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英ロイヤル最大の試練? アンドルー元王子逮捕後の王室の対応を検証する

  • 2026.3.7
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「常に自己顕示と私腹を肥やすことに奔走しており、無礼で傲慢、特権意識のかたまり」。これは2026年2月19日に公務中の不正行為の疑いで逮捕されたアンドルー・マウントバッテン・ウィンザーに向けられた厳しい評価のひとつだ。 特筆すべきは、この発言がテレビコメンテーターやSNS上の批評家たちによるものではなかったという点だ。これは、英国政府の閣外大臣が、異例の議会討論の最中に庶民院の場で述べたものである。

英王室は現在、前例のない状況に置かれている。主要王族の逮捕は17世紀のチャールズ1世以来400年ぶり、という広く引用される説には異論もあるが、少なくとも近代王室史に類例がないのは確かだ。アンドルー元王子の逮捕、そして彼のエプスタインとの関係をめぐる一連の余波は、1936年のエドワード8世の退位(いわゆる“王冠を賭けた恋”)以来、最大の王室危機だと繰り返し評されている。アンドルーは一貫して不正行為を否定しているが、この未曽有の事態に王室は具体的にどのように対処しているのだろうか。

公務はストップさせず、継続する

2026年2月19日、ロンドン・ファッションウィーク初日の「トル・コーカー」のショーのフロントロウに座るチャールズ国王。 Karwai Tang / Getty Images

弟の逮捕からわずか数時間後、チャールズ国王はロンドン・ファッションウィークの最前列に座っていた。通常であれば明るく華やかな話題になったはずだが、今回ばかりは気まずいものになった。入場時に国王に向かって質問が飛んだことは、むしろ今の深刻な状況に即していたように感じられた。

それ以降も英王室では「通常どおり続ける」姿勢が貫かれている。叙勲式は予定どおり行われ、冬季オリンピックに関するメッセージも発信された。キャサリン妃はラグビー協会(RFU)のパトロンとして試合を観戦し、ウィリアム皇太子とともに英国アカデミー賞(BAFTA)授賞式に出席。カミラ王妃はクラレンス・ハウスにジゼル・ペリコを迎え、国王は教育分野の表彰を行い、ソフィー妃はソマリアを訪問している。

2026年2月22日、ロイヤル・フェスティバル・ホールで開催された英映画テレビ芸術アカデミー賞2026に出席したキャサリン妃とウィリアム皇太子。 Max Mumby/Indigo / Getty Images

この対応について疑問を呈する向きもあるだろう。しかし、もし王族が公務を停止し表舞台から退いたとしたらどうなるか? それは王室の存在意義そのものを失わせることになる。彼らは舞台裏では平静でないかもしれない(ウィリアム皇太子はBAFTAでそれをほのめかしたが、叔父アンドルーの名には触れなかった)。それでも、自分たちの意義が“公務を続けること”にかかっていると理解しているのである。

宮殿は簡潔な声明を発表

ノーフォーク州サンドリンガム・エステートの入口に停車する警察車両。 Gareth Fuller - PA Images / Getty Images

アンドルーをめぐる報道が広がる中、王室が完全に沈黙していたわけではない。逮捕発表から約2時間後、バッキンガム宮殿は声明を発表。時間にズレがあったのは事前に知らされていなかったことが理由と説明された。声明は国王個人のメッセージという形で発表され、「法の裁きに委ねるべきだ」と強調。王族であっても特別扱いはされないという姿勢がはっきりと示された。

アンドルー元王子が逮捕されるまで、エプスタイン関連文書の公開後の王室は過去よりやや踏み込んだ発言をする必要性を感じている様子だった。ケンジントン宮殿はウィリアム皇太子夫妻の「被害者に焦点を当て続けている」という初の声明を発表。バッキンガム宮殿も、アンドルー元王子の逮捕前の時点で「警察を支援する用意がある」と明言していた。

A2026年2月19日。公職不正行為の疑いで逮捕された後、警察署から車で連れ出されるアンドルー・マウントバッテン・ウィンザー。 MEGA / Getty Images

現在は警察による正式な捜査が進行中であり、司法手続きに影響を及ぼさないよう、英国では特定の情報を公にはできない。王室はその点を十分に認識しており、彼らの公的発言にも影響している。ただし、王室がより踏み込んだ長い説明を行うとは当初から考えにくかった。国民向けの説明を求める声もあるが、今のところ簡潔な声明にとどまっており、それが変わる兆しはない。

アンドルー元王子を公の場から排除

2023年5月6日、ロンドンのウェストミンスター寺院で行われたチャールズ国王の戴冠式に出席したアンドルー元王子。 Mark Cuthbert / Getty Images

昨年10月にすべての称号を剥奪されて以来、アンドルーは家族と公の場に姿を現していない。以前は私的行事には出席していたが、それもなくなった。王室公式サイトでの存在感もほとんど消えている。また世論を考慮し、乗馬に出ることも控えるよう伝えられたと報じられている(称号剥奪直後には、ウィンザーで乗馬する姿が撮影されていた)。

サンドリンガム邸内の彼の新居ウッドファームは国王が私費で賄っているとされる。家族にはアンドルーに対する「安全配慮義務」があると報じられているが、サンドリンガムに住まわせ、住居費を負担していることは、王室が今後の彼の動向をより把握しやすくする側面もあるだろう。

波紋の拡大に対する王室の静かな構えは功を奏するのか

Samir Hussein / Getty Images


昨年10月にアンドルー元王子から称号をすべて剥奪し、王室から完全に切り離すという国王の決断は、制度が受けるダメージを食い止めるには至っていないことは明らかだ。宮殿が長年どのようにアンドルーを扱ってきたのか、という問いが繰り返され、さらには王室制度そのものや、王室への伝統的な尊敬・服従の文化についても議論が広がっている。

王室にとって最大の課題の一つは、騒動が収束する気配を見せず、多くの要素が絡み合っていることだ。公務中の不正行為に関する具体的な警察捜査は、どのくらいの期間を要するか、どのような展開を見せるかも不透明である(アンドルーは捜査対象だが、まだ起訴はされていない)。さらに英国各地の警察が他の疑惑についても検証を進めている。そして刑事責任の有無とは別に、アンドルー元王子のエプスタインとの関係をめぐる広範な検証が、政治の場や世界のメディアでたえず繰り広げられている。議会では、2001年にさかのぼってアンドルーの英国貿易特使任命が議論され、関連文書の公開を求める声や、王室への監視や批判を制限する慣習への疑問も出ている。また、今回の逮捕は故バージニア・ジュフリーの申し立てとは無関係だが、和解金として報じられた1,200万ポンドの原資についても新たな疑問が投げかけられている。

こうした状況について、王室は簡潔な声明を除けば沈黙を保ち、通常どおり公務とSNS発信を続けている。逮捕前に実施された世論調査では、その対応に対する英国民の反応は賛否が分かれたが、ほかの王族個人の人気は引き続き安定している点は、王室にとって一定の安心材料となっている。嵐のただ中でも歩みを止めないという選択が、信頼回復への布石となるのか、それとも新たな波紋を広げるのか。その行方を、世界は固唾をのんで見守っている。

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