん、山路美佐さん他、食通のジャーナリストや編集者が毎月ひとつのテーマから着想した3軒をまとめてご紹介する小誌連載「ガストロノミーの杜 極私的店案内」。

今回はフードジャーナリストの森脇慶子さんが、東京の3店をご紹介します。

出汁と麺へのこだわりが素晴らしい3軒に注目

昔から手軽な庶民の日常食として親しまれてきたうどん。そのうどんがいま、新たな局面を迎えています。"うどんといえば讃岐"の定石に対抗するかのように、去年は"柔もち食感"の福岡うどんが相次いで東京に進出。一方で進化系も根強い人気を見せるなど、うどん業界は多様性を標榜する店が増え、独自のうどんを打ち出す新店に目が留まります。

2026年元日にオープンした「自家製麺へんくつ」がそのひとつ。店主の山本征児さんは元・和食の料理人。故郷の福岡に帰郷した際、地元のうどんを久々に食べ、その魅力に開眼。40歳にしてうどん修業を始めた異色派です。ここでは、山本さんの修業先「讃岐うどんいわい」と福岡うどんのいいとこどりといえる、独自のうどんで楽しませてくれます。

お薦めは「塩うどん」と「韮うどん」。自家製塩だれに和えた冷たい「塩うどん」は、もちもちとした中に引きがあり、麺好きにはたまらない逸品です。一方の「韮うどん」は出汁に技あり。真昆布に鰹節、宗田節など数種の材料をブレンドした出汁は日本料理店仕込みのおいしさ。たっぷりの韮に熱した牛脂をかけると、ジュワッという快音とともに香り立つ芳香が食欲をそそります。うどんの粉の種類や配合を調整しながら、麺の工夫を重ねています。

撮影=前川明範

麺へのこだわりの点では「香川一福ART」も然り。細麺の魅力を広めたいと太麺と細麺の日を交互に設け、各々の麺に合わせて具も一捻りしています。細麺に合わせているのは、豚のしょうが焼きやグリーンカレーといった進化系。「うどんの魅力のひとつは、どんな具材やソースにも寄り添える汎用性です」とマネジャーの有藤大貴さん。その声には「麺処 NAKAJIMA」の安西雄太料理長も同意見。昨年から麺そのものとメニューを一新した同店では「津田屋流 豊前(ぶぜん)裏打会」(*)で研修を受けた安西料理長が自ら打ったコシのあるうどんを提供。ホテルならではの洗練されたメニューは外国人宿泊客にも好評とか。今後、グローバルな動きを見せそうな令和のうどんに注目です。

*北九州市に本拠を置く「うどんの新たな可能性を追求する」職人集団。

撮影=前川明範

「自家製麺へんくつ」(東京・三田)

独自の手法で編み出した、讃岐×福岡の進化系うどん

麺の味わいを楽しみつつ、出汁のおいしさにこだわって生まれた、讃岐と福岡のハイブリッド系うどん。〈上写真〉手前から艶やかな光沢もおいしそうな「塩うどん」(1,000円)、緑鮮やかな「韮うどん」(1,000円)、一番奥はサクサクと歯切れよい「小松菜の糠漬けと貝柱のかき揚げ」(500円)。「ふつうのうどん」「ふつうの冷かけ」(各800円)も。カウンターでひと碗の贅沢を楽しみたい。

DATA
営業時間/11時30分~20時30分(L.O.)
定休日/土曜 ※3月から平日に変更予定
tel.なし
Google mapで確認
東京都港区芝5-24-7

自家製麺へんくつ

撮影=前川明範

「香川一福ARTいっぷくアール」(東京・神泉)

話題のうどん専門店が手掛ける新業態。個性的な創作メニューに注目

2025年5月のオープン以来、瞬く間に人気店に。伝統と革新の融合をテーマに、ミシュランガイドで3年連続ビブグルマンを受賞した「香川一福」が新たに仕掛けた創作うどんの店です。太麺と細麺を日替わりで提供。硬いだけではない、しなやかな弾力を持つ麺に合わせたオリジナルのスープの味が光ります。写真の「グリーンカレーうどん(温)」(1,100円)は細麺を使用。女性に人気の一品です。

DATA
営業時間/11時~21時30分(L.O.)
定休日/不定休
tel.03-6433-5353
Google mapで確認
京都渋谷区渋谷3-17-4 アクシーズ7号館ビル1F

香川一福ART

撮影=前川明範

「麺処 NAKAJIMAなかじま」(東京・赤坂見附)

ホテルのダイニングとして、厳選された素材で上質な味を追求

透明感のある細めのうどんは、つるりとした喉越しのよさと独特のコシが特徴。その味を、ホテルらしい贅沢さとともに楽しめるのが「極みうどん」(5,800円)。ジュレ状にした出汁が麺とよく絡み、キャビアの塩味が味を引き締める贅沢なおいしさです。ホテルニューオータニ総料理長の中島眞介さんが納得できる食材を探すために、日本全国を訪ね歩いて見つけた厳撰素材が使用されています。

DATA
営業時間/11時30分~14時 17時〜20時30分(ともにL.O.)
年中無休
tel.03-3221-2789
Google mapで確認
東京都千代田区紀尾井町4–1 ガーデンタワー ロビィ階

麺処 NAKAJIMA

教えてくださったのは……

森脇慶子さん(フードジャーナリスト)
もりわきけいこ●23歳で食専門のライターを目指してフリーに。料理専門誌から女性誌まで、幅広く活躍するフードジャーナリスト。間違いのないレストラン選びに定評がある。著書に『フランスで料理修業』(学研プラス)、 『行列レストランのまかないレシピ』(ぴあ)など多数。『東京最高のレストラン』(ぴあ)採点者のひとり。

文=森脇慶子 撮影=前川明範 編集=平田剛三(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年4月号より

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