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泥酔客の“カード決済”を済ませた直後、発覚した【致命的なミス】タクシー運転手が「一瞬で血の気が引いた」と語るアプリ配車の落とし穴。

  • 2026.2.26
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出典:photoAC ※画像はイメージです

こんにちは。現役タクシードライバーのけんしろです。

最近のタクシーは、キャッシュレス決済や配車アプリの普及で、支払いがとても便利になりました。呼ぶのも精算もスマホで完結する時代です。ただ、便利になった分だけ、現場の「確認ポイント」も増えました。操作は簡単でも、最後にボタンを押すのは人間です。今日はそんな話です。

二重決済で冷や汗をかいた日

ある日、「呼んだ人」と「乗る人」が違うケースに当たりました。友人がアプリで配車し実際に乗るのはお酒にかなり酔われたご本人です。ナビ通りに運行し、ホテルに到着しました。

ここで本来なら、アプリ決済かその他の決済かどうかを確認して終了。……のはずでした。

ところが私は、体調が悪そうなお客様が取り出したクレジットカードをお預かりし、急いでカード処理を進めてしまったのです。お客様ご自身もアプリでの配車というご認識がありませんでした。処理が終わるとホテルのフロントマンに支えられながら、お部屋へ帰られました。

その後、決済の最終処理をしようとしたところ、「アプリにて決済済み」の表示が…つまり、二重決済です。

一瞬で血の気が引きました。

幸い会社経由で返金処理を行い、大事には至りませんでした。それでも、あの冷や汗は忘れられません。

「もっと確認できたはずだ」

その思いは、しばらく残りました。

数日後の再挑戦

失敗の後は、少しだけ慎重になります。ナビ確認。決済確認。金額入力確認。

「今日は完璧にやる」

そう決めてハンドルを握っていました。迎車場所は温泉施設でした。ナビが示した行き先は国道沿い。ほぼ一本道です。ところが、合流手前の信号待ちで、ナビが突然180度反転しました。さっきまで北を向いていたはずが、今度は南です。

私の人生も方向転換はありますが、ここまで急ではありません。

仕方なく南へ進むと、今度は「Uターン」の指示。結果、約300メートルの遠回りになりました。

「申し訳ありません。メーターを早めに切ります」

お客様は笑ってくださいました。

目的地よりもずっと手前の信号待ちで、約束どおりメーターを切りました。決済操作も完了。金額入力も確認済み。よし、今日は完璧です。……と思った、その瞬間。決済が完了したので、当然ナビもきれいに消えてしまったのです。

タクシードライバーの基本中の基本である、行き先確認を完全にナビ任せにしてしまっていたのです。

行き先を再確認しようと振り向くと、お客様は海外からの観光客の方でした。

日本語は通じません。何とかコミュニケーションをしようと、手振り身振りで試みました。

すると、お客様のほうが冷静に翻訳アプリを見せてくださいました。
なんとかやり取りができて、無事に到着できました。最後は笑顔で手を振ってくださいました。私も笑顔で応えました。

ただし心臓は、しばらく国道を全力疾走していました。乗務開始ほんの45分でコーヒー休憩を取ったのは言うまでもありません。

便利な時代に問われるもの

ナビがあり、翻訳アプリがあり、決済も自動。

それでも最後に問われるのは、人の判断と誠実さなのだと感じます。ヒューマンエラーは油断できない。

あの日の出来事は、私にとって「慎重さ」と「余裕」のバランスを教えてくれた一本でした。

反省と学びをかみしめながら、今日もハンドルを「10時10分」で握っています。慎重に、そして少しだけ余裕を持って。


ライター:けんしろ
現役タクシードライバー。
日々さまざまなお客様と向き合う。現場での経験をもとに、移動の裏側にある人間模様や、サービス業における対応力について発信。密室空間だからこそ見える感情の機微を大切に、実体験をもとにしたコラムを執筆している。


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