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2026年10月・11月公開の注目映画|戦争を知らない人たちは、その記憶をどう受け継ぐべきか

  • 2026.10.4

映画評論家、エッセイストの秦 早穗子(はたさほこ)さんが担当する『婦人画報』の映画コーナー「世界への窓」。今回は「それぞれの戦中・戦後」をテーマに、2026年10月・11月に公開される注目の新作映画に加え、併せて観たい映画をご紹介します。

今回ご紹介する映画はこちら

『わたしの知らない子どもたち』

©2026 K2 Pictures・AOI Pro. 配給:K2 Pictures

2026年10月16日(金)より全国公開

『さよなら、私のロシア』

©2025 LEWA productions - Revolver Amsterdam -Giorgio Savona productions 配給:doodler

2026年11月14日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー

戦争を知らない人たちは、その記憶をどう受け継ぐべきか

『わたしの知らない子どもたち』

3人姉妹で長女の私は、2番目の妹と5歳、末の妹とは11歳の年の差がある。それぞれ、満州事変、中国との戦争、続く太平洋戦争の只中に生まれ、記憶も異なる。いや、ひとつ違いでも、体験と記憶は違う。

『ゆれる』以来、西川美和監督の作品は注目してきた。『わたしの知らない子どもたち』では、戦争孤児を描いている。音楽家の家で育った琴子(小八重葵美/こやえあみ)は、戦災で家族を失い、女の子では危険、と男の子としてガード下で靴磨きなどしながら生きる。一方、琴子の先生だった文美子(二階堂ふみ)は子どもを抱えながら、戦後の時代を乗り切っていこうとする。琴子は私自身とも重なり合う部分もあり、その分、身につまされながら、何かが違うとも思う。

70年代。友人から優秀な学生を紹介され、一緒に働いていた時があった。戦中戦後の話を聴きたいと請われて、仕事の合間に話したものだ。ある日、彼は言った。「話はとても興味深いのですが、少しオーバーな気がします。いくらお腹が空いていたにせよ、唐紙は食べはしないでしょう」。ふすまを食べたという表現が伝わらなかった。襖、即ち唐紙と思った彼は、ふすまという豚の餌を知らなかった。

この一件は私を打ちのめし、反省もさせた。些細な事から通じ合わなくなってしまう。言い伝え、語り伝えるむずかしさ。本作で感じたのは、この些細な部分が大きな主題に繫がるのを予感しながら、人間、その身にならなければ決してわからないということ。些細な具体例は、見る人に委ねるとして、だからといって、映画を批判しているのではない。ここも大切な点で、是非、皆さんに見ていただきたい。

『さよなら、私のロシア』

『さよなら、私のロシア』は、1965年生まれのジャンナ・アガラコワと2002年ローマ生まれの娘アリーチェ・サヴォーナの現実の旅と内的旅を描くドキュメンタリーで、アガラコワ監督自身の物語。壁や国境のない世界を信じ、ジャーナリストとして生きてきた。

しかし、次第にプロパガンダのお先棒を担いでいるにすぎないと気づき始める。プーチン政権以来、体制に反抗する者は、外国の代理人に指定され活動できなくなる。政治・権力・経済の変化を女の視点で描く。そして、イタリア人との間に生まれた娘の異なる視線が重ねられ、複雑なロシアの政治の推移とそこに翻弄されるひとりの人間の生きる道が、浮かんでくる。

原題は、『小さな灰色のオオカミがやって来る』。ロシアの古い子守歌で、母親が子どもを寝かしつける時に歌ったという。"お休み。静かに。さもないと小さな灰色のオオカミがやってきて、森に連れていってしまう"と。

こちらはおうちで……配信&DVD

『靴みがき』

Everett Collection/アフロ

旧作はイタリアのヴィットリオ・デ・シーカ監督、フランコ・インテルレンギ主演の『靴みがき』を選んだ。アカデミー名誉賞を取った名作で、1950年、日本で公開されるや、多くの人に感銘を与えた。まだ戦争の匂いが至る所でしていた時代で、大人も子どもも映画館ですすり泣いた。

※Prime Videoで配信中

はたさほこ●1931年東京都生まれ。映画評論家、エッセイスト。58年フランスに渡り『勝手にしやがれ』『太陽がいっぱい』などの映画輸入に携わる。映画評論、エッセイ、翻訳を手掛け、シャネルなどのファッションも紹介。現在も映画紹介に努め、執筆活動を行う。

文=秦 早穗子 編集=須田秀子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年11月号より

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