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購入した株が“100万円→70万円”に下落「これ以上減る前に…」→焦って売却した人を襲う“想定外の悲劇”【お金のプロが解説】

  • 2026.3.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

株価が急落したとき、恐怖に駆られて「今すぐ売らなければ」と焦ってしまった経験はありませんか? 頭では「長期投資が大事」とわかっていても、いざ資産が減り始めると冷静さを保つのは難しいものです。

実はその行動、知識不足のせいではなく、人間が本来持っている「心理的なクセ」が原因かもしれません。

なぜ私たちは、損をするとわかっていても非合理な判断をしてしまうのでしょうか? そして、どうすればその心理的な罠を回避できるのでしょうか? 資産形成のプロであるFPの石坂貴史さんに、行動経済学(行動ファイナンス理論)の視点から、投資家の心理メカニズムと、暴落時でも慌てないための具体的な対策について解説していただきました。

知識不足ではない? 投資判断を狂わせる「心のクセ」とは

---暴落時に冷静でいられないのは、やはり勉強不足だからでしょうか? なぜ多くの人が合理的な判断ができず、失敗してしまうのですか?

石坂貴史さん:

「FPとして資産形成の相談を受ける際に、行動経済学(行動ファイナンス理論)の考え方も参考にしながらサポートしています。それは、投資で起きる多くの失敗は、知識不足というより、人の心理が判断に影響することが原因になるケースが多いためです。株価の暴落時に慌てて売却してしまう行動も、その典型例の一つです。

それを前提に、まず大きいのは、『損をしたくない』という気持ちです。行動経済学では、人は利益の喜びよりも損失の痛みを強く感じる傾向があるとされています。これは『損失回避バイアス』と呼ばれる心理です。

たとえば、100万円で購入した投資信託が80万円になったとします。このとき多くの人は『あと10万円下がったらどうしよう』と考えます。本来は長期投資の途中の値動きでも、数字が減ると不安が強くなるため、『これ以上減る前に売ろう』と判断してしまうのです。

次に多いのが、『この下落はまだ続くのではないか』と感じてしまう心理です。株価が数日や数週間続けて下落すると、『この流れは止まらないのではないか』と思いやすくなります。行動経済学では、最近の出来事を強く意識して判断してしまう傾向があり、これを『直近性バイアス』といいます。

体調が数日悪いと『しばらく調子が悪いままかもしれない』と感じることがあります。しかし実際には、急に回復することもあります。株式市場でも同じで、下落が続いたあとに回復することは珍しくありません。

さらに、暴落時にはニュースやSNSで不安な情報が増えます。『市場が危ない』『まだ下がる』という情報を多く見ると、不安が大きくなる人は多いはずです。その結果、『みんなが売っているなら自分も売った方がいい』と考えてしまうことがあります。これは群集心理の影響です。

このように、暴落時の売却は合理的な投資判断というよりも、損失回避バイアスや直近性バイアス、群集心理といった人の自然な心理の影響を受けて起こることが多いと考えられます。」

多くの人が陥る「パニック売り」の共通点

---具体的に、暴落時に売ってしまう人にはどのような特徴があるのでしょうか? 現場で相談を受けていて感じる「共通のパターン」はありますか?

石坂貴史さん:

「暴落時に慌てて売却してしまう投資家には、さまざまな共通する心理の特徴があります。FPとして相談を受ける中でも、同じような行動パターンが繰り返し見られます。

まず多いのは、『損失をすぐに止めたい』という心理です。資産が減っている状態を見ると、多くの人は冷静な判断よりも『これ以上減るのを止めたい』という気持ちが強くなります。これが行動経済学でいう、先ほどの『損失回避バイアス』です。

たとえば、100万円で買った株が70万円まで下がるとします。本来は企業の将来性や長期の見通しをもとに判断するべきですが、『30万円も減った』という事実が強く意識されるため、『もうこれ以上減る前に売ろう』と判断してしまう人が多くなります。

次に見られるのが、周囲の行動に影響されることです。株価が急落すると、ニュースやSNSでは悲観的な話が増えます。また『多くの人が売っている』という状況を見ると、『自分も売らないと危ないのではないか』と感じてしまうことがあります。これは群集心理や同調バイアスと呼ばれています。

さらに、短い期間の値動きを重視しすぎることもあります。株式市場は短期では大きく上下しますが、長期では経済の成長に合わせて拡大してきました。しかし投資経験が少ないと、数週間の下落でも『このまま長く下がるのではないか』と感じてしまうことがあります。ここにも、直近性バイアスが影響しているといえます。」

暴落でも動じない! 今日からできる「心の準備」

---心理的な罠にハマらないためにはどうすればよいですか? パニックにならず、長期的な資産形成を続けるための具体的な対策を教えてください。

石坂貴史さん:

「株価の暴落時に慌てて売却しないためには、相場が落ち着いているときから準備をしておくことが重要です。人は強い不安や恐怖を感じると冷静な判断が難しくなるため、あらかじめ投資の考え方や仕組みを決めておくことが大切になります。

【今日からできる4つのポイント】
・投資の目的と期間を決めておく
・資産を分けて持つことで値動きを抑える
・毎月一定額を投資する方法を活用する
・下落は長期投資の途中で起こるものと理解する

まず大切なのは、『投資の目的』と『投資期間』を決めておきましょう。老後資金を作るための投資であれば、20年や30年という長い期間で考えることになります。その間には株価の大きな下落が、何度も起こるかもしれません。

実際に過去の株式市場でも、10%〜30%ほどの下落は決して珍しくないです。しかし多くの場合、その後に回復しています。長期の目的を意識しておくことで、短期の値動きに振り回されにくくなります。

次に大切なのが、資産を分けて持つことです。たとえば、資産が300万円ある場合、すべてを株式に投資するのではなく、株式200万円、債券50万円、預金50万円のように分ける方法があります。このようにすることで株が下落しても、資産全体の変動は小さくなります。

また、毎月一定額を投資する方法も、初心者の方には取り入れやすい方法です。仮に毎月3万円ずつ投資するとしましょう。この方法では、価格が高いときには少ない数量を買い、価格が下がったときには同じ3万円でも多くの数量を買うことになります。

もう少し話すと、価格が1万円のときは3口購入できますが、価格が5,000円に下がれば6口購入できます。このように価格が下がったときほど多く購入できるため、長い期間で見ると平均の購入価格を抑えやすくなります。

そのため、価格が下がったときも『資産が減った』という見方だけではなく、『同じ金額で多く買える時期』と考えることができるようになります。結果として、下落局面でも過度に不安を感じにくくなります。

このように、投資のルールを事前に決めておくことで、暴落時でも感情に左右されにくくなります。」

人間の「本能」を知り、事前にルールを決めることが資産を守る鍵

投資で失敗してしまうのは、決して能力の問題ではなく、誰にでも備わっている「心理バイアス」が大きく影響していることが分かりました。損失を恐れる気持ちや、周囲に流されてしまう群集心理は、人間としての自然な反応です。

だからこそ、相場が落ち着いている今のうちに「投資の目的」や「ルール」を明確にしておくことが重要です。下落時を「安く買えるチャンス」と捉え直す視点や、資産を分散して変動を抑える仕組みを持つことで、感情に振り回されず、長期的な資産形成を成功させることができるでしょう。


監修者:石坂貴史

証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の分野が専門。現在、各種メディアにて金相場の動向解説を担当中。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。