1. トップ
  2. エンタメ
  3. 【60代エンタメ】9月21日(祝)開幕!『リア王』KING LEAR ー観る前に知っておきたい作品の魅力を大学教授・米谷郁子先生が解説〈好奇心の扉・前編〉

【60代エンタメ】9月21日(祝)開幕!『リア王』KING LEAR ー観る前に知っておきたい作品の魅力を大学教授・米谷郁子先生が解説〈好奇心の扉・前編〉

  • 2026.9.17

近年、ウィリアム・シェイクスピアの『リア王』の上演があいつぎ、私たちの心に刺さる現代的な解釈が評判を呼んでいます。
親子のすれ違い、老いへの不安、権力の危うさ――。400年以上前に書かれた物語が私たちの胸を打つのは、その問いが決して過去のものではないからでしょう。
イギリス演劇の研究者・米谷郁子先生にその魅力の真髄を伺います。今回は【前編】をお届けします。

現代にも起こりうる父と子の深い葛藤

『リア王』は、老いた王と3人の娘の悲劇として知られていますが、実はリア王家とグロスター伯爵の家族、ふたつの親子関係が交錯する物語です。どちらの父も子に裏切られ、権力から転落していく運命をたどり、その過程で自らや周囲の人々の真実を知ることになります。 「『リア王』に描かれる父と子の不信やすれ違いは、現代の家族にも起こりうる問題です。リアの長女や次女、あるいはグロスターの庶子エドマンドは悪役として語られがちですが、観客が、親か子どもか、どちらの視点で上演を観るかによって、作品の見方も異なってきます」 今年9月には、中村芝翫さん、内野聖陽さんがそれぞれ主演を務める、ふたつの『リア王』の幕が開きます。数年をかけて上演が続いている現在の背景について、米先生の分析を伺うと、 「世界ではいま、覇権を握る高齢の男性指導者たちが、社会に不安定をもたらしています。政治に関心がない人も無関係ではいられなくなるような、まさに『政治の季節』です。絶大な権力を持つ王と、その暴走や衰えに周囲がどう向き合うのか。『リア王』は現代の観客にとって、実人生に関わるような、リアルな問いを投げかける作品だと言っていいでしょう」 そして、その上演を可能にしているのはリア王を演じる、現在の日本の名優たちの存在です。 「間違いなく『リア王』は円熟期の俳優しか担えないタイトルロール。俳優にとっても、技術と経験が問われる究極の挑戦です。今年5月に上演された長塚圭史さん演出では戯曲の冒頭場面をカットして、いきなり吉田鋼太郎さん演じるリアの慟哭から始まりました。藤原竜也さん演じるエドガーとリアの外見が似ていて、ふたりの俳優の絆と彩の国シェイクスピア・シリーズの歴史も感じさせましたね」 リア王は多様な表情を見せる人物。強権的な支配者、判断力を失っていく哀れな老人、どん底に至って初めて真実に気づき不器用に娘を愛する父親――。 「ひとりの俳優が、リア王という巨大な役に向き合う貴重な記録として、俳優・山﨑努さんの著書『俳優のノート』があります。1998年、東京・新国立劇場『リア王』上演の折、翻訳者や演出家、スタッフたちと試行錯誤を重ねた創作の過程が日記形式で克明に記され、作品そのものの奥深さも感じさせます」

『俳優のノート』

山﨑努 著 ¥825 文春文庫

【あらすじ】 リア王とグロスター伯爵、ふたりの父と子どもの運命が絡み合う物語

古代ブリテンの王、リアは、ゴネリル、リーガン、コーディーリアという3人姉妹の父である。リア王の家臣グロスター伯爵には、正妻の子エドガーと庶子エドマンドというふたりの息子がいる。

老いから退位を決意したリア王は、領土を分割し生前贈与するとし、もっとも自分を愛する者に多くを与えると告げて娘たちを競わせる。長女ゴネリルと次女リーガンは巧みに美辞麗句を並べるが、末娘コーディーリアは言葉を飾らずそっけない返答をする。リア王は激怒し、勘当。さらには、それをいさめたケント伯爵も追放。ゴネリルとリーガンは、リア王の様子に恐れを感じ、手を組むことにする。 一方、グロスター伯爵の庶子エドマンドは自分の境遇を恨み、噓で兄エドガーと父の間を裂いて出世を狙う。父の怒りを恐れ、家を出たエドガーは、狂人の「あわれなトム」に変装して身を隠し、半裸で荒野をさまよう。 リア王は引退後、ひと月ごとにゴネリルとリーガンの世話になるつもりだったが、大勢の騎士団を連れた傍若無人な振る舞いを娘たちは拒絶。リア王はお気に入りの道化とともに、嵐の吹きすさぶ戸外へ締め出されてしまう。絶望と悲しみのあまり、リア王の精神は狂気を帯び始める。 グロスター伯爵は、リア王を庇い、リーガンとその夫コーンウォール公爵をいさめるが、怒りをかい、夫妻に両目をつぶされたうえ、放逐されてしまうのだった……。

米谷先生のお話に出てくる近年の『リア王』上演例

2024年3月〜5月『リア王』

演出:ショーン・ホームズ
主演:段田安則
企画・製作:株式会社パルコ

2024年9月〜10月『リア王の悲劇』

演出:藤田俊太郎
主演:木場勝己
主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場

2025年10月〜11月『リア王』

演出:フィリップ・ブリーン
主演:大竹しのぶ
企画・製作: Bunkamura

2026年5月〜6月『リア王』

演出:長塚圭史
主演:吉田鋼太郎
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ

この秋楽しめる ふたつの「リア王」

「自分が納得いくリアを見てみたい」内野聖陽さん念願のタイトルロール

昨年、WOWOW 連続ドラマW『ゴールドサンセット』において、シニア劇団で『リア王』を演じる謎の老人を演じた内野聖陽さん。この作品を現代に上演することへの熱い思いが、今回の出演にもつながっている。

『リア王』KING LEAR
訳:松岡和子
演出:森新太郎
出演: 内野聖陽、前田公輝、井之脇 海、清水くるみ、和田正人、杉本哲太、山路和弘 ほか
2026年9月21日(月・祝) ~10月4日(日) 東京芸術劇場プレイハウス 新潟、愛知、兵庫、岡山、福岡公演あり

公演詳細・チケットについては、こちらの二次元コードから公式サイトでご確認ください。

中村芝翫さん シェイクスピア作品3度目の幕が上がる

好評を博した『オセロー』『夏の夜の夢』に続く、歌舞伎俳優・中村芝翫さん主演のシェイクスピア劇シリーズ第3弾。開場101年目となる新橋演舞場の、スケール感を生かした演出にも期待が高まる。

『リア王』 訳:石井美樹子
演出:井上尊晶
出演:中村芝翫、松下由樹、三浦涼介、朝月希和、井上小百合、大野拓朗、小倉久寛、村田雄浩 ほか。
2026 年9月6日(日)~22日(火・祝) 東京・新橋演舞場

公演詳細・チケットについては、こちらの二次元コードから公式サイトでご確認ください。

構成・文/杉村道子 ※素敵なあの人2026年10月号「傑作悲劇を名台詞から読み解く~素敵世代に響く ⼈⽣ドラマの秘密 いま『リア王』の季節【好奇心の扉】」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売を終了している場合があります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

お話を聞いたのは 米谷郁子先生

専門は英文学、およびその後世における校訂・受容・翻案研究。著書に『近代を編む―英文学のアプローチ』『愛の技法』『読むことのクイア』(以上、中央大学出版部、 共著)、『今を生きるシェイクスピア―アダプテーションと文化理解からの入門』 (研究社、編著)など。翻訳戯曲集、研究書を近刊予定。

この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

「年を重ねて似合うもの 60代からの大人の装い」をテーマに、ファッション情報のほか、美容、健康、旅行、グルメなど60代女性に役立つ情報をお届けします!

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ