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「月9万円」で新築購入→30年かけてローンを完済するが…その後、60代夫婦を襲った“思わぬ大誤算”【お金のプロは見た】

  • 2026.3.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関勤務の現役マネージャーとして、日々さまざまなお金にまつわる相談に向き合っている中川です。

今回、紹介するのは60代前半のAさん(仮名)ご夫婦のお話。

「住宅ローンさえ終われば、老後はなんとかなる」

そう信じて住宅ローンを返済してきたAさん。30年かけて完済し、毎月の返済から解放されたとき、ようやく“本当の安心”を手にしたと感じたそうです。

家賃はかからない。持ち家がある。年金も受け取れる。老後は穏やかに過ごせるはずでした。しかし、築30年を迎えた頃、その安心が静かに崩れ始めます。

ローン完済で手にした「安堵」

Aさんご夫婦が今の戸建てを購入したのは30代前半。郊外の分譲地に建つ、延床約35坪の2階建て住宅でした。

毎月の返済は約9万円。子育てと教育費に追われながらも、繰り上げ返済を重ね、予定より早く完済します。

「これで家は自分たちのもの。あとは年金と貯蓄で暮らしていける」

完済時点での金融資産は約1,200万円。家賃がない分、月の支出は抑えられる。そう計算していたのです。

ところが、その計算には“ある視点”が抜けていました。

きっかけは「小さな不具合」

異変は、ある雨の日に起きました。天井にうっすらとシミができていることに気づいたのです。

業者に点検を依頼すると、屋根材の劣化と防水シートの傷みを指摘されました。さらに外壁のひび割れ、コーキングの硬化、給排水管の腐食も見つかります。

「築30年ですから、一度しっかり手を入れたほうがいいでしょう」

提示された見積書の金額は約400万円でした。

見積書を見た瞬間、言葉を失う

屋根補修・外壁塗装で約180万円。給排水管の更新で約120万円。足場代や諸経費を含め、総額は400万円超。

Aさんはその数字を何度も見返しました。

「ゼロが一つ多いのではないか」と思ったほどだったといいます。

マンションのような修繕積立金は戸建てにはありません。毎月強制的に積み立てられる仕組みがないのです。

そのため、ご夫婦は“なんとなく”の貯蓄しかしていませんでした。

「こんな大金、想定していなかった」それが率直な本音でした。

老後の資金計画は一気に崩れた

400万円の支出は、老後資金に大きな穴を開けました。

金融資産1,200万円のうち3分の1が消える計算になります。予定していた「余裕」はなくなりました。

旅行は延期。車の買い替えも見送りました。将来の医療費への不安が一気に現実味を帯びます。

「家賃がない」という安心は、修繕費の発生で一気に崩れていったのです。

“持ち家=安泰”という思い込み

持ち家は確かに資産です。しかし、維持費がかかる資産でもあります。

特に築30年前後は、屋根と外壁、給排水管、シロアリ対策といったリフォームが重なりやすい時期です。

問題は、それが一斉にやってくる点にあります。しかも、ある日突然です。

住宅ローンの完済をしてしまうと、その後は支出がないと勘違いしてしまいます。

Aさんご夫婦も「もう大きなお金は出ていかない」と思い込んでいました。

戸建てに必要な「修繕積立」という発想

今回の経験を通じて、ご夫婦はあることに気づきました。

「戸建てにも、マンションと同じように積立が必要だった」

もし毎月2万円を30年間積み立てていれば、720万円になります。大規模修繕にも備えられた計算です。

持ち家に管理費はありません。しかし建物は年月とともに劣化し、修繕が必要な時はやってきます。

あらかじめ、リフォームが発生することを予想し資金を準備する必要があるのです。

今、持ち家の方に考えてほしいこと

ローン完済はゴールではありません。持ち家を持つ以上、維持費はかかり続けます。

築年数が20年を超えたら、今後20年で必要な修繕費を試算すること。月単位で積立額を決めること。退職金を全額“使えるお金”と考えないこと。

家は家族を守る場所です。一方で、修繕費などの準備がなければ、家は家計を揺るがす存在にもなります。

「持ち家があるから安心」ではなく、「持ち家を維持できる準備があるから安心」。

今、お住まいのご自宅は、築何年ですか。将来の修繕費を見積もってみてください。

計画的な準備が、将来の家計を守る第一歩になります。


監修者:中川 佳人 監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance)

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。 専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。