1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 「老後のために」NISAで“2,900万”を積み立て→定年後、お金を下ろしに銀行へ向かうが…60代男性を襲った“想定外の落とし穴”

「老後のために」NISAで“2,900万”を積み立て→定年後、お金を下ろしに銀行へ向かうが…60代男性を襲った“想定外の落とし穴”

  • 2026.6.12
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関勤務のおがわ163です。20年間、金融機関の窓口で資産運用や家計相談に携わってきた経験をもとに、お金にまつわるリアルなエピソードをお届けしています。

「老後のためにNISAでコツコツ積み立ててきたけれど、いざ使おうとしたらどうすればいいかわからない」そんな声を窓口でよく耳にするようになりました。貯める計画は立てていても、使う計画(出口戦略)を考えていなかった方が意外と多いのです。

今回は、定年退職を機にNISAの資産を取り崩そうとした60代男性Bさんが直面した、老後資金の出口戦略の盲点をご紹介します。

「NISAのお金、どうやって使えばいいんですか?」

2014年のNISA制度開始と同時に積み立てを始めたBさん。毎年のNISA投資枠の半分を活用しながら、日経225インデックスファンドとS&P500インデックスファンドに半分ずつ投資を続けてきました。

コツコツと積み立てた投資元本は約1,140万円。長年の市場の成長のおかげで、2026年現在の評価額は約2,964万円にまで成長していました。

「これだけ増えたんだから、老後は安心だ」と思っていたBさん。定年退職を迎え、いよいよこの資産を使おうと窓口を訪れました。

「NISAの資産を取り崩して生活費に使いたいんですが、どうすればいいですか?」

しかし、「毎月いくら取り崩す予定ですか?売却する順番や銘柄は決めていますか?」という窓口担当者からの質問に、Bさんは思わず言葉に詰まってしまいました。

「貯めることしか考えていなかった…」

「売却する順番…?考えたことがなかったです」とBさん。「毎月必要な分だけ売ればいいと思っていました」。

実はNISAの資産を取り崩す際には、いくつかの重要な判断が必要になります。
まずどの銘柄をいくら売るかという問題があります。Bさんのように日経225とS&P500の2銘柄を持っている場合、どちらを先に売るか、バランスを保ちながら売るかによって、その後の運用効率が大きく変わります。

次に取り崩しペースの問題があります。一度に大きく売却すると、その後の市場回復の恩恵を受けられなくなる可能性があります。毎月一定額を売却する「定額取り崩し」や、残高の一定割合を売却する「定率取り崩し」など、自分のライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。最近では、多くの金融機関で「定期売却サービス」が提供されており、一度設定すれば自動で毎月取り崩すことも可能になっています。

さらに市場の下落局面での対応も考えておく必要があります。生活費が必要なタイミングで市場が大きく下落していた場合、安値で売却することになりかねません。現金や預貯金と組み合わせながら、焦って売らなくて済む「生活防衛資金」を別途確保しておくことも重要です。

「貯める計画はしっかり立てていたのに、使う計画を全く考えていなかった」とBさん。「もっと早く相談しておけばよかった」と肩を落としていました。

老後資金は「貯める」と「使う」の両方を計画しておくことが大切

では、同じ状況を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。

まず退職が近づいてきたら、自分が毎月いくら年金を受け取れるのかを確認しましょう。年金額はねんきんネット(日本年金機構の公式サービス)で確認することができます。

次に毎月の生活費を把握した上で、年金だけでは足りない不足額を計算します。例えば毎月の生活費が25万円で、年金受給額が18万円であれば、毎月7万円が不足する計算になります。この不足額に応じて、NISAの資産を毎月いくら取り崩すかの目安が決まってきます。

NISAで老後資金を積み立てている方は、現役のうちから以下の点を考えておくことをおすすめします。

  • ねんきんネットで自分の年金受給額を確認し、毎月の不足額を把握しておく
  • 不足額をもとに、毎月の取り崩し額の目安を計算しておく
  • 取り崩す順番や方法(定額・定率など)をあらかじめ決めておく
  • 市場が下落した時に備えて、1〜2年分の生活費は現金で手元に置いておく

また退職前に一度、以下のような専門家に相談して出口戦略を立てておくことをおすすめします。

  • FP(ファイナンシャルプランナー):家計全体のお金の流れを整理し、老後の収支計画や資産の取り崩し方など、お金に関する総合的なアドバイスをしてくれる専門家です。
  • 社会保険労務士:年金や健康保険など社会保険に関する専門家です。自分がいくら年金を受け取れるか、受給開始時期をいつにすべきかなど、年金に関する詳しい相談ができます。
  • 金融機関の窓口:NISAの取り崩し方法や投資信託の売却タイミングなど、資産運用に関する具体的な相談ができます。

「老後2,000万円問題」という言葉が話題になりましたが、大切なのは貯めるだけでなく、どう使うかまで計画しておくことです。NISAの出口戦略や年金・生活費の見直しについて不安を感じる方は、ぜひ早めに専門家や窓口へご相談ください。


参考:
NISAを知る(金融庁)
ねんきんネット(日本年金機構)

執筆・監修:おがわ163
金融機関勤務(勤続20年)。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。窓口業務・資産運用相談の現場経験をもとに、生活に役立つお金の知識をわかりやすくお届けしています。

の記事をもっとみる