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「大事な商談があるんだ!なんとかしろ!」霧で“出発地に引き返す機内”で激昂する客…直後、「ごめん、言い過ぎた」とCAに謝ったワケ

  • 2026.2.28
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

皆さま、こんにちは。大手航空会社で10年間、CAとして勤務しておりましたSAKURAです。

飛行機を運航する上で、避けて通れないのが天候不良による影響です。

特に「霧」は、大雪や台風のような視覚的な激しさがない分、お客様にとってはその不可抗力を受け入れがたく、もどかしさが怒りへと変わってしまうことも少なくありません。

やり場のない怒りを抱えたお客様に対し、私たちCAはどのように向き合うべきなのでしょうか。

お客様の心に寄り添い、共に感情を整理していくこと。

今回は、激昂されていたお客様が、最終的に「言い過ぎた」と自ら謝罪の言葉を口にされるまでに至った、私が現場で体得した『聴く技術』の一例についてお話ししたいと思います。

静まり返った機内に響く、突然の怒号

それは、地方へ向かう、夜の国内線での出来事でした。

目的地に近づいた頃、機長から私たちCAに連絡が入りました。

「目的地の空港に霧が発生し、着陸できなくなった。出発空港へ引き返す」

霧で着陸できない可能性があることは、事前にお客様へも周知されていましたが、やはり私たちにとっても、気が重くなる場面です。

「目的地の霧の影響で、出発空港へ引き返すことになりました」

お客様から落胆のため息が漏れ、重苦しい空気が立ち込めました。

そして突然、男性の怒号が響き渡りました。

「明日、大事な商談があるんだぞ!どう責任を取るんだ!霧なんてどこに出てるんだ!何とかしろ!」

あまりの剣幕に、機内は一瞬、静まり返りました。

不可抗力の中、できることとは

大雪や台風のように窓の外が荒れているわけではなく、上空は至って穏やか。

だからこそ、お客様にとって「霧」という理由は、実感が湧きにくく、納得しがたいものだったのでしょう。

一番近くにいた私を睨みつけ、顔を真っ赤にしている男性。

私はすぐにその方の席へ行き、まずは落ち着いていただこうと、話を伺いました。

お客様より少し低い位置へ腰を落とし、「明日の大切なお仕事のために向かってらっしゃったのですね」と寄り添うように声をかけました。

天候のような不可抗力が原因の場合、謝罪が必要な場面とは異なる姿勢を見せることも求められます。

どうしようもできない状況で、できることは何か。

「この天気では、霧が出ているなんて信じられませんよね」

私は、男性が発する言葉の一つ一つを、お客様自身が整理できるよう、寄り添うように繰り返しました。

しばらくすると、男性は徐々に落ち着きを取り戻し、最後には「ごめんね、言い過ぎた。君が悪いわけではないね」と、口にしたのです。

「言葉をなぞる」ことで「自発的な納得」へつなぐ

私が意識したのは、決して機械的なオウム返しではなく、相手の感情に寄り添いながら「なぞる」ことでした。

自分の発した言葉を客観的に聞き直すことで、パニックになっていた思考が次第に整理され、「自発的な納得」へとつながるのです。

自分から納得していただくことこそが、状況を最も早く落ち着かせるのだと、大切さを改めて実感した出来事でした

聴いて寄り添い、心をほどいていくこと

CAとして勤務する中で、言葉を尽くして説得することよりも、ただ静かに「聴く」ことの方が、はるかに大きな力を発揮することを経験してきました。

特に、誰のせいでもないトラブルの際、人は誰かに「分かってほしい」と願うものです。

相手の言葉を否定せず、寄り添うように繰り返す技術は、対立を回避し、信頼を築くための強力な鍵の一つになり得ると、私は考えています


ライター:SAKURA * 心を読む元国際線CA

日系大手航空会社にて10年間、客室乗務員(CA)として勤務。国内線・国際線を経験し、多種多様なお客様と接する中で「感情を読み解く力」を磨く。客室責任者としてVIP対応や後輩育成に携わる傍ら、社内の人材教育やグループ会社での業務にも携わり、多角的な視点から接客のあり方を見つめてきた。

現在は、その鋭い洞察力を活かし、言葉だけでない、「心理的・物理的アプローチによるクレーム回避術」を発信するライターとして活動中。国内線での細やかな気配りから国際線での難しい状況判断まで、現場での実体験に基づいた「心に届く接客のヒント」を言語化し、接客業にとどまらず、人と人とがよりよい関係を築けるサポートをしている。


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