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映画監督ペドロ・コスタの個展が開催。「美術館が嫌い」と語った、ポルトガルの鬼才のまなざしとは

  • 2025.10.14
ペドロ・コスタのポートレート
BRUTUS

「美術館が嫌いだ」と、ポルトガルの鬼才は言った

ポルトガルの映画監督、ペドロ・コスタの個展が東京都写真美術館で開催中だ。展示空間は真っ暗。細い通路は迷路のようで、壁や吊り下がった布に映像が投影される。

《少年という男、少女という女》
ペドロ・コスタ《少年という男、少女という女》2005年、東京都写真美術館蔵。©Pedro Costa
《アルト・クテロ》
ペドロ・コスタ《アルト・クテロ》2012年、作家蔵。©Pedro Costa

コスタは本展覧会の作品を、アートではないと強調する。

「実は美術館が嫌いなんです。特に現代の、アートのために存在しているようなアートにはリアリティが感じられない。例えば小津(安二郎)作品の静謐(せいひつ)な世界なら、観客はいつしかそこに自分の家族や過去に繋がるものを見出し、自分事として楽しむことができる。それは実はそこに描かれているものが、私たちが日々向き合っている現実だからなのです。

今は誰もが有名になることばかり考えていて、カンヌやオスカーでさえもそのための手段になってしまっている。そうではなくて、毎日コツコツと自分の作業場に通って、少しでも表現を前に進めようとすること。そこにこそ現実があると思うのです」

展示のタイトルは『インナーヴィジョンズ』。スティーヴィー・ワンダーのアルバム名が由来で、人間の内面と社会の繋がりへの意識が感じられる。リアリティを追い求めてきた鬼才のまなざしを目撃したい。

ペドロ・コスタのポートレート
BRUTUS

profile

ペドロ・コスタ(映画監督)

1958年ポルトガル生まれ。89年に長編デビュー作『血』を発表、『骨』や『ヴァンダの部屋』で国際的評価を確立。近年は美術館での展覧会にも表現の幅を広げている。


Information

総合開館30周年記念『ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ』

会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
期間:〜12月7日(日)
営:10時〜18時(木・金〜20時)
休:月曜
入場料:一般800円

11月27日(木)からは『血』『溶岩の家』などコスタの代表作11本の特別上映が1階ホールで開催。

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