1. トップ
  2. 「自分も始めなければ」周囲の影響でNISAを始めた人の“末路”…→その後、初心者を襲う“想定外の事態”【お金のプロが解説】

「自分も始めなければ」周囲の影響でNISAを始めた人の“末路”…→その後、初心者を襲う“想定外の事態”【お金のプロが解説】

  • 2026.3.13
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

最近、株価の好調や制度の拡充を背景にNISAを始める人が増えています。しかしその一方で、「投資の積立額が負担で、毎日の生活が苦しい……」と悩む「NISA貧乏」に陥るケースが急増しているのをご存じでしょうか。

将来への備えは大切ですが、なぜ良かれと思って始めた投資が、日々の暮らしを圧迫してしまう事態を招くのでしょうか。また、私たちが陥りがちな「危ない投資行動」とは一体どんなものなのでしょうか。

今回は、NISA貧乏が起こる背景や初心者がやりがちなNG行動、そして無理なく資産形成を続けるための具体的な対策について、FP1級・社会保険労務士の柴田充輝さんに詳しく解説していただきました。

なぜ起こる?「NISA貧乏」に陥ってしまう心理と背景

---将来のためにNISAを始めたはずなのに、毎月の生活が苦しくなってしまう「NISA貧乏」が問題になっています。なぜこのような状況に陥ってしまうのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「ここ最近は株価が好調なので、投資を通じて多くの方が利益を得られていると思います。このような状況では、「どんどん投資に回そう!」という心理になるのも理解できます。

「NISA貧乏」が起こる背景として特に多いのは、「投資=必ず資産が増える」という期待を前提に、家計の余力を十分に確認しないまま積立を始めてしまうケースです。本来、投資に回すお金は生活費や緊急資金を確保したうえでの「余裕資金」であるべきです。しかし、先に積立額を決めてしまうと、日常の支出が圧迫され、家計のバランスが崩れてしまいます。

また、ここ数年はNISAの拡充もあり「周囲がやっているから自分も始めなければ」という焦りも影響しているかもしれません。SNSやメディアでは、NISAを使った成功例が目立つため、「今すぐ始めないと損をする」というFOMO(取り残される不安)が生まれやすいのです。その結果、本来は家計の状況を確認してから判断すべきところを、勢いで投資を始めてしまう人も少なくありません。

さらに、積立投資は長期で成果が出る仕組みですが、短期的な値動きに感情が左右される点も心理的な落とし穴です。価格が下がると不安になり、生活費に余裕がない人ほど精神的な負担が大きくなります。このように、「家計の余裕を確認せずに投資額を決めること」と「周囲の情報に影響されやすい心理」が重なることで、NISAを始めたはずが生活を圧迫する状況につながるのです。」

初心者がやりがち!NISA貧乏を招く「2つのNG行動」

---NISA貧乏になってしまう人が、無意識のうちにやってしまっている「陥りやすい行動」や「NG行動」があれば教えてください。

柴田 充輝さん:

「NISA貧乏に陥りやすい行動として代表的なのが、「生活費を削ってまで積立額を増やすこと」と「人気銘柄への集中投資」です。

どちらも初心者が陥りやすい行動ですが、資産形成を長く続けるうえでは大きなリスクになります。

まず、生活費を削って積立額を増やす方法は、家計の持続性という観点で問題があります。投資は長期間続けることで効果が出やすい仕組みですが、生活が苦しくなるほどの積立をしてしまうと、途中で資金が必要になり、価格が下がっているタイミングで売却せざるを得ない可能性があります。これは積立投資のメリットを自ら失う行動です。

また、味気ない生活を送ることで、日常の満足度が下がってしまうかもしれません。極限まで食費を切り詰めたり、娯楽のための支出をしなかったりする生活は、何が楽しいのかわかりません。

他方、SNSで話題の銘柄に集中投資する行動も注意が必要です。SNSでは短期間で値上がりした銘柄が注目されやすく、情報の多くは結果論で語られています。そのため、話題になった時点ではすでに価格が高くなっているケースも少なくありません。さらに、特定の銘柄に資金を集中させると、価格が下落したときの影響が大きくなります。

資産形成では「分散」と「継続」が基本です。短期的な話題や他人の成功例に影響されて投資判断をすると、リスクが偏りやすくなります。NISAは非課税というメリットがありますが、それ自体がリスクを小さくする制度ではありません。制度のメリットだけに目を向けるのではなく、家計の安定と投資の基本を意識することが重要です。」

投資と今の暮らしを両立する「バランス感覚」の作り方

---「NISA貧乏」を防ぎ、今の生活を楽しみながら長く資産形成を続けるためには、具体的にどのようなことから始めればよいでしょうか?

柴田 充輝さん:

「「NISA貧乏」を防ぐために、まず見直したいのは「積立額が今の暮らしに合っているか」という点です。最近は、特に若い世代を中心に、生活をかなり切り詰めてでも投資にお金を回す人が増えているように感じます。

若いうちから資産形成を始めること自体は、とても前向きで素晴らしいことです。ただ、そのために日々の楽しみまで我慢して、毎日の暮らしが味気ないものになってしまうなら、少し立ち止まってバランスを考えてみてもよいでしょう。

将来に備えることは大切ですが、今を楽しむことも同じくらい大切です。人生がいつまで続くかは、誰にも分かりません。老後のためにお金を準備しておくことは安心につながりますが、その前に「もっと若いうちに使っておけばよかった」と思う可能性もあります。だからこそ、資産形成だけに意識を向けるのではなく、今の自分にとって必要な楽しみや経験にも、きちんとお金を使う視点を持っておきたいところです。

たとえば『DIE WITH ZERO』でも語られているように、お金は若いうちの方が価値を引き出しやすい面があります。若いうちにしかできない経験や、その年代だからこそ得られる体験価値を無視すると、資産は増えても人生の一番楽しめる時期を味気なく過ごしてしまいかねません。

明日からできる実践としては、積立額を一度見直し、「この金額なら娯楽費や交際費を無理に削らず続けられるか」を確認してください。投資を続けるためには、家計だけでなく気持ちにも余白が必要です。未来に備えながら、今の暮らしもちゃんと大切にするバランス感覚こそが、幸福度を保ちつつNISAを長く続けるコツです。」

家計と心に「余白」を。今を楽しみながら未来に備えよう

NISAは非課税という大きなメリットがあるものの、焦って無理な積立をしてしまっては本末転倒です。「将来の備え」と「今を楽しむこと」のどちらか一方に偏るのではなく、両方のバランスを取ることが何より大切だと分かりました。

「日々の暮らしが味気ない」と感じているなら、それは投資額を見直すサインかもしれません。まずは明日、自分の積立額が今の生活に無理のない範囲に収まっているか、一度立ち止まって確認してみてはいかがでしょうか。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。