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統合失調症の兄の存在を隠されて結婚した妻。発覚後、彼女が選んだ道とは?【著者インタビュー】

  • 2026.9.17

【漫画】本編を読む

愛美は夫・賢二とごく普通の夫婦として、幸せに暮らしていた。しかしある日、突然賢二の両親が事故に遭い、義父が亡くなる。悲しみに暮れる中、義父の葬儀に現れたのは怪しげな男。その男は、夫の兄・聡一だった……。聡一という兄がいること、聡一は高校生の頃から引きこもっていることを愛美は初めて知る。義家族はなぜ聡一の存在を隠していたのか?

『隠された家族』(のむ吉:著、小瀬古伸幸:監修/KADOKAWA)は統合失調症を患う兄をめぐり、家族がどう向き合っていくかを描いた物語だ。著者であるのむ吉さんにインタビュー。自身も精神科で働いていたというのむ吉さんが、本作に込めた想いを伺った。

※統合失調症をはじめとした精神疾患の進行や症状は個人差がありますので、詳細は医療機関等にご確認ください

――愛美は夫の賢二に統合失調症の兄・聡一がいたことを隠されたまま結婚しています。加えて、実家にひとりきりになってしまった聡一の面倒をみるように夫に依頼されています。聡一の存在を隠されていたことに怒ったり、面倒を見ることを拒絶したりする場合もあるかと思うのですが、愛美は賢二に寄り添い、ふたりの問題として考えていこうとします。なぜそう考えたのか、のむ吉さんとしてはどう感じていますか?

のむ吉さん(以下、のむ吉):愛美は幼い頃から周囲の顔色をうかがい、「いい子」であることが自分の存在価値なのだと思って生きてきました。なので賢二の不誠実な対応にも、咄嗟に怒ったり感情をぶつけたりすることができず、戸惑うばかりでした。しかし、実母に気持ちをぶつけたことをきっかけに、本当の自分の思いに気がつきます。最終的に愛美が賢二と共に兄と向き合うことを選んだのは、愛美自身がかつて賢二に救われたように、自分も賢二の力になりたいという思いがあったからです。また、ようやく手に入れた理想の家庭を手放したくないという思いもあったと考えています。

――統合失調症を含め、精神疾患患者のご家族にも取材はしたのでしょうか?

のむ吉:これまで精神科で関わってきた患者様のご家族との対話や経験をもとに描きました。ご家族の反応は本当にさまざまで、精神科治療に戸惑いや抵抗感を抱く方もいれば、患者様に寄り添うあまり、ご自身の心身の健康を損なってしまう方もいらっしゃいました。ただどのご家族にも共通して、家族だからこそ抱える葛藤があるのだと感じました。

――聡一と母親の行動や心情描写について悩まれたことを教えてください。

のむ吉:聡一や母親を、一面的な人物として描かないようにすることですね。聡一は病気の側面だけでなく、自分らしさを取り戻していく過程を取り入れ、母親はただ息子を隠してきた人物ではなく、息子を守るために必死だった人物として描くことを意識しました。

当初は、聡一が母親を憎んでいる設定にしていましたが、描き進めるうちにその考えを見直しました。母親は聡一が統合失調症になってからも、献身的に世話をし続けます。病気であっても大切な息子であることに変わりないからです。その思いは聡一にも伝わっていたのではないかと感じるようになりました。ふたりの間にはふたりだけの時間が静かに流れており、それは歪ではありますが、親子が確かに積み重ねてきた過程だったのだと考えるようになりました。

取材・文=原智香

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