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60歳で定年退職「年金だけだと月5万円不足する」と退職金500万円で“株投資”…→数年後、60代男性を襲った“悲惨な結末”

  • 2026.3.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談や金融記事の制作などを行っている。柴田です。

今回は、65歳男性・Aさん(仮名)の実体験をご紹介。

60歳で定年退職を迎えたAさんは、退職金の一部である500万円を「高配当株投資」に回しました。目当ては毎月の配当金です。

年金だけでは月5万円ほど不足する生活費を、配当金で補う計画でした。利回り6〜8%の銘柄を5つ選び、最初の数年は年間で40万円近いの配当収入を得られ、計画通りに見えました。

しかし、今ではAさんの手元に残る配当金は年間12万円にまで激減し、保有株の時価は購入価格の半値以下になっていました。

なぜ「高利回り」は罠になるのか

高配当株投資は人気の投資手法の一つです。私も実際に行っており、安定した配当収入を得られることに大変満足しています。

ただし、株式投資である以上、リスクを伴います。株式は金融商品の中でも「ハイリスク・ハイリターン」である点は、忘れてはいけません。

配当利回りは「年間配当金÷株価×100」で計算されます。つまり株価が下がれば、配当金が変わらなくても利回りは自動的に上昇します。

Aさんが「利回り7%で割安だ」と判断した銘柄の多くは、業績悪化によって株価が急落した結果として高利回りになっていた銘柄でした。これを「見かけ上の高利回り(イールドトラップ)」と呼びます。

目安として、利回り5%超は「なぜ高いのか」を必ず疑うべきサインです。 特に配当性向(配当÷純利益)が80%を超えている銘柄は、利益が少し下振れするだけで減配に直結する危険信号です。配当金の原資は企業の利益である以上、業績が悪化した企業が高い配当を維持し続けることはできません。

「減配→株価下落」の負のスパイラル

Aさんの場合、保有5銘柄のうち購入から3年目で次のような変化が起きました。

  • 2銘柄が減配(配当を半分以下に削減)
  • 1銘柄が無配転落(配当をゼロに)
  • 株価はすべての銘柄で下落し、平均して購入時の約45~50%の水準に

配当収入は半分以下になり、しかも株を売れば多額の損失が確定する状況に追い込まれました。このように、高配当株投資では減配と株価下落というダブルパンチを受けるパターンは珍しくありません。

業績が悪化した企業は減配を発表し、それが「将来性への不信」として受け取られてさらに株価が下落します。配当目当てで買った投資家が売りに回ることで、下落に拍車がかかります。高配当株の個別銘柄集中投資は、この負のスパイラルに巻き込まれやすい構造を持っています。

高配当投資の「正しいやり方」

高配当株投資において、失敗を避けるポイントは大きく3つあります。

①個別株への集中投資を避ける

高配当株投資は企業選定に手間がかかるうえに、タイミングを狙う必要があります。手間と労力がかかる点は否めません。

できれば30銘柄以上に分散投資するか、あるいは手間をかけたくない場合は高配当ETF(例:国内外の高配当株に分散投資する上場投資信託)を活用しましょう。これにより、1銘柄の減配が収入全体に与えるダメージを大幅に抑えられます。

②財務の健全性を確認する

配当利回りだけでなく、配当性向・自己資本比率・営業キャッシュフローの推移を確認しましょう。あわせて、過去10年程度の配当実績も重要なチェックポイントです。減配や無配の履歴が多い銘柄は、今後も同様のリスクを抱えている可能性が高いといえます。

これらは決算資料や投資情報サイトで調べられますが、正確な判断には相応の知識と時間が必要です。「利回りが高いから良い銘柄」と安易に判断しないことが大切です。

③配当金に「生活費の全額」を依存しない

減配リスクをゼロにすることはできません。配当はあくまで「補助的な収入」と位置づけ、生活の土台を年金や預貯金に置く設計が安心です。

まとめ

高配当株投資は「何もしなくてもお金が入ってくる」ように見えて、実際には企業の業績・財務状況を継続的にチェックし続ける手間とリスクが伴います。利回りの高さは魅力的に映りますが、それが「株価下落の結果」である場合、配当収入よりも元本の損失が大きくなることは珍しくありません。

分散投資や無理のない設計で取り組めば、高配当投資は有効な資産運用の選択肢になり得ます。しかし、退職金や老後資金を一度に投じる前に、「この利回りはなぜ高いのか」を冷静に分析しましょう。この手間を惜しむ場合、そもそも高配当株投資は向いていないでしょう。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。