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「成功しなきゃ」の呪いをほどく──勅使川原真衣が語る、夢のかなえ方

  • 2026.2.27
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現代社会を鋭い視点で読み解く勅使川原真衣さんは、今、注目を集めるオピニオンリーダーのひとり。なかでも一貫して問い直してきたのが、現代に深く根付いた「能力主義」だ。出世やお金を稼ぐこと、能力を高めること。一般的に語られる「成功」に対して、勅使川原さんは距離を少し置く。「成功者」は増えないようにできている。世の成功哲学は、限られた人しか満足に生きられない社会を正当化していないか?と、問う。

「頑張れば成功できる」「能力を高めれば幸せになれる」という一見前向きな言葉が、いつの間にか「成功できないのは努力不足」「能力がない人には価値がない」という自己責任論へとすり替わってしまう危うさ。能力主義に縛られなくていい─そんな温かな励ましが、勅使川原さんの言葉の奥に感じられる。

勅使川原真衣さん/組織開発専門家 東京大学大学院教育学研究科修了。外資コンサルティングファーム勤務を経て、組織開発コンサルタントとして独立。文化放送 武田砂鉄ラジオマガジン水曜パートナーとしても発信中。新著に『職場の違和感』(ダイヤモンド社)など。 JUNYA INAGAKI

「成功を目指すこと」そのものが、知らず知らずのうちに多くの人を縛る“呪い”になってはいないか。そう問いかける勅使川原さんにとって、「夢をかなえる」とは何を意味するのだろう? それは肩書や社会的評価を積み上げること、ではないはず。「難しいですね……。でもまずは、生きるうえで“望ましい姿”が全てではない、と伝えたいです」と勅使川原さん。

“望ましい人間”から距離を置き、自分んもまま生きる。それが夢をかなえることだと思います

「いつもご機嫌で、自己肯定感が高く、セルフケアもできている。人は誰しも、愛されたい、好かれたいと思うものです。だから“望ましい人間”でいようとするのは自然なこと。でも、そんな完璧な人間、本当に存在するのでしょうか。追いかける前に一度、立ち止まって考えてもいい。私がその“キラキラ”の型にはまる必要はある? 勝ち筋がほかにあるのでは?と、少し距離を取って俯瞰してみる。そうした視点を持つことが、結果的に自分を生きることにつながる気がします。それが私にとって“私の”夢をかなえるということです」

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では、「自分」をどうやって見つければいいのだろうか。勅使川原さんは、生成AIに答えを求めたり、「自分の中にあるはず」と、内面ばかりを掘り下げることではないと思う、と話す。「“自分”は固定されたものではなく、誰と、何を、どうするかによって変わるもの。他者との関係性の中で見えてくるものだから、自分そのものを見つめるというよりも、他者と何かをしたときの“反応”を観察することが大事」。たとえば、この人と仕事をしていると楽しい、この人とは自然に話せる、といった感覚に目を向けていくことだと続ける。「無理をしなくていい人間関係や環境を見つけていくと、楽だし生きやすくなる。夢をかなえるとは、環境調整でもあると思います」

未来は今の積み重ねとして生まれるもの。自分の今をモニターすることが大切

「夢をかなえる」という言葉から、未来を思い浮かべる人は多いだろう。けれど勅使川原さんは、むしろ大切なのは、“今”にどれだけ意識を向けられているかだと語る。「誰にも読めない未来を想像して、大きな夢を掲げる必要はないと思っています。それよりも、今、自分は何をしているのか。この環境の中で、他者とどう関わり、どんな影響を与えながら調整しているのか。そのことに真剣であることのほうが大切。未来は単独で存在するものではなく、必ず“今”の積み重ねとして生まれるものだからです。夢という言葉には、嫌なものを見ないというような意味合いもある気がします。でも、自分の望ましい生き方をかなえるには、現実を冷静にモニターすることが必要だと考えます」

大切なのは、目の前の“今”から逃げず、現実と向き合うこと。わかっていても足踏みばかりで前に進めず、もどかしさを感じることもあるだろう。そんなときはどうすればいい?

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「一般的には、直線的に成長するモデルがよしとされています。でもそうではなく、いろいろと試行錯誤して質的に熟成する成熟を目指せばいいのではないでしょうか。成熟とは、らせん階段のようなもの。横から見たら同じ場所を回っているように、上から見たら堂々巡りのように見えるかもしれません。でも立体で見れば、確実に上がっています」

世の中の当たり前やペースに惑わされ、私たちはつい無意識に自分をせかしてしまいがち。でも、焦って直線を駆け上がる必要はない。じっくりと成熟していく。そんな夢のかなえ方があってもいいのかもしれない。

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