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朝ドラ『ブラッサム』主人公のモデル宇野千代の“華麗なる愛の軌跡”――元夫らが描いた最強のモテ女の実像『宇野千代をめぐる男たち』【書評】

  • 2026.9.18
宇野千代をめぐる男たち 中央公論新社:編/中央公論新社
宇野千代をめぐる男たち 中央公論新社:編/中央公論新社

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2026年秋スタートのNHK連続テレビ小説『ブラッサム』は作家の宇野千代をモデルにした物語だという。宇野千代といえば、野間文芸賞を受賞した『おはん』、『色ざんげ』などを代表作に持つ女性作家、着物デザイナーとして知られるだけでなく、その華麗なる恋愛遍歴でも歴史に名を残す女性だ。

代表的なパートナーとして知られるだけでも、作家の尾崎士郎に北原武夫、画家の東郷青児と華やか。ちなみに尾崎とは出会ってすぐに衝動的に同棲をはじめるが、実は宇野は北海道に夫を残して上京していたり(つまり「不倫」スタート)、最後は相手に手ひどく裏切られて別れたり…朝ドラにするには少々過激なエピソードも多く、当時はマスコミの格好の餌食だったとか。

そんな彼女を一体どこまで描くのか――「宇野千代」という人物に少しでも関心がある方はきっと興味津々だろう(ちなみにNHKのWebサイトには「実在の人物をモチーフとしますが、大胆に再構成します。登場人物名や団体名などは一部改称して、フィクションとして描きます。原作はありません」との断り書きがある)。

このほど、そんなドラマの行方をさらに楽しめそうな興味深い文庫が登場した。その名もズバリ『宇野千代をめぐる男たち』(中央公論新社:編/中央公論新社)。芥川龍之介の短編『葱』からはじまる本書は、宇野千代と恋愛や結婚関係があった、あるいは特別に親しかった「男性」作家による、宇野千代についてのエッセイ、および宇野千代をモデルにしたと思われる小説を集成した一冊なのだ(唯一、北原との結婚の媒酌人をつとめた吉屋信子だけが例外的に女性の書き手だ)。

たとえば前述の芥川の『葱』は神保町のカフェの女給・お君さんをめぐる物語。女髪結の2階に間借りする文学少女のお君さんに心を寄せたのはインテリの田中君で、物語は二人のデートの顛末を描く。このお君さんのモデルは宇野千代といわれており、実際に彼女は芥川も来ていた本郷の知識人の溜まり場・燕楽軒で女給をしていた。美人の宇野は大いに注目を集めたというが、本人曰くその店は18日でやめたらしい。それでもこんな短編を書かせてしまうのだから、宇野千代という人がいかに「特別な女」だったのかわかろうというもの。

このほか尾崎・東郷・北原といった夫たちはもちろん、作家の梶井基次郎や今東光、井伏鱒二、室生犀星ほか、美術評論家の青山二郎、評論家の大宅壮一など錚々たる面々の文章が登場。宇野を描く角度はそれぞれなのだが「美しかった」「心遣いが細やかだった」などの印象が共通で、さらに元夫たちも全くディスらず、宇野千代という人がいかに強烈な「モテ女」だったのかを実感させられる。とはいえ、彼らが何気なく描写したことの奥にある「おんなごころ」の機微を敏感に察知して「宇野さん、大変でしたね」と感じる女性読者もいるかもしれない。それだけ宇野千代という人は多面的で面白いのだ!

巻末の解説は日本文学研究者・川崎賢子さん。「『ロマンチック・ラブ・イデオロギー』に収斂しない無頼の性愛行動、文学の枠を超えた多彩な仕事ぶり、元祖おひとりさまフェミニズム、老女のフェミニズムの実践者」と宇野を評するが、そんな気負いを微塵も感じさせずに前に突き進むのが宇野千代という人のすごさであり素晴らしさでもある。本書を入り口に、もっともっと宇野千代という人が知りたくなる一冊だ。

文=荒井理恵

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