1. トップ
  2. 定年後に“再雇用”を選択→「年金が減った」額面を見て絶句…お金のプロが語る、一部が支給停止される“意外な落とし穴”

定年後に“再雇用”を選択→「年金が減った」額面を見て絶句…お金のプロが語る、一部が支給停止される“意外な落とし穴”

  • 2026.3.5
undefined
出典元:phootAC(※画像はイメージです)

セカンドキャリアを充実させたい、生活費にゆとりが欲しいといった理由で、定年後も働き続ける方が増えています。しかし、働きながら年金を受け取ろうとすると、「思ったより年金が減っていた」「これでは働き損ではないか?」と感じるケースは少なくありません。

これは、「在職老齢年金」という制度によって、働き方によっては年金の一部が支給停止されるためです。では、なぜ年金が減らされてしまうのでしょうか?どうすれば、年金カットを最小限に抑えながら、賢く働き続けることができるのでしょうか?

今回は、ファイナンシャル・プランナーの柴田充輝さんに、在職老齢年金の基本的な仕組みから、陥りがちな誤解、そして「働き損」を防ぐための具体的な対策まで、専門家の視点から詳しく解説していただきました。この記事を読めば、あなたのセカンドキャリア設計がより明確になるはずです。

「働き損」はなぜ起こる?在職老齢年金の仕組みと目的

---在職老齢年金は、なぜ年金が調整されるのでしょうか?制度の目的と、具体的な計算方法について教えてください。

柴田 充輝さん:

「在職老齢年金で年金が調整される理由は、働いて賃金を得られる人と働けない人の間で年金の支給水準をならし、制度全体の公平性を保つためです。要するに「現役並みに稼げるなら、年金は一部お休みしてね」という考え方です。

また、年金財政への過度な負担を避けるため、という背景もあります。

計算の基準は「手取り」ではなく、社会保険料や税金を引く前の金額で判定されます。具体的には、老齢厚生年金の月額(基本月額)と、給与の目安となる総報酬月額相当額(「標準報酬月額+直近1年の賞与÷12」)を足し、これが一定額(2025年度は月額51万円、2026年度は月額65万円)を超えると調整が入ります。

調整に関しては、超えた分がそのまま年金カットされるのではなく、超過分の1/2が支給停止になる点がポイントです。例えば合計が60万円なら、2025年度の基準で計算すると超過分の「9万円×1/2=4.5万円」が停止されます。賞与がある人は平均額が上がりやすく、月給が控えめでも基準額を超えることがあるので、必ず賞与込みで計算しましょう。

なお、調整の対象は老齢厚生年金で、老齢基礎年金(国民年金部分)は在職老齢年金の対象外です。また、厚生年金の被保険者が在職老齢年金の対象になるので、社会保険に加入せずに働いている方も関係ありません。」

「まさか」を防ぐ!年金カットで後悔しないための注意点

---在職老齢年金で「思ったより年金が減った」と感じるケースは少なくないと聞きます。どんな勘違いが多いのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「在職老齢年金で「思ったより年金が減った」と感じるケースとして、総報酬月額相当額の計算の勘違いが挙げられます。よくあるミスが、月給だけで判断してボーナスを忘れること。

在職老齢年金制度は賞与も平均して月割り換算するため、年2回の賞与があると合計額が一気に跳ね上がる可能性があります。定年後再雇用や嘱託でも、賞与を受け取る際には注意が必要です。

また、実際の相談者で「計算のベースを手取りで考えていた」と勘違いしている方もいました。在職老齢年金の支給停止の判定は、手取りではなく「標準報酬月額」で行うため、間違えないように注意しましょう。

標準報酬月額は等級ごとに数字が丸められるため、実際の額面給与とは異なります。たとえば、額面給与が25万~26万9,999円の場合、標準報酬月額は「26万円」です。

残業・繁忙期の一時的な収入増加を見落とすと、「自分が思っていたよりも標準報酬月額が高かった」という事態になりかねません。その結果、在職老齢年金による年金カットが起こり得るため、注意しましょう。

給与体系や諸手当などをきちんと確認しておかないと、このようなミスが起こり得ます。「働き損」にならないためにも、計算方法も把握しておきましょう。」

年金を満額に?総収入を最大化?あなたに合う賢い働き方

---年金カットを最小限に抑えたり、働き損を防いだりするためには、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「最初にチェックすべきポイントは、自分の老齢厚生年金の月額(基本月額)を正確に知ることです。老齢厚生年金の額は、“年金決定通知書”や“ねんきん定期便”などで確認できます。

あわせて、働いたときの「総報酬月額相当額」の把握も必須です。月給(標準報酬月額ベース)に加え、賞与は年額を12で割って月平均に直し、残業見込みがあるならその分も上乗せして見積もります。労働条件を確認し、概算でよいので計算しておきましょう。

基本月額と総報酬月額相当額を合計し、その年の基準額をどれだけ超えるかを計算すれば、具体的にカットされる年金額を計算できます。

ここまでできれば、ご自身の中で「年金を満額に近づけたい」か「総収入(手取り)を最大化したい」かを考え、働き方を決めましょう。この点に関しては、一律の正解はなく個人の価値観次第です。

「働き損は嫌だから、年金を満額に近づけたい」という方は、基準を少し下回る程度に抑えて、就業調整を行います。年金カットを気にせず手取り額を増やすことを優先したい場合は、「気にせずに働けるだけ働く」というマインドで問題ありません。

なお、在職老齢年金の対象となるのは厚生年金の被保険者です。勤務先が応じてくれるのであれば、雇用関係ではなく業務委託契約に切り替える(つまり個人事業主になる)ことで、在職老齢年金の適用を回避することも可能です。

関係性が良好であれば、契約の切り替えが可能かどうか交渉してみる余地はあります。勤務先としても、業務委託契約に切り替えれば、会社負担分の社会保険料を回避できるメリットがあるため、その点を伝えるのも効果的です。ただし、社会保険から抜けることで、健康保険の給付を受けられなくなったり、将来の厚生年金額を増やせなかったりするデメリットがある点には注意してください。」

在職老齢年金は「知れば得する」制度!賢く働いて豊かなセカンドキャリアを

働きながら年金を受け取る「在職老齢年金」制度は、その仕組みが複雑で誤解を生みやすい制度です。しかし、専門家の解説によって、その目的や計算方法、注意点を理解すれば、漠然とした「働き損」の不安を解消し、ご自身の価値観に合った賢い働き方を選ぶことができると分かりました。

ご自身の老齢厚生年金の月額や、総報酬月額相当額を正確に把握することから始め、どの程度年金がカットされるのかを具体的にシミュレーションしてみましょう。その上で、「年金を満額に近づけたい」のか「総収入を最大化したい」のか、ご自身の希望に応じて働き方を調整する、あるいは業務委託契約への切り替えを検討すると良いでしょう。

「知らなかった」で損をしないためにも、この制度への理解を深め、豊かなセカンドキャリアを築く一歩を踏み出しましょう。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士など。