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家族というブラックボックスで 繰り広げられる、愛と狂気の軌跡。 漫画『箱の男』

  • 2026.5.12

漫画『箱の男』の作者、都会さんにインタビュー。

これは、家族の成長記でもあると思っています

ある家族にとっての常識が、ほかの家族には必ずしもそうとは限らない。成長過程でよその家との違いに気づいて驚いた経験は、大なり小なりあるだろう。都会さんの『箱の男』も、内側から見たら何もおかしくなかったはずの家族の物語だ。

「最初は、出落ちじゃないですけど、はたから見たら怪しい箱に男が住んでいる、怪しい家族の話くらいに考えていました。だけど物語を練っていくうち、なぜそんなことが起こっているのか、登場人物それぞれの心理を深掘りしたくなったのです」

たしかに、家の中に大きな箱が鎮座していて、その中で男が生活しているという設定は、かなりのインパクト。しかし主人公の由美子には、物心ついた頃からその生活が当たり前。心の風邪で外に出られなくなってしまったという父親を不憫に思いながら、母親と3人で仲良く暮らしている。5歳の由美子が1話ごとに年齢を重ねていく形式で話が進んでいくのだが、顔も知らない父親の存在がじわじわと当たり前ではなくなっていくのが、なんとも不気味。

家族というブラックボックスで 繰り広げられる、愛と狂気の軌跡。 漫画『箱の男』

Ⓒ都会/白泉社

「由美子はなるべく等身大の子として描こうと意識しました。どの家庭にも人には言えない恥ずかしいことがあると思っていて、由美子の場合はたまたまそれが箱だったっていうくらいの感覚にしたかったのです」

大好きだった父親のことがウザくなる、ある意味、思春期の正しい道のりを辿りながら、由美子には当然の疑念が湧いてくる。なぜ父親は、いつまで経っても外に出てこないのか? そもそも本当に父親なのか? 一方読者は、冒頭で報じられるショッキングなニュースがどう結びつくのか、気が気でない。それは由美子が18歳のときに起こる事件で、住宅街の一軒家から箱に入った男の死体が発見されるのだが…。奇妙な家族関係を描くにあたり、都会さんはある心理的現象からヒントを得た。

「加害者と被害者の共依存関係に興味があって、なぜそういう心理に陥るのか興味がありました。もちろん犯罪は許されませんが、もし双方がやり取りのなかで幸せを感じたとしたら、その感情自体は否定できない気がして…。周りから見たらおかしいけど、由美子たちは幸せそうなシーンも入れてみました」

一見ほのぼのとしたタッチと、起こっている不穏な事象のギャップが、底知れぬ恐怖を醸している本作。

「家族はどんな形であってもいいと思うし、最初からというより、だんだん構築されていく関係なのかもしれません。なのでこれは、家族の成長記でもあると思っています」

家族という外から見えない箱の中で、一体何が起きているのか。扉を開けたら、もう戻れない…!

都会

とかい マンガ家。著書に『憂鬱どうぶつ(株)』『3 匹の大人ぶた』『会社がツライ』『ボッチだった6ヶ月間とその後』。本作が初の本格サスペンス。

information

『箱の男』

「箱の男」と母と暮らす、5歳の由美子が成長とともに抱く疑問。そして18歳を迎える前に明かされる衝撃の事実。家族の闇を描いた、ダーク・サイコサスペンス。白泉社 990円

写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

anan 2494号(2026年5月1日発売)より

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