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「年間2〜3万円の節税に」iDeCoで“掛金”を上限近くまで設定→数年後、年収500万円の会社員を襲った“思わぬ誤算”【お金のプロが解説】

  • 2026.3.5
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

「NISAやiDeCoは節税でお得」と聞いて始めたものの、「結局損をした」「このままで大丈夫?」と不安を感じる方は少なくありません。本来有利なはずの制度で、なぜ明暗が分かれるのでしょうか。

実は、運用で失敗する人には「共通の誤解」があるといいます。制度の表面的なお得さだけに目を奪われ、自身の状況に合わない選択をしてしまうことが、損失を招く大きな要因です。

今回は、数多くの相談実績を持つファイナンシャルプランナー・石坂貴史さんに、NISAやiDeCoで損をしないための「本当に大切な視点」を伺いました。

この記事を読めば、失敗のパターンを回避し、あなたの資産形成を盤石なものにするための具体的な道筋が見えてくるはずです。仕組みを正しく理解し、安心して将来の備えを進めるヒントを見つけてください。

NISAやiDeCoで「損した」という人は、何が原因なのでしょうか?

---NISAやiDeCoを始めたのに、かえって損をしてしまった、という声を聞くことがあります。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?

石坂貴史さん:

「NISAやiDeCoで損をしてしまう人に多いのは、『制度を使えば自動的に得をする』と考えてしまうことです。NISAやiDeCoは税金を軽くする仕組みであり、お金が増えることを約束する制度ではありません。この前提を十分に理解しないまま始めると、判断にずれが生じます。

私が相談を受けた中でも、『非課税だから安心だと思っていた』という声は少なくありません。

たとえば、手取り月28万円、貯金80万円の会社員の方が、毎月5万円を投資に回していました。しかし手元資金は生活費の約3か月分です。相場が下がり評価額が減少したとき、不安から売却してしまいました。本来は長期で続ける前提の商品でも、家計に余裕がなければ継続は難しくなります。制度そのものよりも、資金設計の問題です。

iDeCoでも同様です。年収500万円の方が、年間2〜3万円の節税になると知り上限近くまで掛金を設定しました。しかし数年後、住宅購入の頭金が必要になり、資金を引き出せないことに気づきました。原則60歳まで使えないという仕組みを深く理解していなかったのです。

『値下がりする可能性』を具体的な数字で、想定していないケースも多く見てきました。元の資金から30%下落したことがある商品でも、その下落を体感したことがなければ、実際に下がったときに動揺してしまいます。

制度はあくまで道具です。『家計に余裕があるか』『長期で続けられるか』『値動きを受け止められるか』を確認せずに始めることが、損につながる最大の要因です。」

税金がお得だからと始めたのに、なぜ失敗してしまうのでしょうか?

---NISAやiDeCoは「節税効果がある」「非課税でお得」とよく言われます。メリットばかりに目を向けてしまうと、どのような落とし穴があるのでしょうか?

石坂貴史さん:

「『お得だから』という理由だけでNISAやiDeCoを始めると、制度を使うこと自体が目的になってしまいがちです。本来は『何のために資産をつくるのか』が先にあり、その手段として制度を選ぶべきです。しかし『非課税だから』『枠を使わないともったいない』と考えると、商品選びや金額の決め方が十分でないまま進んでしまいます。

実際の相談でも、直近1年で大きく上昇していた海外株式型の商品に100万円を一括投資し、その後の下落で評価額が大きく減ったケースがありました。相場は上がるときもあれば下がるときもあります。100万円が一時的に80万円になることも、株式市場では珍しくありません。長期で持てば回復する可能性があっても、想定していなければ不安から売却してしまい、損失が確定します。

また、成長分野への投資そのものも悪いわけではありません。将来性があり、大きな成果につながる可能性があります。ただし、値動きが大きくなりやすい傾向があるため、資金を集中させすぎると下落時の影響も大きくなります。話題だからという理由だけで全額を投じてしまうと、思わぬ値下がりに耐えられない場合があります。

iDeCoでも同じで、節税効果に目が向きすぎると、手数料の高い商品を選んでしまうことがあります。年1%の差は小さく感じますが、20年続けば受取額に大きな差が生まれます。さらに受取時に税金がかかる可能性もあります。節税という一面だけを見ると、こうした点が見えにくくなります。

制度自体が良くても、『なぜやるのか』『どのくらいの値動きを受け入れられるのか』を整理しないまま始めると、下落時に冷静な判断が難しくなります。目的と資金配分を明確にしたうえで活用することが大切です。」

NISAやiDeCoで失敗しない!初心者が始める前に知るべき5つのポイント

---これからNISAやiDeCoを始めようと考えている人が、安心して制度を活用するために、まず何を意識すべきでしょうか?

石坂貴史さん:

「これからNISAやiDeCoを始める方に、まず確認してほしい5つのポイントをできるだけシンプルにまとめました。難しい知識よりも、この『土台』を守ることが大切です。

1.生活費の3〜6ヶ月分を必ず残す

最初に確認するのは、すぐ使える預金が十分にあるかどうかです。毎月20万円で生活しているなら、60万円〜120万円は手元に残します。

家族がいる、収入が変動しやすい場合は多めに考えましょう。投資は増えることもあれば減ることもあります。値下がりしたときに生活費まで不安になる状態では、落ち着いて続けることができません。

2.iDeCoは『60歳まで使えない』と理解する

iDeCoは節税のメリットがある一方で、原則60歳まで引き出せません。途中でやめたくなっても自由に戻せないお金になります。

これから住宅購入や教育費などの予定がある方は、その資金とは分けて考える必要があります。『余っている老後資金だけを入れる』という意識が大切です。

3.商品はシンプルで手数料が低いものを選ぶ

長く続けるほど差が出るのが手数料です。毎年かかる費用が高いと、それだけで将来の受取額が減ります。商品を実際に購入する場合、まずは、幅広く分かれて投資するタイプで、年間の費用が低い商品を基本に考えましょう。

話題の商品は値動きが大きいことも多く、初心者の方には、負担が大きくなる傾向があります。

4.NISAでは損を他と相殺できない

通常の口座では、ある商品で出た損を、別の商品で出た利益と合算して税金を減らすことができます。しかしNISAではそれができません。

つまり、大きく値動きする商品で損が出ると、そのまま影響を受けます。長期で持ちやすい商品を選ぶほうが制度に合っています。

5.目的と使う時期をはっきりさせる

『なんとなく老後』ではなく、『65歳から毎月いくら補いたい』『20年後にいくら必要』など、数字で簡単にチェックしてみてください。目的がはっきりすると、毎月いくら積み立てるか、どれくらいの値動きを受け入れられるかも見えてきます。

この5つを確認するだけで、『思っていたのと違った』という失敗を大きく減らせます。制度はメリットのある枠組みですが、これらの土台が整ってはじめて力を発揮します。」

「自動で得する」は幻想!NISA/iDeCoは「土台」を固めて活用しよう

NISAやiDeCoは、税制優遇という強力なメリットを持つ、私たちの資産形成を助ける「道具」です。

しかし、その「道具」を使いこなすには、単に「お得だから」という理由だけでなく、私たち自身の家計状況や、未来の目標を明確にするという「土台」が不可欠であることが分かりました。

「制度を使えば自動的に得をする」という誤解を手放し、「何のために資産を作るのか」という目的意識を持つこと。そして、緊急資金の確保や、商品の選び方、制度の特性理解といった石坂さんの5つのポイントを実践することで、「思っていたのと違った」という失敗は大きく減らせるでしょう。

今日からできる小さな確認が、あなたの長期的な資産形成を支える大きな力になるはずです。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。