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40代で突然入院することに。「医療費はそこまで高くならない」はずが…→その後、家計を襲う“想定外の誤算”【お金のプロが解説】

  • 2026.3.13
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

40代になり、健康への不安を少しずつ感じ始めている方も多いのではないでしょうか。万が一、突然入院することになった場合、今の貯蓄や保険で本当に足りるのか、漠然とした不安を抱えていませんか?

「日本には高額療養費制度があるから、医療費はそこまで高くならないはず」と考えているなら、少し注意が必要です。実は、入院によって家計が苦しくなる原因は、医療費そのものだけではありません。

なぜ高額療養費制度だけでは安心できないのか、そして40代が今すぐ見直すべきポイントはどこにあるのか。証券会社IFAであり、資産形成のプロフェッショナルである石坂貴史さんに詳しく解説していただきました。

家計を圧迫するのは「医療費」だけではない?

---40代で突然入院した場合、高額療養費制度があっても家計が苦しくなるケースがあるというのは本当でしょうか?具体的に何が負担になるのでしょうか。

石坂貴史さん:

「40代で突然入院することになった場合、家計が苦しくなる理由は「医療費そのもの」だけではありません。実際には、収入が減ることと生活費がこれまで通りかかり続けることが重なり、家計のバランスが崩れるケースが多く見られます。

日本には公的医療保険があるため、医療費の自己負担は原則3割です。さらに医療費が一定額を超えた場合は、高額療養費制度によって自己負担の上限が設けられています。そのため「医療費はそこまで高くならない」と考えている方も少なくありません。しかし実際の家計への影響は、医療費以外の部分で大きくなりやすいといえます。

まず大きいのが収入の減少です。会社員の場合、病気やけがで働けなくなると健康保険から傷病手当金が支給されることがあります。ただし、支給額は給与のおおよそ3分の2程度で、これまでの収入より少なくなるのが一般的です。また支給には条件があり、すぐに受け取れるとは限りません。自営業の場合は、この制度自体が利用できないこともあります。そのため入院や療養が長引くと、生活費が不足する可能性があります。

さらに、公的制度の対象にならない支出もあります。たとえば、差額ベッド代、入院中の食事代、交通費、日用品などです。

差額ベッド代は、患者の希望で個室などを利用した場合に発生し、1日数千円から数万円になることもあります。仮に1日8,000円の部屋に10日間入院すると、それだけで約8万円の自己負担になります。

また、入院中の食事代も1食あたり一定額の自己負担があります。さらに、家族が病院へ通う交通費や、付き添いのための出費なども発生します。こうした費用は公的制度では十分にカバーされないため、重なると家計への影響は小さくありません。

もう一つ見落とされやすいのが固定費です。住宅ローンや家賃、教育費、保険料などは、入院しても基本的に減りません。収入が減る一方で支出が大きく変わらないことが、家計を圧迫する原因になります。

また、公的制度を十分に理解していないことも影響します。高額療養費制度は自動で適用されると思われがちですが、場合によっては手続きが必要です。事前に限度額適用認定証を取得していないと、一時的に高額な支払いが必要になることもあります。」

「古い医療保険」を放置するリスクとは

---高額療養費制度があるからといって安心せず、備えを見直す必要があるのですね。特に40代が陥りがちな注意点はありますか?

石坂貴史さん:

「高額療養費制度があるため、医療費の上限は一定程度抑えられますが、それだけを理由に備えを見直さないことには注意点があります。特に多いのが、若い頃に加入した医療保険をそのまま放置しているケースです。

まず理解しておきたいのは、高額療養費制度は「保険診療」に対して適用される制度であるという点です。つまり、すべての医療費が対象になるわけではありません。差額ベッド代、入院中の食事代の自己負担分、先進医療、通院の交通費などは対象外、または制度では十分にカバーされません。

また、医療環境の変化も考える必要があります。以前は入院期間が長くなるケースが多く、入院日額を中心とした医療保険が主流でした。現在は、医療技術の進歩によって入院期間は短くなる傾向があります。その代わり、短期間で手術を受けて退院したり、その後は通院で治療を続けたりするケースが増えています。古い医療保険では、こうした治療に十分対応できない場合もあります。

さらに、医療保険の役割を誤解しているケースも見られます。医療保険は医療費をすべて補うためのものではなく、急な支出による家計の負担を和らげるためのものです。しかし「高額療養費制度があるから医療保険は必要ない」と考えると、制度対象外の支出や収入減への備えが不足する可能性があります。

また40代になると、健康状態によって、保険の見直しが難しくなることもあります。病気を経験した後では、新しい保険に加入できなかったり、条件が付いたりする場合があります。若い頃の契約内容を確認していないと、必要な保障が不足したままになる可能性があります。」

40代夫婦がまず取り組むべき「医療費への備え」

---それでは、40代の夫婦が万が一の事態に備えて、まず何から始めればよいのでしょうか?

石坂貴史さん:

「40代夫婦が医療費の備えとしてまず取り組みたいのは、「制度を知ること」と「家計にどれくらい余裕があるかを確認すること」です。いきなり保険を増やすのではなく、まず今ある制度と家計の状況を整理することが大切です。

最初に確認したいのが、高額療養費制度です。これは医療費が高額になった場合でも、1か月に支払う自己負担額に上限が設けられる制度です。その上限は年収によって決まっています。つまり、医療費がどれだけ高くなっても、実際に支払う金額には一定の目安があります。

たとえば、医療費が100万円かかった場合でも、年収によって異なりますが、自己負担は約9万円前後になるケースがあります。こうした目安を知っておくことで、「もし入院したらどのくらいのお金が必要か」を具体的に考えることができます。医療費の不安は金額が見えないことで大きくなりやすいため、まず目安を知ることが重要です。

また、高額療養費制度はあとから払い戻しになるケースも多いため、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いを上限額までに抑えやすくなります。

次に確認したいのが、入院などで働けなくなったときの収入です。会社員の場合は、健康保険から傷病手当金が支給される可能性があります。これは病気やけがで仕事を休んだ場合、給与の一部を補う制度です。

たとえば、月収30万円の方の場合、支給額の目安は約20万円程度になります。これまでより収入が減るため、生活費がどの程度足りるのかを事前に確認しておきましょう。また会社によっては、休業中の補助制度や見舞金が用意されていることもあります。

生活費の備えも忘れてはいけません。医療費の準備というと保険を思い浮かべる方が多いですが、まず重要なのは手元の資金です。入院や療養で収入が減った場合でも、生活費を支払える資金があると、家計の不安は大きく減ります。

毎月の生活費が25万円の家庭であれば、3〜6か月分として75万〜150万円程度の資金が一つの目安になります。こうした資金があると、急な入院でも慌てずに対応できます。

そのうえで、現在加入している保険の内容をチェックしましょう。入院日額だけでなく、手術や通院の保障がどの程度あるのかを整理することが大切です。また、保険料が家計の負担になっていないかもあわせて見直します。

医療費の備えは、保険だけで考えるものではありません。まず公的制度を知り、生活費の備えを作り、そのうえで不足する部分を保険で補うという順番で考えることが大切です。この順番で準備を進めることで、無理のない形で医療費への備えを整えることができます。」

制度を知り、生活防衛資金を確保することが第一歩

いかがでしたでしょうか。高額療養費制度があるからといって、決して安心できるわけではないことがお分かりいただけたと思います。

差額ベッド代や食事代といった制度対象外の支出に加え、休業による収入減と変わらない固定費の支払いが重なることで、家計は一気に苦境に立たされてしまいます。だからこそ、まずは公的制度の仕組みを正しく理解し、3〜6か月分の生活費を手元に確保しておくことが重要です。

そのうえで、医療環境の変化に対応できていない「古い保険」を見直せば、無駄なく確実な備えが完成します。健康な今こそ、夫婦で家計と保険の状況を話し合ってみてはいかがでしょうか。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、日本証券アナリスト協会認定資産形成コンサルタント、AFP、NISA取引アドバイザー、マネーシップス代表運営。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。各種メディアにて毎朝金・プラチナ相場の解説を担当中。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポート。