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ネガティブ思考は「脳疲労」のサイン? 情報過多時代の正しい脳の休ませ方を専門家がガイド

  • 2026.10.2

がんばれば、疲れる。それは脳だって同じ。情報という刺激にさらされ続ける毎日のなかで、脳のコンディションを整える、休ませ方を知っておきたい。

話を伺った人...
毛内 拡(HIROMU MONAI)
:脳科学者、神経科学者、生物学者。お茶の水女子大学ヒューマンライフサイエンス研究所助教。理化学研究所脳科学総合研究センター研究員などを経て現職。専門は神経生理学・生物物理学。ニューロンやグリア細胞、細胞外環境も含めた研究を進める。著書に『脳を司る「脳」』(講談社ブルーバックス)など。

がんばっているのに、なんだか不調。「能力不足」ではなく「脳疲労」?

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──仕事は忙しいけれど、パートナーや家族との時間を充実させたい。プライベートの楽しみもありつつ、将来に向けたリスキリングも検討中。ベターなこれからを思い描く女性にとって、マルチタスクなんて当たり前の今。

ところが、そんな全力疾走の毎日に、毛内先生は「脳疲労」というキーワードを投げかける。「昨今、『能力さえあれば、パフォーマンスも成果も上げられる』との風潮を感じます。能力を高めるために、もっと勉強する、もっとスキルを身につける。素晴らしいことですが、パフォーマンスは、『能力×脳のコンディション×環境』の基礎方程式で導かれると考えています。なかでも脳のコンディションは特に大切です。睡眠が整っていなかったり、常に情報があふれていて注意散漫な状態では、たとえ能力を持っていても十分に発揮できません。環境は、暑い寒い、音や光などの物理的な状況、職場や家庭の人間関係のことで、これらが健全な状態にないと、脳が正しく働けない可能性があります」

そして、肝心の脳のコンディションを乱すのが「脳疲労」だ。医学的な診断名ではないものの、情報過多の現代を生きるうえで知っておきたい概念のひとつ。「脳には、神経細胞であるニューロンを支え、エネルギー供給や老廃物の除去を担うグリア細胞が存在します。『脳疲労』の生物学的な実体は、まだ十分には解明されていませんが、たとえるなら、脳内のメンテナンスに大きな負担がかかった状態は、台所で料理や後片付けをしている最中に火事が起き、それどころではなくなってしまうようなもの。私は、グリア細胞のひとつ、アストロサイトによる脳内環境の調整や、炎症反応との関係に注目し、研究を続けています」

疲労や睡眠不足が重なると、物事を丁寧に検討することが難しくなり、あいまいな出来事を悪く受け取りやすくなることも。「メールが届いただけなのに責められている気がする。さらには、『どうせ私なんて』と考えてしまう。そんなときは、能力の問題ではなく、脳が疲れているサインかもしれません」

あふれる情報から距離を置き、人生を動かしている感覚を取り戻す

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周囲の言動に一喜一憂する、なにげない一言に思い悩む。人間なら誰しも、よくあることなのでは……?「21世紀を生きる私たちは、仕事やSNSを通じて、日々非常に多くの情報に接しています。地球の裏側の知らない誰かのランチなんて、どうでもいいはず。現代人の脳は、かつてない情報量にさらされ、それが大きな原因となり、『脳疲労』を起こしています。どの情報を脳に入れて、どの情報を入れないか。その線引きを自分で管理する『ブレインリテラシー』が求められています」

具体的な対処法として毛内先生が挙げるのは、情報の断捨離と自己効力感。まずは情報の引き算について。「脳にとっていちばんのストレスは、『今これをやろうと思ったのに、できなかった』という中断。そこでまず、スマホの通知を切りましょう。職場での観察研究では、作業を中断されたあと、元の課題に戻るまで平均23分を要したという報告も。通知をオフにするだけでも、不要な中断を減らしやすくなります」

そして、自己効力感のアップについて。「日本人の睡眠不足が社会問題となっていますが、女性の睡眠時間のほうが短いことがわかっています」。仕事や家事に追われ、夜になってようやく自分の時間が持てる、そんな背景がありそうだが、睡眠は、脳の機能回復、老廃物の除去、記憶の整理や定着など、脳の健康を保つ基盤。「“リベンジ夜更かし”を回避するためにも、日中に自分の時間割で、自分がやりたいことをどれだけ実行できているかが大切になります。そこで例えば、『カーテンを開けた』『お皿を洗った』など、小さなことでいいので、To Doリストに書き出し、1つずつ消していく。成果を可視化することで自分で一日を進めているという実感につながります」

呼吸に意識を向けることも有効。「私自身はオンラインでコーチをしてもらい、瞑想をしています。瞑想にはさまざまな流派がありますが、重要なのは『呼吸』。4秒吸って8秒で吐く、というように吐く時間を長めに取ることは、気持ちを落ち着かせ、自分の状態へ注意を戻す手がかりになります」

脳内で炎症反応が起こり、グリア細胞によるメンテナンスが十分に行えなくなった脳疲労は、睡眠時間を確保するだけでは十分に回復しないこともあるという。「睡眠や食を整えたうえで、過剰な情報をシャットアウトし、呼吸法や瞑想を含む自己効力感を高めていく。ブレインリテラシーを身につけ、脳が本来持っている回復力を発揮できる環境を整えましょう」。そしてじつは、グリア細胞が働ける環境は、脳が生涯にわたって変化し続ける力──ニューロプラスティシティの鍵となるという。

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【CHECK!】静的か動的か。自分に合う瞑想を探して

すぐに取り入れやすいのは呼吸に集中する呼吸瞑想。静かに瞑想をしようにも、反省や不安が渦巻いてしまう人には、筋トレやボルダリングなどの動的瞑想もおすすめという。

From Harper's BAZAAR October 2026

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